シン・ゴジラを観たが
朝日新聞に9月12に日、「『シン・ゴジラ』快進撃のわけ 幅広い観客を魅了」という記事が載った。それによると、「映画「シン・ゴジラ」の進撃が止まらない。東宝によると、封切り45日の興行収入は65・6億円。延べ450万人の観客を集め、平成ゴジラシリーズ以降の記録を更新した。なぜ幅広い観客を夢中にさせるのか。「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる庵野秀明総監督らが作ったコンセプトに秘密がありそうだ。」とあった。
当初は男性の観客が多かったが次第に女性や子供にまで広がって行ったという。
そんなに人気があるのなら観に行く行くに如かずと思い、16日に観に行った。そんなに人気があるのなら早く行かないと席がないだろうと、1時間以上前に映画館に行ったが、まだ空席ばかりで拍子抜けがした。4列目の真ん中の席を取った。
映画は字幕が多用され、登場人物の役職などが書いてあったが、直ぐに消えるので全部を読み取ることはできなかった。主役の長谷川博巳が演じる矢口蘭堂が内閣官房副長官であることは最後まで分からなかった。
ストーリーは単純で、ゴジラが突然東京湾に出現し、東京を目指し始めたので、内閣が巨大不明生物緊急対策本部を設置して、ゴジラをどう排除し都民を守るかということである。
私の感想は荒唐無稽のストーリーだということである。巨大なゴジラが突然現れるというのがそもそも不自然である。しかもそのゴジラの生長が非常に速く、2回目に出現した時には巨大化しているのだ。
荒唐無稽なのはまだある。その不死身振りである。内閣はゴジラを退治するのに自衛隊を総動員し、陸、海、空の精鋭部隊を動員して、最新兵器で攻撃するのだが、ゴジラはびくともしないのだ。生物なのにそんなことがあるだろうか。しかもゴジラは核廃棄物を食べたことで核反応をエネルギーにしているというのだ。
やむなく内閣は安保条約に基づいてアメリカの協力を仰ぐことになる。アメリカは核兵器で攻撃をするという。
矢口官房副長官は、アメリカなどが核攻撃をする前に、何とかゴジラを薬物で退治しようとする。そしてきわどいところでそれが成功する。
結局この映画は時の政権の危機管理について描き、それを巡る人の考え方の違いや動きを描いているのだ。しかし、自衛隊が前面に出、日米安保が発動される。そして自衛隊の決死の活躍でゴジラをやっつけるという、自衛隊賛美のスペクタクルと言ってよい。
ネットで見たら安倍総理や菅官房長官もいい映画だと言ったそうだ。さもありなんという映画である。
危機管理であるが、内閣と行政の動きだけが描かれて、市民の動きがほとんど描かれていない。巨大なゴジラが東京の住宅や高層ビルなどをなぎ倒して行くのだが、切実感が全く感じられない。もし本当なら東北大地震の津波や熊本大地震などの比ではない。日本中が大パニックになるはずである。その辺のことが一切無視されているのだ。
だいたい矢口たちが立川に避難するのに車で移動するというのもおかしな話である。道が完全に塞がれているのに車はありえない。そうかと思うと総理大臣や官房長官など内閣の中枢がヘリコプターで避難しどこかに消えてしまうのも不自然である。
東京都民360万人を短時間で避難させるというのも成功したことになっているが、実際ならできないであろう。
巨大災害についての危機管理を描くのであれば、例えば日本の原発がまた大災害で破壊されるというような想定で描いてほしかったと思う。こちらはゴジラのように荒唐無稽ではなく、いつ起こってもおかしくない現実性があるのだ。もしもう一度原発第事故があれば今度はどうしようもない打撃を受けることは間違いないのだ。
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