米、安倍政権の報道圧力に懸念 - 2016年度人権報告書
アメリカ国務省が3日に発表した約200カ国・地域を対象にした2016年版の人権報告書で、「日本の報道機関に対する政府の圧力強化」についての懸念が示された。
「報道の自由」については、日本政府は一般的には尊重しているとしながらも、「いくつかの事例が、政府によるメディアへの圧力の高まりについて懸念を生じさせている」と指摘。昨年2月、番組の政治的公平性を理由に、放送局に「電波停止」を命じる可能性に言及した高市早苗総務相の発言を示した。
また昨年4月に来日した特定秘密保護法も報道機関への圧力を強めているという国連特別報告者の発言にもふれ「日本の報道機関の独立性は、深刻な危機にひんしている」と意見を述べたとも記されている。
過労死については、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が15年12月に自殺した事件に言及。「karoshi」という日本語を使い、遺族から厚生労働省への訴えが続いている中で「特筆すべき事例」として挙げた。1カ月に130時間に及ぶ時間外労働と、睡眠時間が週にわずか10時間だったという記録を示し、「過労がもたらす深刻な結果に、新たな関心を引きつけた」とした。
若い女性が「モデル業」などと偽の勧誘を受けて、AVに無理やり出演させられる被害が広がっていることにも触れた。
米人権報告書が懸念するように、安倍政権はさまざまな形で日本の報道機関に圧力や懐柔策で、政権や政策批判を封じ込めてきた。
また特別秘密保護法も国民の知る権利を奪ってしまった。メディアが取材をしようにもこの法律を盾にブラックボックスの中である。「深刻な危機」というのはその通りである。
安倍政権の報道対策については度々取り上げて来たが、悪くなるばかりである。米メディアが政府広報機関と呼ぶ読売・産経ばかりでなく、「みなさまのNHK」も「安倍政権のNHK」となっている。週刊誌から叩かれる朝日新聞も権力批判を弱めてしまった。
トランプ大統領がメディア批判を繰り返しているが、米国では自国をどのように見るのか2017年度の人権報告が見ものである。
この人権報告に関して、次のような見方のサイトがあった。「この報告書は、国連特別報告者の時と同様に、現政権を批判しようというグループに格好の材料を与えるだろう。政府は日本の放送法制について、米国を含め、国際的にきちんと説明するべきだ。」
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先日、中日新聞に評論家の保坂正康氏と半藤一利氏の興味深い対談記事があった。その中で戦前、日本のマスメディアは満州事変までは大正デモクラシーの流れもあり、政府に対して批判的な論陣を張っていた。ところが軍部首脳がマスメディアのトップに酒を飲ませて籠絡してしまった。それ以降、マスメディアの批判的な記事、言動は影を潜め一気に戦争への道を突き進んだと。今も安倍政権ではメディアのトップとの定期的な会合がある?など、メディア対策には力を入れている。どこかの国のように政権に批判的なジャーナリストが逮捕されたり、何者かに暗殺されてしまうようなことは流石にないと思うが、長期政権におもね、メディアの存在意義である批判精神が希薄になっているように思われる昨今である。尚、保坂氏と半藤氏の共著 「そしてメディアは日本を戦争に導いた。」は読んでみたい本である。
投稿: toshi | 2017年3月 8日 (水) 08時57分