映画「ドライブマイカー」が「おくりびと」以来のアカデミー外国長編映画賞を取ったので見に行こうと思った。ネットで調べたらミリオン座で上映されていることが分かったので4月1日に出かけた。
1日1回、13時20分からの上映だそうで予告編も併せて約3時間という長編であった。この映画昨年の8月から上映が始まっていて、アカデミー賞を取ったので再上映ということであった。知らなかったが4月1日は1100円で見られる日だそうで、ちょっと得したような気分になった。
事前に予備知識が全くなかったので映画の展開に任せてついていった。あとで分かったのだが、前編みたいなのがあって、演出家家福の妻で脚本家の音が急死するところまででキャスチングなどの名前が画面に流れた。
前編は妻の音の浮気や家福とのセックスシーンが多く驚いた。ポルノ映画かと思うぐらいであった。後になってセックスをすることでストーリーが自然にできて来るということだと分かった。妻が語るのを家福が赤いマイカーSAABを運転しながら復唱してまとめていくらしかった。この映画のもう一人の主役が赤いSAABと言えるぐらいマイカーで疾走するシーンが出て来た。
とにかく前編はストーリーを追うだけで、なにがなんだか分からなかった。後編は家福が広島の演劇祭に参加して住居を島のホテルにし、マイカーSAABで通うのだが、規定で自分では運転できず、代行運転手をあてがわれた。その運転手が若い女性のみさきであった。
家福が演出を担当するのはチェーホフの「ワーニャ伯父さん」で、オーディションで日本、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、ドイツ、マレーシアからの応募者を選ぶ。日本人の応募者に妻の音との不倫をした高槻もいたがなぜか採用される。
この劇はそれぞれの言語でセリフを言い、舞台上のスクリーンに投影された日本語、英語、中国語、韓国語などを見て観客は理解するという変わったやり方であった。その中に手話も1言語として重要な役割を果たすようになっていた。多国籍共生の劇は面白いと思った。後編はその本読みや立稽古などのシーンが多いが、最後の方で劇場でのシーンが出る。
高槻が犯罪に巻き揉まれて逮捕され出演できなくなったので、家福がワーニャ伯父さんをやるように要請される。やるかやらないか決めるためになぜか遠路はるばる広島から運転手みさきの故郷北海道へ向かう。寡黙なみさきからどうしてドライバーをやっているのかという話を聞いて、それぞれが自分の問題を抱えていることを知る。みさきと話すうちに妻音に対する気持ちも整理されていく。
ドライブマイカーは哲学的な物語で,難解である。ネットを見るとどこがいいのか分からないという感想も多い。
分からないのは、最後の方でみさきが韓国のスーパーで買い物をするシーンと、エンディングが赤いSAABをみさきが運転して、車には家福ではなく、ゴールデンレッドリバーが乗っているシーンである。前編半は家福がマイカーを運転しているが、後編は代行運転手のみさきの運転である。ドライブ「マイカー」ではない。
西島秀俊が出ずっぱりで主演賞を上げたいくらいである。赤いSAABを舞台にした西島演じる家福の物語といえよう。そこに絡む妻音、高槻、運転手みさきが作り出す人間のサガの物語で、観る人がどう受け止めるかにゆだねられている。
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