マスコミ

2017年2月25日 (土)

金正男殺害事件ばかりのNHKニュース

 金正恩北朝鮮主席の兄の金正男氏が殺害されてからもう10日以上になる。iphoneで「キムジョンナムが殺されたのはいつ?」と音声で尋ねたら、「キンマサオトコが殺されたのは2017年2月13日です」という答えが返ってきた。「ん?キンマサオトコ?」と一瞬たじろいだが、直ぐに笑ってしまった。

 この事件は、マスコミに恰好のニュースとして連日報道されているが、とりわけNHKニュースはいつもトップニュースとして扱っている。

 10日もたつのに今朝もトップニュースであった。それだけ世界の耳目を集める事件であったことは認める。国際空港という人の目が集まる場所で、インドネシア人、ベトナム人女性の犯行であり、たった2秒間で人を殺してしまったのだ。誰が見ても北朝鮮の金正恩の指図だと連想が行く。

 だから関心が集まるのは当然で、トップニュースになるのも無理がないとは思う。しかし、このニュースの陰に隠れて、大事な国内ニュースが報道されていないことは大問題である。

 大事な国内ニュースとは、今開会中の国会で審議されている案件関連ニュースである。その一つは「共謀罪」関連であり、南スーダンでの「戦闘」の有無の問題であり、さらに「安倍晋三記念小学校用地超格安払下げ問題である。

 いずれも非常に大事な問題なのに、NHKは取り上げようとしない。NHKは国会中継をやっているから必要ないというのであろうか。

 国会中継をやっていても、それを皆が見られるわけではない。上記のような大事な問題はニュースの時間で取り上げるべきだし、「クローズアップ現代+」や「NHKスペシャル」のような特別番組で取り上げるべきであろう。

 あの安保法制のときでも、NHKは形ばかりの人畜無害なニュースとして扱っただけであった。NHKにしてみればトランプ大統領ニュースに続いて、金正男事件が飛び込んできたので、これ幸いと国内重要案件を放送しない隠れ蓑にしているのであろう。

 トランプ大統領はあからさまにマスメディア攻撃を繰り返しているが、安倍政権はもっと賢く巧妙にメディア懐柔工作をして、NHKや大新聞を萎縮させてしまった。そして次々と国民生活に大事な案件を強行採決で成立させたしまった。以前にも指摘したがメディアの責任は重大である。

 NHKは視聴料を取っているのだからなおのこと、国民に大きな影響のある問題はきちんと報道をすべきである。

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2017年1月21日 (土)

ウソと偏見の報道をするメディアがあるとは!!

 Yahooニュースで、東京都のローカルテレビ局「東京メトロポリタンテレビジョン」(東京MXテレビの記事を読んだとき、メディアもここまで堕落したのかと驚いた。

 このテレビ局の情報番組「ニュース女子」への批判が高まっているという記事であった。それは1月2日に放送された特集「沖縄基地反対派はいま」について、沖縄の地元紙「沖縄タイムス」が、「悪意むき出し」と「琉球新報」も「公共の電波を使った沖縄に対するヘイトスピーチ」と社説で猛批判をしたのだ。そして番組で名指さしされた市民団体の代表がBPO(放送倫理・番組向上機構)に人権侵害を申し立てたという。

 この問題については、18日の朝日新聞も取り上げた。東京MXテレビの株主でもある東京新聞も、「ニュース女子」批判記事を大きく掲載したという。だが、この番組の司会は東京新聞論説副主幹長谷川幸洋氏だというのだから、どうなっているのだと思う。

 Yahooニュースの記事を書いた志葉玲氏は、「政治的に偏っているというだけでなく、明らかに事実と異なることを『マスコミが報道しない真実』であると、同番組が主張したから、大きな批判を浴びたのだろうと指摘する。

○現場に行かない現場取材

 「沖縄レポート」と称するものは、ジャーナリストで産経新聞「正論」欄執筆者である井上和彦氏が「過激な反対派の実情を現地取材」したというVTRと、コメンテーターたちのスタジオトークから構成されていた。

