糖質制限は老化を早めるという研究は間違い?―②―
東北大学大学院都築准教授らの「糖質制限は老化を早める」という研究に対して、糖質制限の第一人者糖質制限食の第一人者で『江部康二の糖質制限革命』の著者でもある江部氏は次のように反論する。
東北大学大学院・農学研究科のグループ は根本的な間違いを犯しているというのだ。それは、「そもそもマウスの食事実験の結果はヒトには当てはまらない」という基本的なことを無視していることだと指摘する。
マウスで糖質制限実験をすることがなぜ根本的な誤りなのか。マウスやラットなどネズミ類の本来の主食は草の種子(すなわち今の穀物)だからだという。
鮮新世(510万年前)以降、ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄する。510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたネズミに、高脂肪・高タンパク食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前のことだ。
ネズミの主食はあくまでも「穀物=低脂質・低たんぱく食」なのだ。ネズミは、「穀物=低脂質・低たんぱく食」に特化して、消化・吸収・代謝システムが適合しているのである。
東北大学大学院の実験は単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)糖質制限食(高脂肪・高タンパク食)をマウスに与えて、寿命や老化を観察するという実験にすぎない。
すべての代謝が狂って老化が進み寿命が短くなるのも、言わずもがなだという。
食事についてヒト以外の動物を使って実験することがいかに見当はずれなことか。わかりやすい例として、ゴリラを例に説明する。
ゴリラの主食は「棘(トゲ)の多い大きな蔓(つる)や大きな草」だ。つまりゴリラは超低脂質・低たんぱく食が主食なのだ。このゴリラに、糖質制限食(高脂肪・高タンパク食)を食べさせたら、代謝はガタガタになり、マウスやラットと同様、老化も進み、寿命も短くなるだろう。
東北大学大学院の実験は、わかりやすく言うと、ゴリラにステーキを食べさせるというイメージになる。
人類のもともとの食性は「糖質制限食」であった。農耕が始まる前の700万年間は、穀物ではなかったことは確実である。農耕が始まる以前の狩猟採集生活では、糖質を取ることはまれにしかなかったといえる。
つまり歴史的事実として、農耕が始まる前は人類皆、実質的に糖質制限食を実践していたのだ。
また、ヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、シナプスが張り巡らされるためには、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の摂取が不可欠であった。
EPAとDHAは、地上の植物性食品には含まれておらず、動物性食品にしか含まれていない。
したがって少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝……などの高脂肪・高たんぱく食を、脳が急速に発達した20万年前頃、必要充分な量、食べていたことは間違いないであろう。
このように人類は本来、高脂肪・高タンパク食に慣れているので、糖質制限食の安全性は高いのだ。
マウスやラットやゴリラと、ヒトの食性はまったく異なっているのだ。
結論を簡潔に申しあげる。
薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、研究方法として比較的問題は少ないと思う。
しかし、本来ヒトと主食がまったく異なるマウス・ラットなどネズミ類で、人類の食物代謝の研究を行うのは、出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要でだ。
研究者の皆さんにおかれましては、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」はまったく意味が異なることを認識してほしいと思う。
私はこの反論を読んで安心をした。糖質制限は間違っていないと思うのだ。
(東洋経済オンラインから紹介。 ところどころ省略してある)
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健康診断で高血糖とわかると、病院での栄養指導は、相変わらず摂取カロリーを限定することとバランスの取れた食品です。
それが栄養学会の常識なのでしょう。
しかし、それによって体重は確実に下がりますが、血糖値が下がる人は少ないはずです。
バランスの取れた食事で示されるメニューの6割は糖質だからだと、しろうとの私は思っています。
専門家は、もっと広い視野で研究をしてほしいものです。
投稿: たりらりら | 2018年4月 4日 (水) 10時23分