共謀罪法は一般市民に無関係ではない―③―
♦♦NSAシステムの前身エシュロン
規模と性質において新しいNSAシステムも、社会的背景を見れば過去とつながっている。米国は米ソ冷戦下で軍の監視機能を急速に強化した。その最前線であった日本ではシギント活動が稚内、千歳(北海道)、三沢(青森)、嘉手納(沖縄)など約100カ所にまで膨らんだ。
米国内では、1950年代にマッカーシズムの「赤狩り」が国務省からハリウッドにまで吹き荒れ、1960年代の公民権運動下ではマーティン・ルーサー・キングが、その後のベトナム反戦運動下ではジョン・レノンが、女性解放運動下ではフェミニストたちが、国家の「脅威」として監視の標的となってきた。
そういう動きが日本のメディアでも報道されたのを思い出す。
1970年代半ば、FBIが50万人もの市民を「潜在的な反乱分子」とみなしてスパイしていたことが明らかになった。
「こうした過去を私たちはすぐに忘れてしまう。あるいはもう終わったことで、いまの世の中では起きていないと思ってしまう。けれど実は同じことが継続しているのです」とスノーデンはインタビューで指摘した。
その通り。直ぐに忘れてしまう。
♦♦彼は例として、警察官がアフリカ系の若者を射殺した事件をきっかけに起きた「Black Lives Matter(黒人のいのちだって重たい)」運動を挙げた。警察官による暴行は相次ぎ、またその度に警察官が法的に免罪されることに人々は怒り、抗議運動は全米に広がっている。(155ページ)・・・・・
♦♦スノーデンは権力に異を唱える人々が最も厳しく監視されてきたこと、そしてそれが社会全体の前進を阻むことを深く憂慮する。「言論の自由や信教の自由といった権利は、歴史的に少数者のものです。もし多数派として現状に甘んじているならば権力との摩擦は生じず、法による保護を必要とすることもない。
基本的人権とは少数者が政府から身を守るための盾であり、これがなければ社会に存在する既存の力に対抗することはできません。そして少数派が現状に抵抗できず、社会から多様な考え方が失われて、人々が物事を客観的に見られなくなれば、将来のためのよりよい政治的選択肢を失うことになります。
戦後日本国憲法で初めて基本的人権が明記されたこと、それを守らねばならないことを改めて強く感じる今である。
監視はどんな時代でも最終的に、権力に抗する声を押しつぶすために使われていきます。そして反対の声を押しつぶすとき、僕たちは進歩をやめ、未来への扉を閉じるのです」
安倍政権が4度目の正直で今度こそ成立させようとしている「共謀罪」法。まさに本当の狙いはテロ防止ではなく、「権力に抗する声を押しつぶすため」なのだ。そのために特別秘密保護法、安保法制、閣議決定による憲法解釈変更など着々と手を打ってきているのだ。
♦♦こうして過去から未来へ連綿と民主主義を内側から蝕んできた監視システムの姿が、過去に垣間見えた瞬間があった。2000年に欧州議会が調査した国際盗聴網「ECHELON(エシュロン)」もそのひとつだ。(156ページ)・・・・
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