  だが、「現地取材」と銘打ちながら、実際には、井上氏は高江のヘリパッド建設地から、運転距離にして40キロ以上も離れた二見杉田トンネル(名護市)前までしか行かず、高江での反対運動については、現地取材などしていなかったのだ

 しかも、番組VTRでは「反対派の暴力行為により高江ヘリパッドに近づけない」との字幕スーパーとナレーションが入った。また、スタジオトークでも、「他のメディアでも現場に入れない」と語られていた。反対派が、抗議活動を行っているヘリパッド搬入口「N1ゲート」前には、誰でも行けるし、当然、東京に本拠地を置く大手新聞各社やテレビ各局の取材陣も取材に入っている。

 筆者も何度も現場に行っているが、「反対派の暴力行為」などの被害を受けたことは一度もない。あの、安倍晋三総理大臣の身内である昭恵夫人ですら、N1ゲート前を訪れているのだ。上記のような『ニュース女子』の表現は明らかに事実と異なる。 」

 この点については、朝日記事も現場に行っていないと報じている。

 「救急車への妨害」デマもひどいものだ

 「『救急車への妨害』デマも悪質だ。番組VTRには、ヘリパッド建設地である東村の住民である男性が登場。『反対派がヘリパッド建設地に向かう車の検問をして、救急車の通行も妨害している』と語った。だが、こうした主張は、地元紙の『沖縄タイムス』が現地消防署に問合せ、デマだと確認している。事実確認もせず、虚偽のコメントを紹介することは、報道機関としてあってはならないことである。ちなみに、この男性は、SNSなどネット上でも、『反対派が頻繁にドクターヘリを呼びつけるので、本当に緊急性が高い患者の搬送に悪影響が出ている』との趣旨の投稿をしていたが、これも事実と異なる。ドクターヘリの出動させるか否かは、現地消防署が判断することで、個人が呼びつけることはできない。また、現地の出動実績からも否定されていることだ。 」

 志葉氏は他にもいくつか指摘している。それについては、以下のURLを。

 http://bylines.news.yahoo.co.jp/shivarei/20170117-00066657/

 こうした報道の仕方は悪質極まりなく、放送法第4条「報道は事実をまげないですること」に違反するものである。

 これまでも安倍政権の広報機関と米国のマスコミから揶揄された新聞はあったが、ここまで歪曲して、事実と異なる報道をするメディアが出てきたことは驚愕である。安倍政権がアメリカのために沖縄県民を蔑視して、強引に基地建設を進めていることをよく知るべきである。

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2016年12月 6日 (火)

NHK籾井会長再任困難という記事

 12月2日の朝日新聞朝刊トップ記事は、「NHK籾井会長再任困難」というものであった。来年1月に任期が切れる籾井会長の再任が、極めて困難だということであった。

  任命権を持つ経営委員会の複数の委員が籾井氏の続投に否定的で、経営委員12人中9人以上の同意が得られない状況だというのだ。

  籾井会長は、安倍首相のお友だちで、NHKを思うようにコントロールするために、政権が送り込んだ人物であった。その意を体して、籾井氏は、3年前の就任当初から、「政府が右というものを左というわけにいかない」とのべるなど、公共放送のトップとしての言動がたびたび問題視されてきた。経営委員会も3度にわたって注意をしたというが、改めた様子は見られない。

  籾井会長以後NHKの番組は大きく変わり、クローズアップ現代の名キャスターの国谷裕子氏が解任され、番組自体も10時に移動した。また、夜9時のニュースのキャスターの大越氏がはずされたのも、原発問題などで言動が原因だと言われている。

  安保法制問題でも、立憲主義問題でも、選挙の報道でも、国民の声を報道することはなく、政権側のニュースのみを垂れ流して来た。こうした傾向は籾井会長の意向に沿って行われたものと考えられる。

  籾井会長の公共放送トップとしての資質に強い疑問を抱く人たちが、NHK出身者も含めてしばしばNHKに抗議行動をしてきた。「籾井会長罷免」の働きかけは全国に広がり、2000名を超す賛同者を集めたと言われる。

