凄い労作―参院選テレビ報道の検証―⑥
4、選挙「情勢報道」の偏重 「18歳選挙権」関連報道の問題
テレビニュースをモニターする中で選挙報道には2つの分野があることが明らかになった。
一つは、選挙に関連する社会の動きや話題、政党、政治家の動向を伝える「選挙情勢報道」であり、もうひとつは、選挙の争点に関して有権者の判断の材料を提供する「選挙争点報道」というべきものである。
本報告書の立場では、選挙報道としては後者の「争点報道」が重要であり、選挙報道の中核でなければならないと考える。しかし、実際の報道は、選挙関連の話題、トピック紹介に多くの時間が充てられており、「争点報道」が後退しているという実態がある。
このことを象徴的に示すのが、「18歳選挙権」に関する報道の多さである。
各番組を見てみよう。
「ニュース7」 6月17日「5県78校で政治活動の事前届け出制」 6月19日「高校に期日前投票所」。
「ニュースウオッチ9」6月15日「海洋実習生の投票」 6月17日「懸念強める学校現場」
6月22日「政策を知る特別授業、模擬投票」6月23日「18歳の期日前投票」7月4日「俳優広瀬すずの期日前投票。中央大学のイベント。マンガ誌の特集」
「NEWS ZERO」6月27日「18歳、19歳の不在者投票のしくみ」 7月4日「うきは市長選挙の18歳の投票」 7月5日「18歳“選挙への不安”」
「報道ステーション」6月22日「選挙に望む18歳19歳の声」 7月1日「大学生のNPOが高校で授業。候補者が生徒と対話。街の青年たちの声」 7月8日「高校で模擬投票」
EWS23」7月6日「18歳歌手が迎える選挙、学校現場で“困惑”も」 7月8日「ティーン票の行方。各党の若者対策」
「みんなのニュース」6月19日「政治に関心を、様々な取り組み。お笑い芸人の授業。高校で模擬投票」6月30日 「イギリス国民投票 若者たちの投票率の低さ」
7月8日「若者向けネットサービス」
これらの報道が意味がない、と主張するものではない。18歳、19歳の若者に、政治に関心を持ってもらうための教育現場の真摯な取り組みが紹介されている。投票を呼びかけるタレントやNPOによる活動の報告も胸を打つものがあった。また選挙に関する青年たちの迷いや戸惑いなどの率直な声も伝えられている。
18歳選挙権が認められて初めての国政選挙であるため、このテーマでの放送が多くなるのはあり得ることだが、一方で「選挙争点報道」が貧弱という傾向も否定できない。18歳選挙権の問題だけでなく、選挙情勢や話題、トピックに焦点を当てた報道が他にもかなり多くなっている。
モニター担当者からの報告でも、選挙の「周縁」の動きの報道が多い現状に疑問の声が上がっている。このような選挙報道でよいかどうか、選挙争点報道とのバランスで検証が必要であり、視聴者の批判も必要である。
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