共謀罪法案についてよく分かる記事
知人が日刊ゲンダイ(6月5日)の記事を送ってくれた。平岡元法相の懸念である。平岡氏は「共謀罪が生み出すのは密告奨励社会である」と指摘している。北朝鮮のような社会になるのだ。何とも恐ろしい、生きにくい日本に今週にもなろうとしている。
インタビュー形式なので分かりやすく、共謀罪法案の問題点を的確に説明していると思う。一部編集した。
■自首すれば減刑、密告奨励社会へ
――「共謀罪」は過去3回、法案が国会に提出されましたが、 世論の反対が強く、ことごとく廃案になってきました。今回は、「 テロ等準備罪」と名前を変えていますが、複数の人の「 合意そのものが犯罪」になるという共謀罪の本質は、 まったく変わっていません。犯罪意思、 つまり心の中で思ったことをどうやって取り締まり、 立件するのでしょう?
――「共謀罪」は過去3回、法案が国会に提出されましたが、
そこが大問題なのです。「合意」は「心の中で思ったこと」 と紙一重で、憲法で定められた「内心の自由」を侵しかねない。「 疑わしい」というだけで人が処罰される事態があり得ます。
また、 「悪い考えを持っている」という証拠を集めようと思えば、 通信傍受(盗聴)、会話傍受、 身分を偽った潜入捜査や密告に頼らざるを得ない。 取り調べにおいても自白偏重になりがちで、 冤罪を生じさせる危険性が高くなります。
――捜査員がスパイを送り込み、 情報を得る手法が合法化されることへの懸念もありますね。
捜査員でなくても、 敵対者が情報を得るために団体に入り込んだり、 仲間が仲間を売り渡したりするケースが考えられます。その人たち が刑罰を免れる仕組みがつくられているからです。 共謀罪法案には「実行着手前に自首した者は、その刑を減軽し、 又は免除する」という「必要的刑の減免規定」 が盛り込まれている。共謀に加わっても、 犯罪の実行前に自首すれば、 必ず刑を減免しなければならないという規定です。
――捜査員がスパイを送り込み、
捜査員でなくても、
――密告を奨励するようなものですね。
その他にも、昨年の刑事訴訟法改正で司法取引制度が新設され、 他人の犯罪事実を明らかにする見返りに求刑を軽減したり不起訴に することが認められています。
その他にも、昨年の刑事訴訟法改正で司法取引制度が新設され、
この場合、捜査段階で、 自分が罪から逃れるために当局の筋立てに沿ってウソの供述をする ことだってあり得るでしょう。共謀罪ができて、 刑の必要的減免制度などが認められれば、誰が敵か味方か、 疑心暗鬼になり、 密告を奨励する相互監視社会になってしまいます。
――政府は2000年に国連総会で採択された「 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)」を締結するために、 国内法として共謀罪をつくる必要があると説明しています。
私もこの条約の締結は必要だと考えますが、この条約は、 例えばマフィアによるマネーロンダリングや麻薬取引のような経済 犯罪の取り締まりを目的としたものです。 条約自体でそのことを明記し、条約の立法ガイドなどで政治的、 宗教的なテロリズムを除外することが明確にされています。 条約締結のためなら、 組織的な経済犯罪に特化して国内法の整備を進めればいいので、 テロ対策とは分けて考えるべきです。
――政府は2000年に国連総会で採択された「
私もこの条約の締結は必要だと考えますが、この条約は、
――しかし、政府は「五輪のため」「テロ対策」
テロ対策と言われると国民も反対しづらいから、
それでもまだテロ対策に足りないものがあるというのなら、
それに、
――民主党政権時代、あるいは法相を務めていた時は、 TOC条約と共謀罪の取り扱いはどうだったのでしょうか。
政権交代前から、 共謀罪を導入しなくてもTOC条約を批准することが可能かを探り 、09年7月に「可能だ」とする「 民主党政権インデックス2009」が出来ました。
政権交代前から、
実際、 11年11月の衆院予算委員会では、当時の法務省刑事局長も「 平岡大臣の答弁(共謀罪を作らなくても条約は締結できる) を踏まえて、今後やっていかなければいけない」 と答弁しています。
民主党政権時、法務省は「共謀罪なし」
――法務省が一時はそういう立場を取っていたのに、
法務省というよりは、今や、 共謀罪を実際に運用する警察が積極的なのだと思います。 安倍政権では、 公安警察出身の杉田和博官房副長官や北村滋内閣情報官など警察官 僚が官邸で力を持っている。犯罪の数が激減し、警察の人員・ 予算が減らされようとする中、共謀罪を手に入れれば、 捜査対象は無限に広がり、 相当規模の労力と予算が必要になりますからね。
――政府は「一般の人は対象にならない」と説明していますが、「
一般企業や労組などの普通の団体も、「継続的結合体」 とみられる「団体」なら、当局がある時に「 よからぬ考えを持っている」と判断すれば、 捜査対象になってくる可能性があります。
戦前の治安維持法も、 当初は「一般の人には関係ない」とされていましたが、 次第に適用対象が拡大され、 時の権力者にとって煙たい団体は片っ端から摘発対象になりました 。
政権批判に精を出している「日刊ゲンダイ」 だって危ないですよ。例えば、共謀罪法案では「 組織的信用毀損罪」も対象犯罪になっています。「日刊ゲンダイ」 が監視対象にされていたり、密告する裏切り者が出たりすれば、 編集会議で「あいつは許せない。 懲らしめるためにこんな内容の記事を出そう」 みたいな話題が出ただけで、 疑いがかけられて一網打尽にされる可能性がある。
これは、 実際に記事にされたかどうかは関係なく共謀(合意) した段階で犯罪は成立するし、未必の故意でもいいので「 もしかしたら信用毀損になるかも」 という程度の共謀でも構いません。
こうなると事前の検閲と等しく 、言論の自由や思想の自由を著しく脅かすものとなります。当然、 市民生活は萎縮していく。監視や密告に怯え、 内心の自由も脅かされる、そんな社会にしてはいけません。 共謀罪法案の問題点から目をそらさせるために、「五輪」や「 テロ対策」の言葉で国民をだまそうとしている政府に対し、 有権者はもっと怒らなければなりません。
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