  そして、NHK退職者有志が、NHKに次期会長推薦者委員会を作り、12月2日にNHK会長候補の推薦名簿を提出したことを知った。

  こうした動きはマスメディアでは報道されていないのが残念である。NHKが伝えないのはまだ分かるとしても、他のメディアが無視しているのが今の実態である。

  今日開かれる会長指名の会議では、次期NHK会長には、籾井氏の再任をさせないだけでなく、公正にメディアの役割を果たす、時には権力にも批判するNHKにできる人物を選任してもらいたい。視聴料を払っている者として当然の要求である。

 

 

 

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2016年11月27日 (日)

民放化するNHKにがっかり、どたばたにうんざり

 明石家さんまが久し振りにNHKに出演ということで、騒がれていた。24日に「第1回明石家紅白」と銘打って、電撃的登場のピコ太郎、欅坂46、いきものがかり、桐谷健太など、紅白出場者の一部も出演した。

  いつもはこの手の番組は見ないのだが、鳴り物入りで明石家さんまが出るというので、いったいどんな番組か見てやろうと思った。

  司会のさんまは、例によって、さんま振りを爆発させて、大きな口を開けて笑ったり、大声でしゃべったり、手や足を派手にうごかしたり、床に転げまわったり・・・・何とも騒々しいものであった。 他の出演者は椅子に座って行儀よくしていたが、1人さんまだけがド派手に動き回っていた。

  さんまのそういうやり方に、出演者若い子たちは面白そうに笑っていたが、いきものがかりの男性や八代亜紀はにこにこしているだけであった。

 結局最後まで見てしまったが、さんまのトークの何処が面白いのだろうと冷めたままで見ていた。全国放送される番組の中で、さんま1人がはしゃぎ回って、笑いを取ろうとしているのを見て、よくもあそこまでやれるものだと変に感心した。大竹しのぶはさんまと結婚したことがあるが、どこがよかったのだろうと思った。

  NHKは、籾井会長になって、原発問題とか安保とか憲法問題には制限をかけているが、一方で「明石家紅白」のように、民放で人気が出たタレントを出演させて、NHK番組の民放化が起きていると感じる。

  「ブラタモリ」にしても、タモリの知名度に乗っかっているだけで、別にタモリでなくても成立する番組である。それぞれの土地の専門家が案内をするので誰だっていいのだ。所ジョージの番組もある。タモリは羽目を外す訳ではないからまだよしとしよう。たまにバラエティ番組を覗くと、お笑い芸人などが民放と同じように自分たちだけが騒いで楽しんでいる。クイズ番組でも「20の扉」などは知性があったが、今のクイズ番組は自分たちだけが楽しんでいる。

  NHKは視聴料を取ってやっている公共放送だから、他の民放とは一線を画して、格調の高い制作姿勢を貫いてほしい。昔の番組には言葉遣いや態度に節度があった。明石家さんまのようなのはご法度であった。NHKにはNHKとしての矜持を持って欲しい。また、政権に阿ることなく公正を守ってほしい。

 

 

 

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2016年10月29日 (土)

英国Timesが暴露した安倍政権に屈したNHK

 英国の有力紙Timesが、NHKの内部文書を暴露したという資料を友人が送ってくれた。それによると安倍政権はNHKに対して南京大虐殺や慰安婦問題や領土問題について言及することを禁じていたという。

 安倍政権側はNHKに強く日本の保守的な民族主義と政府の立場を反映するように命令し、NHKもそれに従っていたというのである。

 Timesは「イギリスで話題になっている情報も取り上げない」と述べ、安倍政権がNHKと癒着している問題性を指摘している。

 この記事の見出しは次のようになっている。

 Japan’s ‘BBC’ bans any reference to wartime ‘sex slaves’

 Japan's ‘BBC’ というのはNHKのことである。

 また、本文の一部をコピーすると、

 A ban on reference to the Rape of Nanking is seen as a surrender of editorial
independence by Japan’s public broadcaster, NHK
Japan’s public broadcaster, NHK, has banned any reference to the notorious
Rape of Nanking, to the country’s use of wartime sex slaves, and to its
territorial dispute with China, in what critics see as a surrender of its
editorial independence.

