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2016年9月27日 (火)

バロックオペラ「ポッペアの戴冠」を観る

 東海バロックプロジェクトオペラ制作委員会主催のバロックオペラ「ポッペアの戴冠」が、9月24日午後と夜、名古屋芸術創造劇場で開催された。愛知トリエンナーレの一部としての公演だそうだ。私の所属する昭和男爵コーラスの常任指揮者である加藤佳代子先生が主演でポッペア役を務めた。

 このオペラは解説によると、1942年にイタリアのヴェネツィアのサンティ・ジョバンニ・エ・パオロ劇場で上演され成功を収めた作品だと言う。1942年と言えば日本では徳川家光の時代である。オペラが最初に上演されたのは1600年イタリアのフィレンツェだというから、ポッペアの戴冠は草創期のオペラである。

 それまでオペラは王侯貴族のものであったが、1637年にヴェネティアに史上初の有料公開オペラ劇場が開設された。ヴェネティアは共和国で市民は平等であった。それで権力への批判精神に満ちたこのようなオペラが作られたという。

 作曲クラウディオ・モンテヴェルディ、台本はジャン・フランチェスコ・ブゼネッロで全三幕である。今回は原語で字幕スーパー付きで上演された。

 ストーリーは実話にもとずくものだそうで、暴君としてつとに有名なローマの王ネロ(このオペラではネローネ)が、絶世の美女ポッペアを見染める。ところがポッペアは騎士長オットーネの妻であった。それでもどうしても手に入れたいネローネは、そんなことは構わない。

 一方、ポッペアにも下心があり、ネローネに取り入って、いずれは王妃になりたいと思い、ネローネの思いを受け入れる。

 ポッペアは王の師である哲学者セネカが邪魔で取り除こうとする。王はそれを承知してセネカを殺せと命ずる。

 一方王妃オッターヴィアは、ポッペアを殺させようとポッペアの夫の騎士長オットーネにポッペアを刺殺せよと頼む。その頃オットーネは王妃の侍女ドゥルッシアとよき仲になっていた。それでドゥルッシアに女性になるための服を貸してくれと頼む。

 いざポッペアを殺そうと言うときに、愛の神アモーレが現れポッペアを救う。オットーネは侍女の服を着ていたので、侍女ドゥルッシアが殺そうとしたものと思われてしまう。しかし、侍女は自分がやったと言い張る。そこへオットーネが来て自分がやったのだという。

 王ネローネは、最初拷問にかけて殺そうと思っていたが、考えを変えて二人を国外追放にする。また王妃とも離婚をし、国外に追放する。

 そしてオッペアは念願通り国王ネローネと結婚し王妃となる。最後は二人の喜びの二重唱で幕がしまる。

 このオペラは第一幕が長く1時間20分ぐらい、全体の半分ぐらいを占めていた。幕開きには序曲の後、愛の神アモーレのアリアから始まった。愛の神が登場するのは、このオペラの中に王とオッペア、オットーネとドゥルッシア、小姓と侍女の3組の恋愛関係が織りなすからであろう。この時代は色恋ものが人気があったようである。

 しかし、国王ネローネとオッペアの大不倫が成功裏に終わるという結末が、当時大人気を博したというのは、推察すると、権力者とそれに取り入って出世をするという現実の世界を風刺したものと捉えられたからかもしれない。単なる不倫物語としてでも、権力への批判としてでも、どちらにとっても観るものの判断に任されている。

 演奏はリコーダー2人、ヴァイオリン2人、テオルボ、チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ/リローネ、チェンバロ/オルガン、チェンバロの9名の演奏によるバロック小オーケストラであった。

 舞台の上に楽器が並び、その上と下の舞台を使って歌と軽い演技が行われた。私は7列目の真ん中の席で観たが、舞台の照明が暗く、顔がはっきりとは見えなかったし、また字幕が左上にあるのはよかったが、少し見づらかったから、後ろの席では見えなかったではないかと思った。

 字幕を見ながら舞台を観るのは、ストーリーの展開を追うにはよいが、演技に集中できない欠点があった。でも、イタリア語で歌うのだから仕方がない。出演者は原語の歌詞を覚えるのだから大変であったと思う。よく覚えられたものだと感心する。

 絶世の美女で悪女のポッペアを演じた加藤先生は、真っ赤なドレスを着て熱唱した。ふだんとは全く違った先生を観ることができた。珍しい、オペラ草創期のバロックオペラを鑑賞できて本当によかったと思う。

ポッペアの戴冠 チラシ<表>

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