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2017年4月11日 (火)

共謀罪法は一般市民に無縁ではない―⑨―

 ♦近代が育てた監視技術は、権力が個人の抵抗をそぎ、同時に人口を利用するために、民主主義の例外状態である植民地で最も先鋭的に発達してきた。その技巧がいま、すべての人口を対象にしている。

 個人に対する法の守りは解体され、権力の実効支配、すなわち暴力が世界に拡散していく。当然、対抗暴力も再生産される。現代の監視技術は個人を剥き出しの生へと変えながら、世界をより危険な場所へと変容させているのだ。

 

 ♦それと同時に、監視技術の歴史を振り返る作業は、植民地支配下で暴力と一体になった監視にさらされてきた人たちの存在を私たちに気づかせる。最も過酷な暴力と監視を受けてきた植民地は、対テロ戦争下でも繰り返し戦場にされ、いのちが破壊される不条理への憤怒と絶望が複雑に混ざり合って、欧米への対抗暴力に注ぎ込んでいることを、私たちは理解しなければならない。

 イスラム国ももとはと言えば、米国ブッシュ大統領の大量破壊兵器誤認を口実にしたイラクのフセイン体制を崩壊させたことが原因である。

 拡散するテロも史上空前の難民流出もBlack Lives Matter も慰安婦問題も、植民地の経験を理解しなければ本当には解決できない。沖縄米軍基地問題もパレスチナ問題も南北格差の問題も、およそ現代世界を不安定化させている要因は、植民地支配の過去に連なっている。

 それを抜きに、昨日の不正義を今日の監視で解決しようとするなど、どだいあり得ない方程式でしかなかったのだ。原因を見ずに問題を封じ込めようとする対処法は、人のいのちを冒涜する行為でもある。

 

♦♦スノーデンが大量監視システムの実態を暴いたように、監視研究はこのすべてのプロセスを目に見えるものにしていかなければならないと私は思う。それくらい真実は、力ある者にとって都合のいい後づけの宣伝と世論操作によって覆い隠されている。私たちはあふれる情報のなかで、価値観がますます倒錯する時代に迷い込んでいるのだ。

 インターネットの強い信奉者であるスノーデンは、だが同時に、真実の力を信じる人でもある。その専門知識をばねに、だれよりも創造的に現代の監視の全体像を私たちに提示した。

彼の言葉にもう一度、耳を傾けよう。(159ページから170ページ)

 

♦♦監視が未来を消滅させる

 スノーデンのプライバシー論・・・・・

 「みんな、なにが起きているのかを知りたがっています。人々は監視をどうでもいい問題とは思っていないからです」とスノーデンは聴衆の反応について言った。

 

 「政府はよく監視について『隠すことがないなら恐れることはないだろう』と人々に向かって言います。このフレーズはナチスのプロパガンダから来ています。けれどプライバシーはなにかを隠すためにあるのではありません。プライバシーはなにかを守るためにある。それは個です。

 プライバシーは個人が自分の考えをつくりだすために必要なのです。人は自分の信じるところを決定して表現するまでに、他人の偏見や決めつけを逃れて、自分自身のために考える自由が必要です。

多くの人がまだそのことに気づいていませんが、だからプライバシーは個人の権利の源なのです。

 プライバシーがなければ表現の自由は意味をなさない。プライバシーがなければ、言いたいことを言い、あるがままの自分ではいられない。プライバシーがなければ自分を個人とは主張できない。

 それは全人格を集団に吸収されることです。どこかで読んだことを話し、友だちの考えたことを繰り返すだけなら、オウムと一緒です」(171ページ)

 

【以上、「スノーデン、監視社会の恐怖を語る」独占インタビュー全記録、小笠原みどり、毎日新聞出版、2016年、から抜粋(筆者は色川哲郎医師)

 衆議院で公明党の賛成の下に審議入りした「共謀罪」法案は、心の中を監視する恐ろしい法案であると、民進党、共産党、自由党、社民党や日本弁護士会が反対を唱え、廃案に持ち込もうとしている。ざまざまなやり方で野党4党の国会での戦いを応援していくことが大事である。

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