 安倍政権は、NHKの経営委員に息がかかった人物を送り込み、NHK会長に意のままになる

人物を据えた。NHKを支配する仕組みが出来上がり、有効に働いていることをTimesの記事は証明していることが分かる。

 伊藤真弁護士の講演にあったように、多数が必ずしも正しいとは限らないのだ。権力に対しても堂々と批判ができることが公共放送に求められる第一の資格である。英国のBBCはまだNHKとは比べものにならないくらい良い。

 昨日も書いた様に、日本のマスメディアがすべて政権の欲するままに、言いなりになってしまったらこんな恐ろしいことはない。戦前の大政翼賛化が悲惨な戦争へと導いたことを忘れてはならない。

 

 以下はTimesのHPだが、有料で一部しか見られないのが残念である。

 http://www.thetimes.co.uk/tto/news/world/asia/article4239769.ece

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2016年9月 7日 (水)

凄い労作―参院選テレビ報道検証―⑧

6、選挙報道に望まれること――抜本的に考え直すべき番組編成

 

 選挙のあと713日の毎日新聞は「参院選TV報道3割減」という見出しで、調査会社エム・データの調査結果を伝えた。NHKを含む在京地上波6局の選挙関連放送時間が、前回2013年の参院選の35時間57分から26時間1分に減少した、としている。

 この調査は我々のモニター活動の実感と符合している。しかし、私たちは、何割かの増減というレベルではなく、もっと根本的にテレビにおける選挙報道のあり方を転換すべきであると考えている。当会はこれまで数多くの選挙報道モニター報告で繰り返しこのことを提起してきた。

  2014年の総選挙報道モニター報告書では、次のように主張した。今回の参院選報道でも全くあてはまる提起と考えるので、少し長いがそのまま引用したい。

 「……全体としては選挙報道の量と質は圧倒的に不足していたと言わざるを得ない。

 各政党の主張をもっと時間をかけて伝えること、さらに政治家の「ことば」を伝えるだけでなく、選挙の争点とのかかわりで国内外の現実を取材し、視聴者の判断に資する材料を豊かに提供すること、さまざまな主張を持つ識者や、市民の声を広く丁寧に伝えること、などが求められる。

 この課題を実現するためには、ニュース番組の中の選挙報道時間を拡大するとともに、関連の特集番組を多く編成する必要がある。しかし、選挙期間に入っても、テレビは膨大な量のバラエティ番組、紀行、グルメ番組などで埋め尽くされていた。

 解散から投票日まではそれほど長い日数ではない。この時期を番組編成の特別な期間と考え、選挙報道を抜本的に拡充すべきである。……」

 2014年総選挙・テレビ各局ニュース番組を検証する」201529日) 

  選挙報道の拡充については、たとえば次のような量的拡大が図られるべきである。

 NHKは長時間の市民参加のスタジオ番組の実績がある。民放では「24時間テレビ」など、「テレソン」のノウハウがある。スタジオを開放した政党と有権者の長時間の対話、争点ごとの政党討論の開催、各政党の公約に関する政党別の対話集会、ローカル番組での選挙区の候補者の長時間の記者会見、等々、さまざまなアイディアが検討されるべきである。

  こうした討論に応じない政党があれば、そのことによって企画を中断するのではなく、出席が拒否された事情を有権者に公開すればよいのである。

 選挙関連番組は視聴率がとれない、というテレビ局の意識や、「公平中立・公正な報道を」という自民党のテレビ局への圧力(201411月)などの影響で、選挙報道がじりじり後退していく現状は憂慮すべきものであり、視聴者として容認することができない。

 放送は、国民の共有財産である電波を占有することから公共的なメディアという性格をもっている。これはNHKだけでなく、民放にも当てはまる。

 放送法は、法の目的を、「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資すること」(第1条3号)と規定した。そもそも放送には、「民主主義に資する」任務があることを明言しているのである。

