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2017年3月31日 (金)

共謀罪法は一般市民に無関係ではない―④―

♦♦日本の戦時体制下での監視・・・・

 ♦1911年に設置された特高警察は人々の思想を取り締まり、社会主義や労働運動に共鳴する人間をとらえては凄まじい拷問を加え、作家の小林多喜二を虐殺した。

 隣組や町内会を通じて密告が奨励された。戦時中はスパイ防止活動にとどまらず、国家への批判を連想させるどんな考えや行動も「非国民」として非難され、社会的にも肉体的にもそれは死に直結した。ネットも携帯もなくても、戦時総動員体制下の日本は人々の目と出版物や郵便物への検閲、そして何よりも天皇への忠誠心によって、自己の内面にまでおよぶ総監視社会を実現したのだ。

 子ども心に覚えている。それは「壁に耳あり、障子に目あり」という標語だ。治安維持法はスパイ防止だけでなく、国家や政治を批判したり、労働運動などをする者を監視し取り締まったのだ。戦地へ出す手紙、戦地から出す手紙も検閲されていた。天皇への忠誠心を見るには「天皇陛下」というときには直立不動の姿勢でなければならなかった。

 

 しかしそのすべてが結局、日本人を敗戦という破滅へしか導かなかった。いまでも権力が個人の思想と言論を強制力で統制する社会は地球上に多く存在するが、それが個人を根源的に苦しめ、社会を破局へとひた走らせることは、日本の過去がなにより証明している。

 

その反省から、特高警察を擁した内務省は戦後解体され、日本国憲法には検閲の禁止(第21条2項)、拷問の禁止(第36条)が明記され、個人の尊厳と幸福追求権(第13条)をもとにプライバシー権が確立されていった。

 国家権力が私生活に介入し、個人情報を集めることがもたらす壊滅的な結果は日本では容赦のない徴兵制と、狂信的で息苦しく、多くの無実の人を思想犯として投獄した戦時体制の記憶に照射されて理解されてきたといえよう。

 そうした戦前の酷い時代を体験した人で生きている人は年々減っている。安倍政権の政治家は戦後生まれである。戦前を知らないからか、戦前に戻そうとしているのは怖いことだ。

  だが日本には、実はこうした戦争の集合的記憶に刻まれていない、もうひとつの監視の歴史がある。戦時下に見張られていたのは「国民」ばかりではない。日本は植民地や占領地で、格段に厳しい監視システムをつくり上げ、今日に引き継がれる監視のツールを開発していったのだ。

 

植民地化した台湾、朝鮮で、日本は過酷な同化政策を実施した。人びとは名前を日本風に変え、日本語を使い、天皇を遥拝し、生活全般を日本式にすることを強要され、これに従わない人々は洗い出され、罰せられた。明治政府は国内では戸籍制度によって人々を数え上げ、「国民」にして名簿化し、富国強兵策に動員したが、台湾、朝鮮でも戸籍を実施し、人々を新たに日本国籍に組み入れた。

 だが、台湾戸籍、朝鮮戸籍は「内地」の戸籍とは厳密に分けて管理され、「外地」出身が本籍地を本国へ異動することは許されなかった。(遠藤正敬『近代日本の植民地統治における国籍と戸籍』明石書店)。

 植民地出身者は「日本人」に同化することを強要される一方で、「日本人」から常に排除され、戸籍によって帝国内の潜在的非国民あるいはスパイとして刻印され続けた。

 

植民地支配という監視技術のルーツ

 さらに「外地」では、個人の動向を把握するために新たな監視のツールが生み出された。日本は1910年代ごろから中国東北部の炭鉱や鉱山で人々を安価な労働力として使った。しかし植民地化への抵抗戦が続いていたため、炭鉱や鉱山では採用時に中国人労働者から指紋を採って登録し、指紋入りの労働証を発行した。他の炭鉱からの逃亡者ではないか、これまでにストを企てたことはないかなどを、指紋で照合したという。

 また、抗日ゲリラと住民のつながりを遮断するため、各地に「集団部落」をつくり、住民の出入りを身分証でチェックした。身分証と指紋という監視の手法はやがて、日本が1932年に設立を宣言した「満洲国」ですべての人々が携帯すべき「国民手帳」へと結実していく(高野麻子『指紋と近代』みすず書房)。

 

一方、1939年から日本で暮らす朝鮮出身者も「協和会」に登録して、「協和会手帳」と呼ばれる身分証=IDカードを持ち歩くよう義務づけられた。植民地出身者を「内なる敵」として監視し抵抗を弾圧しながら、なおかつ総力戦に利用するのに、身分証と指紋は便利な識別ツールとなったのだ。

 台湾や朝鮮半島や中国など各地を侵略し支配するために身分証と指紋をツールとしていたのは知らなかった。

 

 

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