メディアは凶暴罪の怖さの具体例をもっと知らしめよ
共謀罪法が衆議院で数の暴力で可決された。これから参議院に送られて審議されるのだが、共謀罪法は戦前の治安維持法と同じ性格のものだということをもっともっと知らせるべきだと思う。
共謀罪法の一番の問題点は、抽象的に書かれていて解釈によってどのようにも適用されるということである。法の解釈をするのは政府や警察である。だからどのようにも拡大解釈が可能なのだ。
戦前の治安維持法も議会での審議中は、「無辜の民に及ぼすことのないよう十分研究考慮した」と司法省は力説したが、いざ施行されると、解釈はどんどん拡大され、関係がない芸術家や教師や学生や作家や宗教家などにも及んだ。創価学会の牧口常三郎や戸田城聖が検挙されたのだ。
23日の「天声人語」を読んで、戦前の治安維持法の怖さを具体例で取りあげていたのがよかった。どのように拡大解釈され、適用されたのかが分かる。
「欠食児童に学用品を」と呼びかけたポスターは、「地主と凶作にあえぐ農民を解放せよ」と煽るのが狙いとされたというのだ。「子ども食堂をつくろう」という動きが広がっているが、これも反政府運動と捉えられることになろう。
絵画の雪かきに励む男児のまなざしが熱いのは、「作者の階級意識の表れ」と官憲は体制転覆の意図にこじつけたのであった。
天声人語はこの他に、「北海道の生活図画事件」を取り上げている。1941年から42年にかけて、北海道で美術教師や生徒ら二十数人が逮捕投獄されたのだ。理由は「絵で共産主義を広めた」ということであった。
以下天声人語をそのまま引用する。「逮捕されたひとり、菱谷良一さん(95)は19歳の師範学校生だった。『共産党員ではなく、プロレタリアートなんて言葉も知らなかったのに、あっという間に思想犯へ仕立て上げられました』。学生の日常を描いた作品『話し合う人々』を、取り調官は『共産主義を熱心に学ぶ姿』だと決めつけた。退学させられ、有罪判決を受け、徴兵され、戦後は会社員として静かに暮らした。
「『法解釈なんてどこまでも拡大できる』と菱谷さん。『特定秘密保護法も共謀罪も市民を痛めつける武器になる。根っこは治安維持法に通じます』」
ごく普通の市民、菱谷さんの指摘することは非常に大事だと思う。
戦前の治安維持法が拡大解釈された実例をいろいろと大量に示して具体的に共謀罪の怖さを国民に知らせることがメディアの責務だと思う。国民は「自分は何も悪いことはしないから、関係ない」と思っている人がほとんどだと思うのだ。
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