 選挙報道は、放送が民主主義の発展に貢献するもっとも重要な機会である。この精神からすれば、選挙報道を現状のままにとどめるべきではない。これが今回のモニター担当者の一致した見解である。

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2016年9月 5日 (月)

凄い労作―参院選テレビ報道の検証―⑦

5、政治的公平性への疑い――大政党に有利な扱い

 これまで、当会の選挙報道モニター報告で繰り返し主張してきたが、各政党の扱いに関して大政党偏重の時間配分が常態化しており、政治的公平性の上で問題がある。

 特にこの傾向はNHKニュース番組に顕著であった。あたかも議席数を反映したかのような時間配分の偏りが続いている。

政権与党、大政党の主張や動向の紹介が他政党より長くなることは、その政党の政策が有権者の生活に大きな影響を与えることや、関心の高さから言って,あり得ることであり、大政党も少数政党も、機械的に全く同じ時間配分にすべきだ、と主張しているわけではない。

 しかし、現状のようにこれほど大きく差をつけるのは、政治的公平性という点で問題と言わざるを得ない。

 例えば「ニュース7」の各党の公約紹介時間は、民進党は5分だった。5分あればかなりの内容が伝えられる。実際にもナレーションで主たる政策項目を紹介するとともに、記者による解説も付き分かり易いものになっていた。しかし新党改革は16秒だった。これではほとんど政策項目の羅列で終わるしかなかった。

 これから政党選択の判断をしようという有権者にとって、選挙公約の重要性は大政党と少数政党で違いがあるものではない。この差は問題だった。

 また6月22日、公示日の「ニュース7」では、 各党首の街頭第一声が自民党13秒に対し、新党改革は19秒。また、同じ日の「各党首に聞く」の時間配分でも政党間で大きな差があった。党首へのインタビューの時間配分は以下のとおりである。

 自民党安倍総裁 22分 民進党岡田代表 123秒 公明党山口代表 8分、共産党志位委員長 7分 大阪維新の会松井代表 555秒 社民党吉田党首 417秒 生活の党小沢代表 345秒、日本のこころ中山代表 421秒 新党改革荒井代表 148秒。

 これでみるように、安倍総裁インタビューが22分で、新党改革荒井代表は148秒というのはあまりに差がある。

 「ニュースウオッチ9」は、7月4日から恒例の「党首を追って」を放送した。各党の時間配分は、以下の通りである。

 自民党安倍総裁 532秒 民進党岡田代表 43秒 公明党山口代表 3分1秒、共産党志位委員長 230秒 大阪維新の会松井代表 216秒 社民党吉田党首 133秒 生活の党小沢代表 132秒、日本のこころ中山代表 1分18秒 新党改革荒井代表 13秒。小政党は自民党の3分の1以下となっている。

 この傾向は民放ニュース番組にも見られるが、現状のような選挙報道では大政党はますます有利に、少数政党はますます不利にならざるを得ない。選挙では各政党が平等にスタートラインに立つことを考えると、選挙期間中はとくに政党の扱いに公平を期すべきである。少なくとも公約の紹介や党首の演説は時間差を設けるべきではない。

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2016年9月 4日 (日)

凄い労作―参院選テレビ報道の検証―⑥

4、選挙「情勢報道」の偏重 「18歳選挙権」関連報道の問題

 

テレビニュースをモニターする中で選挙報道には2つの分野があることが明らかになった。

 一つは、選挙に関連する社会の動きや話題、政党、政治家の動向を伝える「選挙情勢報道」であり、もうひとつは、選挙の争点に関して有権者の判断の材料を提供する「選挙争点報道」というべきものである。

  本報告書の立場では、選挙報道としては後者の「争点報道」が重要であり、選挙報道の中核でなければならないと考える。しかし、実際の報道は、選挙関連の話題、トピック紹介に多くの時間が充てられており、「争点報道」が後退しているという実態がある。

