玉音放送を読んで
8月15日、終戦の日に玉音放送の全文を初めて読んだ。前日に放送されたNHKの「アナウンサーの戦争」で玉音放送を取り上げていた読むことにしたのだ。
終戦の時私は洋学校4年であったが、玉音放送は聞かなかった。その後ドラマなどで玉音放送が何度か取り上げられたのは聞いた。
天皇は雲の上の人として、その姿は写真で見るだけで、声に至っては聞く事がなかった。ネットで見ると初めて国民が声を聞く事になるので「玉音」としたのだとか。特別な印象を与える言葉ではある。
この玉音放送の中で「もしそれ情の激する所 濫りに事端を滋くし 或いは同胞排擠 互いに時局を乱り 為に大道を誤り 信義を世界に失うが如きは 朕最も之を戒むる言葉ではある。」と述べている。玉音の効き目か乱を起こすことはなかった。
米英の戦争を仕掛けたのは「さきに米英二国に宣戦せる所以もまた 実に帝国の自存と東亜の安定とを庶幾するに出でて 他国の主権を排し領土を侵すが如きは もとより朕が志にあらず」と述べているが、東亜の安定と称して大東亜戦争を始めて結局他国を侵略して主権をおかしてしまったのであった。それについて「固ヨリ朕󠄁カ志ニアラス」と言っているのは如何なものか。残念だがその後も天皇の深い反省の言葉を聞いた覚えはない。
下に玉音放送の原文を載せて置いた。
余談だが、我々は行事の式の度に教育勅語を聞かされたが、「朕」が出て来るので「朕は屁をこいた」などと揶揄していたことを思い出す。
【玉音放送原文】
朕󠄁深ク世界ノ大勢ト帝󠄁國ノ現狀トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ吿ク
朕󠄁ハ帝󠄁國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受󠄁諾スル旨通󠄁吿セシメタリ
抑〻帝󠄁國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦󠄁共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺󠄁範ニシテ朕󠄁ノ拳󠄁拳󠄁措カサル所󠄁
曩ニ米英二國ニ宣戰セル所󠄁以モ亦實ニ帝󠄁國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庻幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵󠄁スカ如キハ固ヨリ朕󠄁カ志ニアラス
然ルニ交󠄁戰已ニ四歲ヲ閱シ朕󠄁カ陸海將兵ノ勇󠄁戰朕󠄁カ百僚有司ノ勵精朕󠄁カ一億衆庻ノ奉公󠄁各〻最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス
世界ノ大勢亦我ニ利アラス
加之敵ハ新ニ殘虐󠄁ナル爆彈ヲ使󠄁用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害󠄂ノ及󠄁フ所󠄁眞ニ測ルヘカラサルニ至ル
而モ尙交󠄁戰ヲ繼續セムカ終󠄁ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延󠄂テ人類ノ文󠄁明󠄁ヲモ破却スヘシ
斯ノ如クムハ朕󠄁何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ
是レ朕󠄁カ帝󠄁國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所󠄁以ナリ
朕󠄁ハ帝󠄁國ト共ニ終󠄁始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟󠄁邦󠄁ニ對シ遺󠄁憾ノ意󠄁ヲ表セサルヲ得ス
帝󠄁國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及󠄁其ノ遺󠄁族ニ想ヲ致セハ五內爲ニ裂ク
且戰傷ヲ負󠄁ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕󠄁ノ深ク軫念スル所󠄁ナリ
惟フニ今後帝󠄁國ノ受󠄁クヘキ苦難ハ固ヨリ尋󠄁常ニアラス
爾臣民ノ衷情󠄁モ朕󠄁善ク之ヲ知ル
然レトモ朕󠄁ハ時運󠄁ノ趨ク所󠄁堪ヘ難キヲ堪ヘ忍󠄁ヒ難キヲ忍󠄁ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平󠄁ヲ開カムト欲ス
朕󠄁ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ
若シ夫レ情󠄁ノ激スル所󠄁濫ニ事端ヲ滋󠄁クシ或ハ同胞󠄁排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道󠄁ヲ誤󠄁リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕󠄁最モ之ヲ戒ム
宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道󠄁遠󠄁キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建󠄁設ニ傾ケ道󠄁義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進󠄁運󠄁ニ後レサラムコトヲ期󠄁スヘシ
爾臣民其レ克ク朕󠄁カ意󠄁ヲ體セヨ
御名御璽
昭和二十年八月󠄁十四日
內閣總理大臣男爵󠄂鈴木貫太郞
最近のコメント