面白くなかった朝日新聞連載「クラウド・ガール」
朝日新聞の連載小説「クラウド・ガール」が12月30日に終わった。著者は金原ひとみ氏であった。挿絵は山城えりか氏で毎回鉛筆画?の精密デッサンのようなユニークなものであった。
小説の方であるが、毎日読んできたが、結局何を描きたいのかがサッパリわからなかった。登場人物は、理有という大学生の姉と杏という高校生の姉妹の物語で、違う性格を持ち、仲がよさそうで、お互いに理解がしあえない状況が描かれていた。
理有は留学から帰ってきて、杏と一緒にマンションに住んでいる。杏には同級生の晴臣という恋人がいて身体の関係を持っている。ところが晴臣は浮気性ですぐに女を作ってしまう。杏にもう絶対しないからと言いながら。そして、結婚してくれと平身低頭する。そうしながらまた女を作って、ベットで寝ているところを杏に見つかってしまう。
杏は姉の理有が行く美容院の広岡という妻帯者の美容師を呼び出して、自室でセックスをする。それを理有に見つかって家を飛び出してしまう。
杏は姉の理有が広岡との関係を調べるために美容院に行って知り合ったのだ。理有はシェフの光也という男に想いを寄せている。
二人の母は、中城ユリカと言って作家であるが、二人の姉妹には母親らしい接し方をしない。また父親とも離婚をしていた。その母が自室で自殺をするのだが、理有はそれを杏に隠そうとする。二人の祖父母は心筋梗塞で死んだと言って葬式を出す。杏は死因を嘘だと思っている。二人にはどうして母が自殺をした理由が分からない。
母の死をはさんで、杏の行動と理有の心のうちが描かれて行くのだが、高校生なのに酒を飲んだり、夜中に踊りに出かけたり、セックスをしたり…とんでもない、理解しがたい人物が描かれている。
そして彼らの交流は、SNSを通じて行われる。クラウド・ガールというのはそういうスマホとインターネットを使う若者の生態を描こうとしたのか、だからそういう題名なのかと思う。
しかし、精神を病んでいるらしい母親の状況や死の様子などもかなり異常である。すべてが私のような昭和人間には理解できないことなのだ。
戦後71年、この間に様々な若者が現れて世間の耳目を集めて来た。戦争直後にはアプレゲールというのがあった。ヤンキーというのもあった。この頃は鳴りを静めてしまったようだが暴走族が走り回ったこともあった。
現代の若者は、スマホとインターネットでつながり、性についても拘りがなく、気に入らないと相手を蹴飛ばすのも躊躇しない、そんな若者を描こうとしたのであろうか。それにしても私には退屈な小説であった。
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芥川賞、直木賞が年2回発表され、その時はメディアに大きく取り上げられる。私は自分で言うのも何ですが人並み以上の読書家であると思っているが、毎年排出される両賞の作家の作品を一度も読んだことはない。こういえば身もふたもないが、両賞は出版社が話題作り、本を売るためにやっている即ち商業主義的な側面が大きいと思っている。やはり何年かの風雪に耐えた古典が読むべきに足りる作品であろう。格差が広がったといえども日本はまだまだ天下泰平、飽食の時代である。何が読者を惹きつける小説のテーマになりうるのだろうか?
投稿: Toshi | 2017年1月 6日 (金) 07時22分