  このことを象徴的に示すのが、「18歳選挙権」に関する報道の多さである。

  各番組を見てみよう。

 「ニュース7」 617日「578校で政治活動の事前届け出制」 619日「高校に期日前投票所」。

 「ニュースウオッチ9」615日「海洋実習生の投票」 617日「懸念強める学校現場」

 622日「政策を知る特別授業、模擬投票」623日「18歳の期日前投票」74日「俳優広瀬すずの期日前投票。中央大学のイベント。マンガ誌の特集」

 「NEWS ZERO」627日「18歳、19歳の不在者投票のしくみ」 74日「うきは市長選挙の18歳の投票」 75日「18歳“選挙への不安”」

 「報道ステーション」622日「選挙に望む1819歳の声」 71日「大学生のNPOが高校で授業。候補者が生徒と対話。街の青年たちの声」 78日「高校で模擬投票」

 EWS23」7月6日「18歳歌手が迎える選挙、学校現場で“困惑”も」 78日「ティーン票の行方。各党の若者対策」

 「みんなのニュース」619日「政治に関心を、様々な取り組み。お笑い芸人の授業。高校で模擬投票」630日 「イギリス国民投票 若者たちの投票率の低さ」

 78日「若者向けネットサービス」

  これらの報道が意味がない、と主張するものではない。18歳、19歳の若者に、政治に関心を持ってもらうための教育現場の真摯な取り組みが紹介されている。投票を呼びかけるタレントやNPOによる活動の報告も胸を打つものがあった。また選挙に関する青年たちの迷いや戸惑いなどの率直な声も伝えられている。

  18歳選挙権が認められて初めての国政選挙であるため、このテーマでの放送が多くなるのはあり得ることだが、一方で「選挙争点報道」が貧弱という傾向も否定できない。18歳選挙権の問題だけでなく、選挙情勢や話題、トピックに焦点を当てた報道が他にもかなり多くなっている。

 モニター担当者からの報告でも、選挙の「周縁」の動きの報道が多い現状に疑問の声が上がっている。このような選挙報道でよいかどうか、選挙争点報道とのバランスで検証が必要であり、視聴者の批判も必要である。

 

 

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2016年9月 2日 (金)

凄い労作―参院選テレビ報道検証―⑤

 

3、争点の伝え方――アベノミクス、社会保障ほか

 

 改憲問題と並んで、各局が争点とした「アベノミクス」についての報道はどうだったか。

 「ニュースウオッチ9」627日、争点の第1回として約12分「経済政策・アベノミクス」を取り上げた。

 番組はまずアベノミクスのおかげで最近業績を上げているとする企業を取材、賃上げが連続していると紹介した。一方で商店街を取材、消費が伸びず、売り上げが減少し、経営が苦しいという商店主の声を伝えた。

 解説した経済部の記者は、アベノミクスによる大胆な金融政策は円安を促し、多くの企業で業績が上向き、雇用も改善した、と指摘、「安倍政権は、企業の収益が増えると、賃上げにつながり、それが消費を拡大させる、という経済の好循環を目指している、しかし、現状はまだ道半ばといえる」と解説した。

 記者は続いて、「アベノミクスの最大の誤算が、個人消費の低迷で、家庭の消費支出は8ヶ月連続のマイナス、これは実質賃金のマイナスが続いていること、将来への不安から、若い層を中心に消費が勢いづかないことなどが、消費低迷の背景にある」と解説した。

 一応バランスが保たれた解説と言えるが、アベノミクスそのものを問う、というスタンスはなく、「道半ば」という政権の主張がそのまま取り入れられていることに違和感があった。

 経済政策の検討では、深刻な問題となっている貧困格差の実態と政権の企業優先の経済政策との関係が問われなければならないが、そのような視点は希薄だった。

 「報道ステーション」75日に5番目の争点として「経済政策」を11分弱の時間で取り上げた。

 番組はまず景気回復の実感がないという回答が78%を占めたアンケートを紹介、消費の現場を取材した。少しでも安いものを手に入れようとする市民のすがた、節約で買い控えをする傾向、「先行き不安で、お金は使うより貯金して貯めなくては」という声を伝えた。

