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2017年1月19日 (木)

トランプ氏の暴言についての面白い見方の記事

 ツイッターを使って繰り返されるトランプ氏の暴言は止まらない。それについてダイヤモンドonlineが面白い見方の記事を載せていた。「トランプの暴言に仕込まれた『実は巧妙な交渉術』」というタイトルの記事で、鈴木貴博氏によって書かれたものだ。

 鈴木氏が「ゲームの理論」を使って、トランプ発言を分析している。以下にその部分を紹介する。

 「まず、我々日本人が理解しておいたほうがいいのは、このトランプのツイート攻撃はトヨタや日本企業だけを対象にしたものではないということだ。

 GM(ゼネラル・モーターズ)やフォード・モーターのような米国ビッグ3の一角も、厳しいツイート攻撃を受けている。また、ロッキード・マーティン、ボーイングといった米国を代表する製造業がトランプ大統領から同様のプレッシャーを受けている。そして各社の対応も様々である。

 GMはこの攻撃について冷静な対応を取った。同社のCEOが表明したことは、GMは従来から米国の雇用に尽くしてきている、工場投資については長期的な観点で考えるものだ、という一般的に正しいことを冷静に主張している。

 それに対して敏感に反応したのは、トランプ氏からトヨタとよく似た内容のツイート攻撃を受けたフォードだ。トランプ氏からのツイートの直後に、フォードはメキシコでの新工場の建設計画を撤回した。

 まだ攻撃を受けていないクライスラーを傘下に持つFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)は、「ルールが変われば適合する」とトランプ氏の主張を意識した意見を先に表明している。

 確かに、各社の事情は多少違う。フォードはこれまでもトランプ氏から「恥知らずだ」と罵倒されたことがあり、対応次第では今後狙い撃ちされるリスクもある。「工場の計画を撤回する」という経営に大きなインパクトがある決定に踏み切ったのは、ある意味で理解できる。

交渉相手から譲歩を引き出すBCG流「ゲーム理論」

 さて、このトランプ氏のツイート攻撃が持つ意味を、一歩引いて考えてみよう。

 各社の対応を見てすぐに気づくのは、各社とも対応がまちまちということ。言い換えると、そもそも一国のトップによるこうした暴君のような発言は、新興国ならともかくアメリカのような先進国ではこれまでになかった出来事であり、その真意や彼がどのような行動に出るかを誰も予測できないし、最適な行動など取れないということだ。

 このタイミングではとにかく目立たないようにし、できれば他社がスケープゴートになってくれたほうがいい――。各社がそのような心理状態にあったからこそ、一番狙われているフォードの場合はこれだけ極端な対応を取ったわけだ。

 ただ、このトランプ氏の言動がただの暴君の気まぐれな怒りによるものではないということは、理解しておいて損はないだろう。要は、トランプ氏が用いているのは、アメリカ流のゲーム理論的な考えに基いた交渉術なのだ。

 不動産の売買や資金調達といった交渉術を生命線として成長してきたトランプ・オーガナイゼーションのトップが、50年にわたるビジネスマンとしての経験の中で身に着けた独特の交渉術。これはその思考の延長線で行われているツイート攻撃だと考えるとわかりやすく、暴君から適切に身を守る処世術にもつながる。

 具体的に1つ、トランプ氏が用いていると思われる交渉のテクニックを挙げよう。ゲーム理論的な戦術の定石の1つなのだが「いつも合理的にふるまうプレーヤーよりも、ときに予測できない不合理な行動を起こすプレーヤーの方が、相手からより多くの譲歩を引き出せる」というものがある。

 ちなみにこの定石は、ボストン・コンサルティング・グループの創業者、ブルース・ヘンダーソンが指摘したもので、私が社会人になって最初に読まされた、今は絶版になっている戦略本に書いてあったことから、個人的にも印象に残っているものだ。まさかそれから何十年も経って「世界最大の実践例」にお目にかかるとは思わなかったが、今回のトランプ氏の一連のツイート攻撃は、まさにこの定石を基にした行動に見える。

 実際にそのようにツイートをしたからといって、アメリカ合衆国にも法律があるので、トランプ氏が主張するような行動を勝手に起こせるとは思えない。米国は三権が分立した民主主義国家であり、議会が新しい法案を議決したり、条約を新たに批准したりしない限り、たとえば勝手にメキシコからの国境税を課すことなどできないのだ。

 しかし、それをわかっていても、わかっていないふりをして、非合理的な暴君に見える発言をすることで、周囲を困惑させたり混乱させたりすることはできる。そうすることで、目先の利益を優先するグローバル企業たちに米国内にもっと投資を促すという、トランプ氏にとって本当は分が悪いゲームのイニシアティブを握ることができるのだ。

企業は暴言に怯えるのではなく、 「トランプのゲーム」なのだと心得よ

 そう考えると、フォードの場合は緊急避難として仕方なかったかもしれない。トヨタもオバマ政権下で大きなバッシングを受けた心の傷はまだ深い。その観点でトヨタの対応も理解はできるが、ただ今回の1兆円発表はタイミングが惜しかったかもしれない。

 同じ1兆円でもソフトバンクのように、トランプ氏に直接話せばもっと感謝されたかもしれないが、今回の発表のしかたはただ暴君の作戦に乗ってお金を差し出したような結果に見えてしまう。日本人としては少し悔しいと筆者は思う。

 今後もこういったことが頻繁に起きると思うが、もし日本人の企業経営者がそのような攻撃に遭遇した場合は、「これはトランプ氏との交渉のゲームなのだ」と捉える心持ちが最も必要ではないだろうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)」

 私は「ゲームの理論」については知らなかったが、面白い見方だと思う。トランプ氏は大統領に就任後どのようなゲームの理論を見せて来るのであろうか。日本政府も大企業もそれに怯えたり、振る舞わされないようにしてもらいたいものだ。

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