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2020年3月16日 (月)

いわき避難者仙台高裁判決について

 東電福島原発事故の被害者の方々が訴えていた裁判の1つ、「“ふるさとを返せ”福島原発避難者訴訟」の控訴審判決が、仙台高裁で言い渡された。その裁判を傍聴された馬奈木厳太郎弁護士が書かれた判決文の重要ポイント解説が送られてきた。下記の要約を読んで、被害者の気持ちを汲んだ画期的な勝利判決であったことがよくわかる。こういう生のレポートは貴重だと思いとりあげさせてもらった。

いわき避難者仙台高裁判決
 
みなさま 
 お疲れさまです。判決要旨を添付します。あわせて、勢いで感想めいたことを書きます。 
 今日の言い渡しでは、判決を傍聴することができました。法廷は、新型コロナウィルス対策のため、全員マスクを着用するよう求められ、一般傍聴席は隣同士に座らず一席間隔を空けて座るという措置が取られました。裁判官を除く全員がマスクを着用しているという、異様な雰囲気のなかでの判決言い渡しでした。裁判長は、約30分間にわたって判決の要旨を述べました。 
 

 判決のなかで、印象に残ったところをいくつか書き抜いておきます。判決を書いた裁判官の裁判官らしさが窺えるところだと思います。
 
「被告が原子力発電所の安全確保に重大な責任を負い、その安全性についての地域住民の信頼の上に福島第一原発をこの地に立地してきたにもかかわらず、平成20年津波試算が確立した知見に基づくものではないこと等を理由に具体的な対策工事の計画又は実施を先送りしてきた中で、本件地震及び本件津波が発生し、本件事故の発生に至ったという経緯を被害者の立場から率直に見れば、このような被告の対応の不十分さは、誠に痛恨の極みと言わざるを得ず、その意味で慰謝料の算定にあたっての重要な考慮事情とされるべきものである」

「相当な避難期間より前に帰還したか否かにより、避難生活の継続による慰謝料を認める期間に差異を設けることも相当でない。これより早く帰還した原告らも、帰還したからといって通常の生活が直ちに戻るものではなく、避難生活を続ける原告らと比べ、勝るとも劣らない精神的苦痛が続いたと認められるからである。
 

 原告として訴えを提起しながら、上記の相当の避難期間が過ぎる前に死亡した者についても、避難生活を続けながら死亡した無念さを考えれば、その点を考慮することにより、上記と同じ避難期間を基礎として、避難生活の継続による慰謝料を算定するのが相当である」

「このような地域における住民の生活基盤としての自然環境的条件と社会環境的条件の総体について、これを一応『故郷』と呼ぶこととし、法的保護に値する利益と評価した上で、それが本件事故により侵害されたことによる損害について賠償を命ずることは、避難を余儀なくされた慰謝料や避難生活の継続による慰謝料を算定しただけでは評価し尽くされない損害について、むしろ地域社会全体が突然避難を余儀なくされて容易に帰還できず、仮に帰還できたとしても、地域社会が大きく変容してしまったという本件の被害の実態に即した損害の評価の在り方として適切である。

 この観点から、当裁判所は、避難前の故郷における生活の破壊・喪失による精神的損害の慰謝料として、避難を余儀なくされた慰謝料とは別に、故郷の喪失又は変容による有形、無形の損害ないし精神的苦痛を評価し、故郷の喪失又は変容による慰謝料を算定する」

 「中間指針が個別の紛争解決のすべての基準となるものでないことはその法的性質や趣旨から明らかであるから、中間指針の趣旨を十分考慮しつつも、自主的な紛争解決が困難な場合に用意された憲法上の手続に従ってされる司法判断を可能な限り尊重し、迅速な被害救済を図っていくこともまた、原賠法が原子力事業者の賠償責任を特に定めた趣旨であり、原賠法も、そのことを前提に中間指針の法的性質を位置づけたものと解される。 
 

 当裁判所は、被告が、このような司法判断の意義と迅速な被害救済を図る原賠法の趣旨とを十分に踏まえ、本判決を受けて適切に対応することを期待する。
 

 原判決において被告に賠償の支払を命じた部分(本判決により変更された部分を除く。)及び本判決において被告に賠償の支払を命ずる部分に仮執行の宣言を付し、仮執行の免脱宣言を求める被告の申立ては理由がないから却下する」 
 
 以下は馬奈木氏の感想部分である。

 東電がいかに悪質だったのかを評価するに際して、地元住民の信頼を裏切った点を強調したこと、避難を継続しているか、途中で帰還したか、途中で亡くなったかにかかわりなく一律の判断としたこと、ふるさと喪失を正面から認めたこと、東電に仮執行の免脱を認めず早期救済を強く示唆したことなど、仙台高裁第2民事部の心意気が如実に示されていると感じました。
 
 本件の担当裁判官は、本件の原告の方々が何を求めているのか、本件の事案がどういう性質の事案なのかを正確に理解していたと思います。南相馬市や双葉郡など福島第一原発に近い地域の住民の方々が原告となった裁判であり、原発の安全性に対する信頼性がないところで原発は稼働できないわけですから、予見できたのに対策を採らなかったのは、いわばその地元の信頼を裏切ったのだと厳しく指摘し、ふるさとを突如として喪失することになった原告の人々の苦痛、避難先で亡くなってしまう無念さを配慮し、東電にこれ以上争うことなく早期に救済を図るよう求めるという今日の判決は、裁判所が本来的に果たすべき役割をきちんと果たしていると思いました。つまり、当事者に対する説得力という納得のプロセスの担い手としての役割といい、紛争の解決への道筋をきちんと示すという紛争解決能力といい、判示内容のバランスといい、裁判官の見識が実によく示された判決だったように思いました。

 もちろん、みなさんには言うまでもありませんが、こうした判決はただ黙って示されるものではありません。原告団・弁護団は、高裁でも改めて本人尋問を行い、裁判官を現地に連れ出し、被害実態を漏れなく明らかにしようと努力してきました。そして、私たちとともに公正な判決を求める署名にも取り組み、12万筆もの署名を集めました。そうした原告団・弁護団の法廷内外での努力の成果として、今日の判決は示されたのだと思います。その意味では、勝つべくして勝ったといえますし、勝つための準備をしてきた原告団・弁護団でもあったということなのだと思います。
 
 同じ仙台高裁でたたかったいわき避難者のみなさんの勝訴を一緒に祝い、私たちも続きましょう!!
 
 馬奈木厳太郎

 

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