  後藤謙次コメンテーターは「需給のギャップの中、依然将来への見通しが不透明、イギリスのEU離脱という不測の事態が起き、外的影響の増えるなかで、日本の経済はどこまで、やっていけるのか、内需主導型の新たな経済政策の転換が課題、という大きな壁にぶち当たっている」とコメントした。

 アベノミクスでうまく行っている側面と、否定的な面とをバランスをとって伝えるのではなく、重大な問題である消費の低迷に焦点をあてているのは、最初のアンケート内容からの展開として説得力があった。

 「NEWS23」は、77日に争点として「経済政策」を8分程度で取り上げた。

 まず有効求人倍率の改善のデータをあげ、「売り手市場」の状況の中で就職を決めた学生の社内研修を取材している。

 一方でアベノミクスの恩恵を受けない非正規の労働者の、将来の見えない状況も紹介した。正規雇用を求めているが実現せず、収入が不安定で、結婚もできない、という切実な声を伝えている。

 選挙報道においては、争点に関わる社会の現実をどれだけ調査し、報道できるかが問われる。その意味で、非正規の労働者の、将来に希望のない実情を紹介したことは同種の報道が少ない中で評価できる。

  しかし、非正規の増加を参院選の「争点」とするなら、この状況とこれまでの政策との関係が論じられなければならない。就労者の4割が非正規という異様な状態は、自公政権が制度的に作り出してきたものだった。

 この政策が正しかったのか、という視点が必要だが、まったく言及がなかった。冒頭に「争点」と紹介しておきながら、現状の報告のレベルにとどまっているのは惜しまれる。ただ、こうした傾向は、「NEWS23」にとどまらず、多くのテレビニュースに共通の弱点だと言えよう。

  

この他、「ニュース7」、「NEWS ZERO」「みんなのニュース」では、各党の主張の並列はあるものの、番組独自にアベノミクスを争点にしたコーナーは見当たらない。

 

アベノミクスの検討という重大なテーマで、上記3番組のそれぞれ1回程度というのは十分とは言えない。ここにも選挙報道の量の少なさが影を落としている。

 

 

 

 もう一つの重要な争点である「社会保障」については、独自でこのテーマを設定したのは「ニュースウオッチ9」と「報道ステーション」の2番組にとどまっている。

 

「ニュースウオッチ9」628日の放送で、待機児童が全国で45000人余りであり、52万人が特別養護老人ホームの入所を待っている、というコメントから始めて、二人の女性記者が、保育の現状と特別養護老人ホームの現状を報告した。その中で、保育園を探し続けている母親の苦境、全産業平均より11万円も低い保育士の給与、介護施設での深刻な人手不足と、40歳で22万円という給与の低さなど、厳しさを増す社会保障の現場をリポートした。

 

 

 優れたリポートだったが、番組はこのあと問題を財源問題へ移行させてしまった。提起されている問題に関しては、財源があろうとなかろうと本来保障しなければならない、という視点が一方で必要であったが、キャスター、記者にそのような姿勢が感じられなかった。

 

ただ、同種の調査報道が極めて少ない中で、この日の「ニュースウオッチ9」の内容は光るものがあった。

 

 

 

「報道ステーション」は、623日、「社会保障と財源」というテーマでこの争点を取り上げたが、各党の財源対策の主張を並べたにとどまり、局独自の取材はなかった。

 

ただ、「報道ステーション」は、628日に、4番目の争点として「低年金・無年金」の問題を取り上げている。

 

この番組は、最初の消費税引き上げ延期の時、横浜に住む無年金の夫婦を取材していた。

 

保険料の納付期間が夫14年、妻19年だったが、この時も受給資格の短縮見送りで、年金を受け取れなかった。1年半後、再度取材が行われ、夫は昨年74歳で無年金のまま亡くなっていたことが明らかにされた。73歳の妻は老人福祉施設で働き続けるが、収入は手取りで14万円、家賃や介護保険料を払うとギリギリの生活であること、この女性のような無年金者は全国に17万人いることが報告された。このような調査報道は貴重なものと言える。

