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2018年5月10日 (木)

ブームの「君たちはどう生きるか」を読んでみた

 マンガの「君たちはどう生きるか」(作者 羽賀翔一)の大ヒットがきっかけで、吉野源三郎の原作も売れているらしい。

  吉野の原作は私が小学校6年の時、当時まだ閉鎖されていた学校の図書室にあったのを担任の先生に特別に貸してもらって読んだ覚えがある。分厚い本であった。同じシリーズの第一集の「心に太陽を持て」と共に大変感動したことを思い出す。

  図書室が閉鎖されていたのは、戦前の本が残っていたからであろうと思うのだが、開館されていなかったのは残念であった。でも、先生が貸してくれたので嬉しかった。忘れられないのはこれらの外に「ファーブル昆虫記」や「丹奈トンネル」があった。

  ところで「君たちはどう生きるか」だが、子どものとき読んだ内容は忘れてしまったが「コペル君」の名前は覚えている。

  連休後半に娘と婿が来たときこの本を持って来ていたので読んだ。岩波文庫版でオリジナルに一番近い本で、婿は2回読んだと言っていた。

  字が非常に小さくて読むのが大変で1日半では最後まで読むことはできなかった。しかし、最後の丸山真男の感想は読んだ。彼の感想は的確だと思った。手元に本がないので書けないが、印象に残ったのは「時代を超えて訴えるものがある古典といえる」という指摘であった。

  吉野が出版したのは1937年であったが、80年経って再び脚光を浴びたのだから丸山の指摘の通りであった。

  私は読みながら文学的表現を通して、社会科学や哲学、生き方について考えさせている本だと思った。その点については丸山も似たようなことを言っている。彼はもっと直截に「資本論」だと言っているが、日中戦争が始まり、日独3国同盟ができ、本にも出て来る「非国民」という言葉が人々を抑圧していた時代に、よくもこのような本を書くことが出来たものだと感心した。

  コペル君と言う旧制中学校1年生とその友人のエピソードを具体的に描写して、それについて叔父さんが手紙の形で感想やアドバイスを書くという形式である。

  最初の部分で「人はどんな場合でも、みなお互いにつながっているのだ」ということにコペル君がきがついたことに対して叔父さんは学問的には「生産関係」というのだと教える。採集・狩猟生活の原始時代には人は誰とつながっているかを知ることが出来たが、だんだんと生産が複雑になってくるとそれは不可能になった。しかし、人間は今ではグローバルに繋がっているのを知るべきだというのだ。

  吉野は「おかげ」とか「縁」という表現は使っていないが、我々が今ここにあるのはいろんな人々の「おかげ」である。私に言わせると、人だけでなく、地球上の全ての存在の「おかげ」でもあるのだ。広く見、考えることの大切さを言っているのだと思う。

 さらに言えば、地球上の存在はすべて宇宙とも関わりあっている。一番わかりやすいのは太陽である。

  貧乏な豆腐屋の子の浦川君の部分では、金持ちや恵まれた人や多数の貧乏な人や恵まれないがいるが、金持ちが立派だとは限らない、貧しい人下積の人でも社会に貢献している人が立派なのだと言い、世のために自分が何を成し遂げられるかが大事なのだと述べている。

  ナポレオンについての部分ではナポレオンの功績は「ナポレオン法典」をつくったまでだとし、ロシア遠征で60万人もの兵士を無駄死にさせたことで戦争の愚かさを考えさせている。日本もまさにその道を歩み始めていたのをいしきしたのだろうか。

 自由、民権などを獲得したフランス革命についても書き、歴史的発展の中に位置づけて物事を見たり考えたりすることの大切さを説いている。

 丸山は「戦後は戦前のような貧富の差は無くなったと書いているが、小泉政権以後格差が広がり、非正規被雇用者は4割以上になった。生活保護世帯も増加、教育格差も増大、年金も頼れなくなってきているなど生活不安を抱える人が増えている。

 ジャーナリストの池上彰氏は、

「(80年前は)同調圧力のような、ちょっとでも政府の方針に違反すると、売国奴とか非国民とか、そういうことを言われるようになってきた重苦しい雰囲気。今なにか政府の批判をすると、それだけで反日とレッテルをはられてしまう。ネットですぐ炎上したり、なんとなく若者も空気を読む。まわりを見て忖度(そんたく)をして、という形で息苦しい思い。(原作が出版された)当時と、共通したようなものがあるのかなと思う。」

 と述べているが、この本が売れているのはそういう状況を反映しているのだと思う。ここで大事なのは、「叔父さん」が言っているように、自分の目でよく見て、何ができるかを考えて行動をすることである。今の状況を変えるには自分自分ができる行動を起こすことだ。

 この本には「君たちはどう生きるのか」の答えは書いてないと言われるが、この本を読むことによってそのヒントは一杯書いてあるのだ。

 安倍政権になって特別秘密保護法、憲法解釈改憲で集団的自衛権行使、道徳の教科化、安保法、・・・・戦前回帰の施策を次々打ち出してきた。「君たちはどう  生きるのか」が書かれた1937年辺りと似た道を進み始めているのではないか。そうさせないことが喫緊の課題だと思う。

 

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