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2017年8月19日 (土)

恩田陸著「蜜蜂と遠雷」―音楽の天才の凄さ

 新聞で恩田陸著の「蜜蜂と遠雷」の広告を2度見てこの本が直木賞と本屋大賞をダブル受賞したことを知った。最初「蜜蜂」と「遠雷」という無関係のものをくっつけた題名に興味をもったが、広告を見て国際音楽コンクールを通じて主としてピアノ音楽を描いたものであることに惹かれた。

 以前に原田マハの絵画に関する小説を2冊読んだことがあり、音楽を舞台としてどのように描いてあるのか、絵画はまだ具象であるが消え去る音楽をどのように描くのかを知りたいと思った。それで書店を巡ってこの本を見つけて買った。

 手に取ったら厚さが3cmぐらいあったのでびっくりした。買う前は厚させいぜい2cmぐらいと予想していたのだ。読み終わったときページを見たら508ページあった。

 読み始めたが、視力がアンバランスで、右目でしか焦点を合わせられないので読むのが一苦労であった。以前はページの右上から左下にかけてブラウズして読むことができたのに、今はそれが出来ないのだ。だから読み終わるのに3週間余りも要した。

 読み始めてすぐ面白いと感じた。主要登場人物の1人の風間塵という異色の少年や栄伝亜夜という少女とマサル・カルロとの最初の出会いのエピソードなどだ。

 風間塵の設定が面白い。養蜂家の父を持ち、ホフマンという世界的なピアニストに指導を受け秘蔵の弟子なのだが、ピアノが家にないのでピアノがあるところで弾かせてもらっているのだ。しかし、音感が非常に素晴らしく、自分でも調律ができるのだ。ステージで弾く前に周りの物の反響まで計算に入れるのだから本当にそんな人がいるのか?と思ってしまう。

 栄伝亜夜という20歳の女性は屋根を打つ雨だれの音にも音楽を感じてしまうという音感の持ち主である。マサル・カルロスは子どもの頃亜夜と出会ってピアノを始めるのだ。それが芳ケ江国際コンクールで再び出会う。マサルはジュリアード音楽院の学生で幅広い音楽で才能を発揮している。

 この他にコンクールのコンテスタントとして、普通の市民生活をしながら音楽をやっている高島明石という人物がからむ。

 コンクールの審査員が13人いる中で、嵯峨三枝子というピアニストとマサルの指導者のナサニエル・シルバーバーグがこの小説の重要人物である。

 浜松国際コンクールを元にした芳ケ江国際コンクールは、2週間にわたる長丁場のコンクールで、第一次予選300人のコンテスタントの中から第2次に残れるのは24人で、第3次まで残るのは12名である。その中からオーケストラとの共演をする本選に残れるのは6名に過ぎない。

 このコンクールは国際的にも知名度を上げて来ており、注目されているコンクールである。そこでの出場者の中で上記の3名に焦点が当てられて物語が進むのだ。

 この小説を読んでプロの音楽家(この場合はピアニストだが)というものが天才とは言えどんなに凄いものかが分かった。

 楽譜を読んだだけでも演奏できるとか、即興での演奏ができるとか、たくさんの曲を暗譜しているとか、それだから演奏を聴いて批評したり学んだりできるのだとか・・・・そういうことが分かった。

 私のような音楽音痴は演奏会を聴いてもただ聴いているだけである。それ以上のことは何もない。演歌とかポピュラーソングを聴いてうまい、下手が分かる程度である。

 楽譜はもちろん読めないし、音楽の才能がゼロに生まれたことが残念でならない。かろうじて合唱はやっているがそれだけである。音感もリズム感も拍感もゼロに近い。

 この小説では、登場人物を内面からと他者の眼で描くことによりコンクールと音楽を描いている。その筆致は素晴らしい。よくもこんなにいろいろな言葉を駆使して表現できるものだと感心する。ただそれが余りにも詳細なので読むのは大変であるが。

 作者の恩田氏は浜松国際コンクールに4度通って構想を考えたそうだが、それにしても音楽を描くにはその曲についても、音楽についても理解する才能がないとできない。

 この小説を読む副産物としてコンクールの内幕や参加者の心理などを知ることができる。

 

 

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コメント

この本が話題を呼んでいることはよく知っていましたが、ららさんのブログを読んで、読んでみる気になりました。私も音楽が好きで定年後の大きな趣味になっています。小学生の頃からスズキメソッドでヴァイオリンを習っていたことが今になって役に立っていることは親に感謝です。然し乍ら私も絶対音感、リズム感、拍感に乏しく、初見がとても苦手です。子供の頃、新しい曲を習う時はまず先生に弾いてもらい、またレコードを買って耳から覚えることを常としていたからです?本来、楽譜にはすべて必要なことが書いてあるので楽譜から音楽ができるのです。その為には絶対音感、リズム感、拍感が必須となります。しかしこの感覚は歳をとってからは非常に習得しにくいのが現実です。音楽は幼児教育が特に大切と言われる所以です。それはともかく、この本を読んでみます。

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