和歌山通信より、新型コロナウイルス対策92号―その②
また9月8日、 もう一つの決定が行われました。 それは入院期間、 隔離期間の短縮です。 それまでは、 症状のある人は発症から10日間、 無症状の人は検査をした日から7日間の隔離(療養)期間が課されていました。 政府はこれをそれぞれ7日と5日(検査陰性の場合)に短縮しました。
確かに今回の第7波のオミクロン株BA.5はものすごくうつりやすい一方、 重症化する人はかなり少ないということがわかっているので、 不必要に長く行動の自由を制約することは正しくないし、 病床数が不足する中で入院者の回転率を上げようという気持ちもわかります。
しかし、 和歌山県で観測をしている限り、 10日の療養期間が過ぎて退院した人でぶり返してまた病院へ舞い戻った人もいるものですから、 大丈夫かなあという心配があります。 また、 療養期間が過ぎた人の中にはまだ人にうつす可能性のあるウイルスを体内に持っている人がかなりいることがわかっており、 厚生労働省のデータでは発症後8日目でも16%もいるということになっていますから、 このような人が療養期間が終わったとして自由に活動すると、 他の人にうつす可能性が高まることが懸念されます。
これらの点について、 和歌山県は懸念を持っておりましたが、 政府の決定は絶対です。 何故ならば、 和歌山県で保健医療行政として行っている措置の権限は感染症法で与えられているわけです。 隔離とか入院の措置とかは人が嫌がることを強制しないといけません。 そういう強制の権限は法律によって付与されていなければ行使することはできません。
その権限付与の法律である感染症法の有権解釈権は政府にあるわけですから、 それに反することを県独自でやろうとすると違法ということになります。 例えば、 療養期間を超えても退院をしてはいけない、 外出は禁止だ、 家から出るなということを強制することは一種の監禁罪にあたるでしょうか。 したがって政府の決定通りしないといけないのですが、 以上のようなリスクがあるので心配は心配です。
その際、 私が一番怒ったのは、 政府の分科会の尾身茂会長が、 政府の決定があった9月8日にTVで会見をして、 「この措置にはリスクがあります。 リスクがないかと言われたらあります。 だから政府はリスクがあるということを国民に十分周知されたい。 」と言ったことです。
私がその時思ったのは、 「リスクがあるというのなら、 そのリスクをどうすれば極小化できるかを考えて、 政府に実行させるようにするのが、 専門家の役割ではないか。 それを政府の決定に反対もしないで、 リスクがあるからそれを国民に言えと政府に言うだけというのは、 いったい自らの立場をなんと心得ているのか。 」ということであります。 だから私は大変怒っていました。
しかし怒っているだけで、 和歌山県民の命のリスクを放置したら、 私たち和歌山県庁も同罪です。 しかし、 それではいけないので、 和歌山県は、 政府の決定内容は法律事項だから従うとして、 その上で次のように考え、 9月26日から実行しています。
まず全数把握が廃止されますので、 陽性者のうち、 従来通り、 保健所に報告されるのは、 高齢者や病気の方など重症化リスクの高い方に限られます。 残りの方々は医療機関を受診して陽性となった場合、 新たに設けられる陽性者登録センターに登録するか、 陽性を自主検査などで認識した人が自ら同センターに登録することになります。
しかし、 その陽性者登録センターに登録された人もいつ症状が悪化するかわかりません。 その時でも、 若くて健常な人は高熱が二日ぐらい続くだけで軽快するのですが、 中にはリスクの高そうな人もいて、 そういう人が悪化すると重症化して命の危険が生じる可能性があります。 したがって陽性者登録センターはそういうリスクのある人の情報はあらかじめ保健所と共有しておきます。
そして、 病状が悪化して、 どうしようということになった時、 そういうリスクがある人から、 リスクの程度に応じて保健所がトリアージをして、 入院調整をするという方法を採用したのです。 ややこしいのは病院に救急搬送をされた人が新型コロナ陽性であるということが発見された時です。 この時の操作は複雑ですので図を見てください。
https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20221003_2_d/fil/message20021003_01.pdf
次に療養期間の短縮ですが、 その対象者の一部にウイルスがまだ残っていて人にうつす確率が高い人がいることは前に述べたとおりですが、 オミクロンBA.5がこうも流行っていては、 そういう潜在的感染者予備軍が世間にいっぱいいるということでしょうから、 陽性が顕在化した人の療養期間だけを全部について延ばすということはやりすぎでしょう。
しかも、 もしその対象者が病院の関係者だったり、 高齢者福祉施設等の従業員だったりしたら、 彼らの出勤によりそれら施設に新型コロナが引き入れられ、 そこにいる高齢者や、 病人にうつった時のリスクはとても深刻です。
したがって、 これは法律に基づく命令ではありませんが、 そういう施設に新型コロナが入り込まないよう、 対象者は従来通りの期間が経過しないうちはそういう施設に立ち入らないよう、 従業員たる対象者とその使用者である施設側の双方にお願いをすることにしました。 これで高齢者や体の弱い人の安全はかなり守れると思います。
これらの和歌山県の対応とお願いは、 図示すると次の通りです。
https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20221003_2_d/fil/message20021003_02.pdf
和歌山県は、 県民に対して尾身さんと同じでいいわけがありません。 県民の命は実際の行動、 工夫によって守らなければなりません。 したがって政府の決定に伴って生じるリスクを避けるため以上の工夫をして県民の命を守ることにしました。
和歌山県知事 仁坂 吉伸
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