 

 

 

 このほか、提示すべき争点として、原発災害の現状、再稼働の是非、沖縄辺野古新基地建設問題など重要なテーマがあったが、激戦区のリポートで触れられるにとどまり、時間をかけた争点提示はほとんどなかった。

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2016年9月 1日 (木)

凄い労作ー参院選テレビ報道の検証―④

「NEWS23」は6月29日、8分程度で憲法問題を取り上げた。憲法を学ぶ集会での「緊急事態条項」に関する講師の「これを入れられたら終わり、というくらい恐ろしいもの。憲法改正は隠されたメインテーマ」という言葉を紹介した。

 メインキャスター星浩氏は、「星浩の考えるキッカケ」のコーナーで、国民の憲法尊重義務を定めた自民党改憲草案と現憲法を比較し、立憲主義について「与野党でよく検討してほしい」と提起した。

 これらの指摘は意味があるが、肝心の緊急事態条項の内容は示されず、9条の改変、国防軍の創設、表現の自由の制限、といった自民党改憲草案の重要な内容は伝えられていない。安保法案に批判的姿勢を貫いた「NEWS23」としては、憲法問題の放送がこの程度で1回しかない、というのは前年度までの「NEWS23」からの後退というべきである。

 「NEWS ZERO」は、投票日直前78日、ようやく憲法問題を取り上げた。

 番組では、各党の「憲法改正」のスタンスを比較したあと、村尾信尚キャスターが「仮に“改憲勢力”が3分の2をとって、国会で本格的に議論が始まっても、この参院選で有権者の考えを具体的に聞いていない以上、この議論には限界がある」と指摘した。

 このコメントはキャスターの一定の良識を示したものといえる。しかし、6分間の放送はあまりに短く、各政党の主張を並べるだけにとどまり、改憲内容の検討までには至っていない。

 「憲法改正」に関する選挙報道で最大の弱点は、この問題が一般的な「憲法改正」という用語で伝えられ、その具体的内容が追及されなかったことである。

 強力な改憲勢力である自民党は、すでに憲法改正草案を発表しており、その内容は明確である。改憲派の中で、自民党の主張は、改憲を推進する現実的な力を持ったものとして他党とは比較にならない重さがある。争点として取り上げるのであれば、自民党が憲法の何を改定するのかの情報が報道の核心でなければならなかった。

 「憲法改正」という一般的な争点があるのではない。最大与党の自民党が何を変えようとしているかが争点だったはずである。

 しかし、自民党改憲の具体的な内容をあげて争点として提示する番組は「報道ステーション」以外にはほとんどなかった。情報量の不足と相まって、この点が「改憲問題」の報道の基本的な問題点であった。

 もう一つの弱点は、これほどの大きな争点でありながら、「報道ステーション」以外の番組は、改憲問題にかける時間量が68分程度で、内容的に不十分だったことである。

 NHKは、「ニュース7」では扱わず、「ニュースウオッチ9」では実質7分程度だった。このNHKニュース2番組の姿勢には大きな疑問が残る。

 なお「改憲」という争点に関連して、32の選挙区で成立した野党共闘の評価については鋭い対立がみられた。自公は「野党共闘は政策が違う政党の野合」と非難し、野党4党側は「安保法廃止、立憲主義回復」という大義で合意した共闘だと反論した。

 報道は、野党共闘に注目して、1人区の取材も行い、党首討論や街頭演説で対立する主張を伝えた。しかし、全体を通じてみると、有権者がこの対立について判断するための情報が十分に伝えられたとは言えない。

 この共闘には、政党だけではなく、安保法に反対した全国的な市民運動の関わりが大きかったが、こうした市民の動きや、野党4党と市民連合が具体的な政策で合意していたことなど、重要な事実がほとんど伝えられなかった。争点の背景に何があるかを伝えるという点で問題を残した経過と言える。

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