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2017年4月 4日 (火)

共謀罪法は一般市民に無縁ではない―⑦―

 

♦♦ノーデンの暴露の第一弾は、大手電話会社ベライゾンが加入者数千万人の通信履歴を収集して毎日NSAに提出していたという事実だった。「テロ防止」のために、数千万人がいとも簡単に通信の秘密という法の原則から引きはがされた。

 その一方で、前章でみたように、ムスリムの米国市民が政治的には「模範的」で「愛国的」とされる人々も含めて、NSAの集中的監視を受けていた。つまり、例外のはずだった監視の対象者はいとも簡単に拡大されて、個々人は法の保護を失った。

 これまで主権者として聖域で守られていた市民も、外国籍者同様に例外状態に投げ込まれ、スパイされるようになった。NSAは9・11後に成立した愛国者法を拡大解釈し、こうした秘密裏の監視が正当化されると主張してきた。例外状態が合法化されれば、権力の実効支配と法の支配の境界線は限りなく薄らいでいく。

 ここで指摘されていることは重要だ。共謀罪が狙うところもそこにある。権力の実効支配と法の支配の境界線が限りなく薄らいでいくことなのだ。それが怖いのだ。

♦♦合法と違法の境界線の揺らぎは、アフガニスタンやイラクで米軍にとらわれた「敵性戦闘員」がいかなる意味でも市民として扱われず、捕虜としてすら扱われず、米国憲法およびジュネーブ条約の対象外という解釈の下、キューバの米軍クアンタナモ基地内収容キャンプで無期限拘留されている事実とも重なる。

 憲法も国際条約も例外化、無効化されれば、人権は世界規模で絵に描いた餅になる。アガンベンは実際、対テロ戦争下で法の例外状態が原則に取って代わりつつあると警告してきた。つまり法の守りを解かれて、監視システムのなかへ無防備に取り込まれていく私たちは、アガンベンのいう「剥き出しの生」へと近づいているのではないだろうか。

 その通りだと思う。

♦♦日本の文脈に当てはめれば、国家による個人の監視という例外状態は国外にとどまらず、戦時中は国内の朝鮮出身者に「協和会手帳」を携帯させ、戦後も外国人登録証の常時携帯や指紋押捺として継続してきた。

 日本の近代化、そして民主化の内部に、例外状態は存在し続けた。指紋押捺制度は1980年代からの反対運動によって外交問題化し、2000年には全面廃止に至った。しかし、2007年から空港などでの入国手続きの一部としてすべての外国籍者を対象に再開された(旧植民地出身者を対象とする「特別永住者」を除く。)。

 わずか7年で復活したのは、テロ対策として米国が空港などで外国籍入国者から指紋を採り始めたことが契機だった。帝国主義の下で始まった指紋押捺が、対テロ戦争の下でよみがえり、まさにふたつの時代を似通わせている。

 私も米国に行ったとき、空港で指紋を採られて気味悪く感じたことを思い出す。

 

♦♦日本国内でも監視の技法は確実に対象者を広げ、例外から原則へと移行している。IDカードがそのひとつだ。2002年から住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)、昨年から共通番号(マイナンバー)制度によって、日本国籍者にも番号がふられ、任意でIDカードが発行されるようになった。

 

 国は1970年代に国民総背番号制を推進し始めてから「便利」「安心」をうたい文句にしてきたが、最初の国民IDカード「住基カード」が2015年3月の時点で累積有効交付枚数約710万枚と、12年たっても人口の約5・5%にしか普及していないことは、この制度が人々に必要とされていないことをなによりも物語っている。

だからこそ二番目の国民IDカード「個人番号カード」で、国は任意の取得をほどんど義務と誤解させるまでに宣伝し、さらに交付手数料を無料化した(もちろんその費用は税金から支払われている)。総務省はホームページで「就職、転職、出産育児、病気、年金支給、災害等、多くの場面で個人番号の提示が必要となります」と書き、私たちの人生のあらゆる変化をこの番号に結びつけ、この番号で振り分け、この番号によってときに私たちの行く先に待ったをかける。

  デジタル時代の今日、ひとつの番号によって収入、職歴、病歴、学歴などがやすやすと検索できる。民間企業も利用する。カードに指紋などの生体認証を導入することもすでに検討されている。個人番号カードは外国人登録証以上の拘束力を発揮するかもしれない。

私も確定申告や証券会社に登録するとき必要と言われ仕方なくカードを作り使用したが、大丈夫かと不安がつきまとう。人には尋ねられると「カードを作る必要なない」と教えている。

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