凄い労作―参院選テレビ報道検証―⑧
6、選挙報道に望まれること――抜本的に考え直すべき番組編成
選挙のあと7月13日の毎日新聞は「参院選TV報道3割減」という見出しで、調査会社エム・データの調査結果を伝えた。NHKを含む在京地上波6局の選挙関連放送時間が、前回2013年の参院選の35時間57分から26時間1分に減少した、としている。
この調査は我々のモニター活動の実感と符合している。しかし、私たちは、何割かの増減というレベルではなく、もっと根本的にテレビにおける選挙報道のあり方を転換すべきであると考えている。当会はこれまで数多くの選挙報道モニター報告で繰り返しこのことを提起してきた。
2014年の総選挙報道モニター報告書では、次のように主張した。今回の参院選報道でも全くあてはまる提起と考えるので、少し長いがそのまま引用したい。
「……全体としては選挙報道の量と質は圧倒的に不足していたと言わざるを得ない。
各政党の主張をもっと時間をかけて伝えること、さらに政治家の「ことば」を伝えるだけでなく、選挙の争点とのかかわりで国内外の現実を取材し、視聴者の判断に資する材料を豊かに提供すること、さまざまな主張を持つ識者や、市民の声を広く丁寧に伝えること、などが求められる。
この課題を実現するためには、ニュース番組の中の選挙報道時間を拡大するとともに、関連の特集番組を多く編成する必要がある。しかし、選挙期間に入っても、テレビは膨大な量のバラエティ番組、紀行、グルメ番組などで埋め尽くされていた。
解散から投票日まではそれほど長い日数ではない。この時期を番組編成の特別な期間と考え、選挙報道を抜本的に拡充すべきである。……」
(「2014年総選挙・テレビ各局ニュース番組を検証する」2015年2月9日)
選挙報道の拡充については、たとえば次のような量的拡大が図られるべきである。
NHKは長時間の市民参加のスタジオ番組の実績がある。民放では「24時間テレビ」など、「テレソン」のノウハウがある。スタジオを開放した政党と有権者の長時間の対話、争点ごとの政党討論の開催、各政党の公約に関する政党別の対話集会、ローカル番組での選挙区の候補者の長時間の記者会見、等々、さまざまなアイディアが検討されるべきである。
こうした討論に応じない政党があれば、そのことによって企画を中断するのではなく、出席が拒否された事情を有権者に公開すればよいのである。
選挙関連番組は視聴率がとれない、というテレビ局の意識や、「公平中立・公正な報道を」という自民党のテレビ局への圧力(2014年11月)などの影響で、選挙報道がじりじり後退していく現状は憂慮すべきものであり、視聴者として容認することができない。
放送は、国民の共有財産である電波を占有することから公共的なメディアという性格をもっている。これはNHKだけでなく、民放にも当てはまる。
放送法は、法の目的を、「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資すること」(第1条3号)と規定した。そもそも放送には、「民主主義に資する」任務があることを明言しているのである。
選挙報道は、放送が民主主義の発展に貢献するもっとも重要な機会である。この精神からすれば、選挙報道を現状のままにとどめるべきではない。これが今回のモニター担当者の一致した見解である。
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