まじめな作文教師がアカと呼ばれた時代
倉本聡の「やすらぎの刻~道」が、テレビ朝日開局60周年の記念番組として放送が始まった。前作の「やすらぎの郷」が好評であったのでそれを引き継いでいるのだ。
「やすらぎの郷」の住人の石坂浩二が演じる脚本家菊村栄が、安らぎの郷の住人で「ツイテナイ」が口癖の水沼六郎をヒントに、「ツイテナイ」人物を主人公にした脚本を書く。それはテレビ局のためではなく、自分のために書くのだ。題名は「道」である。
最初ドラマの題名「やすらぎの刻~道」を見たとき、「~道」とは何のことかと分からなかったが、ドラマを見ていて、劇中劇の題名であることが分かった。
「道」にはツイテナイ男として、根来公平が出てくる。兄弟が多い養蚕農家の根来家の4男である。幼少の頃からツイテナイことばかり起きているという人物である。
3男の兄の三平と学校に通っているが、国語教師の室井先生がアカという疑いをかけられ、警察に捕えられて拷問を受け釈放される。三平は室井先生は少しも間違っていないと教頭先生に主張する。公平はその様子を覗き見していた。
室井先生は、作文は自分の思ったこと見たことをそのまま書くようにと指導し、自分も作文雑誌に「戦争はよくない」と書いたので、特高に捕まることになったのであった。
戦前、作文によって生活を見詰めさせようという真面目な教師たちが作文(綴り方)教育を研究し、実践していた。国定教科書として私も使ったことがある「綴り方」というものがあった。でも、私には「綴り方」は大の苦手であった。もし綴り方教育の教師に指導を受けていたらそんなことは無かったと思うのだが。
そうした良心的な作文教師は、「アカ」として睨まれていたのだ。そのことを「道」は描きだしている。劇中で生徒が「天皇」という言葉を発するとき直立不動の姿勢をするが、私も経験がある。
軍が権力を持ち、天皇を現人神として、アジアに軍事力で侵略を広めていった時代であった。今から見ると「戦争はいけない」ということが間違っていないと分かるが、当時は上からの強制によって戦争は正しい、正義の戦争だと押し付けられたいたのだ。
作文教育によって本当のことを見る目、考える力を養われることは、軍にとって脅威であった。だから「アカ」というレッテルを貼って、恐怖心を煽り押さえ込もうとしたのであった。
「道」は昭和初期から戦中、戦後を描いて行くということだが、あの時代をどのように描くのか楽しみにしている。
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