凄い労作―参院選テレビ報道の検証―②
1、 質量ともに貧弱な選挙報道
今回の参院選報道で、モニター担当者から一斉に上がったのは「なぜこんなに選挙報道が少ないのか」という声だった。
本報告末尾の付表1を見ていただきたい。6月22日の公示日から19日間、番組によっては選挙関連項目が無い放送日がかなりある。
NHK「ニュース7」は、公示日から18回の放送のうち、実に9回、関連報道が無い日だった。この期間、半分は選挙報道をしていないことになる。とくに投票日前の1週間で見ると、7月5日から8日までの4日間、選挙関連ニュースは見当たらない。
「ニュースウオッチ9」は投票日直前の7月7日、8日、選挙関連放送をしていない。
日本テレビ「NEWS ZERO」は13回のうち6回は関連放送が無かった。
フジテレビ「みんなのニュース」は、18回の放送中選挙報道があったのはわずか6回で、3分の1にとどまっている。
これらに比べ、この期間、「報道ステーション」は関連項目が無かったのは1回にとどまり、「NEWS23」も2回だけである。この二つの番組は7月に入ってからは選挙報道を休まず続けている。
ここからは、「みんなのニュース」「NEWS ZERO」は論外として、選挙終盤でNHKの2番組に関連報道のない日が続いたことは疑問であり、公共放送の任務から言って批判は免れない。
回数だけでなく、各回の時間量も問題であった。短い時間に9党の政策や主張を盛り込むことから、断片的な主張が羅列されるだけのケースが数多くみられた。
典型的な例は、7月3日の「ニュース7」で、各党党首の街頭演説の秒数と主張したテーマはつぎのようなものだった。
安倍首相「テロから内外の日本人の命を守るために万全を尽くす」(42秒)、民進党岡田代表「子供の6人に1人が貧困。政策が間違っているからこうなる」(30秒)、公明党山口代表「政権が安定しているから政治が進む。民進・共産に将来の政治を任せるわけにはいかない」(24秒)共産党志位委員長「自衛隊の合憲・違憲が問われているのではない。自衛隊を海外の戦争に派遣するのがいいかどうかだ」(22秒)、おおさか維新の会松井代表「大阪でやっている改革を全国に広げる」(20秒)、社民党吉田党首「安倍政治の暴走を止める選挙。改憲勢力に3分の2を与えない」(18秒)、生活の党小沢代表「安倍内閣成立以来、国民の実質所得は減少。これを変えないといけない」(16秒)、日本のこころ中山代表「所得が増える経済政策を。公共事業を全国で広げる」(15秒)、新党改革荒井代表「何でも反対の野党と違う。威張る与党に歯止めをかける新党改革」(10秒)
「みんなのニュース」6月25日は、公示後最初の週末の各党党首の街頭演説を並べている。
時間量は、自民安倍23秒、公明山口20秒、民進岡田20秒、共産志位20秒、社民吉田14
秒、生活小沢19秒、改革荒井15秒、維新松井15秒、こころ中山17秒、となっていた。
このように、ひとり10秒とか15秒とかの主張を並べる方法は、選挙戦の雰囲気を象徴的に伝える演出としてはないわけではない。
しかし、この種の主張の羅列はこの二つの放送だけではない。選挙報道ではいわば定式化されている。はたしてこれで有権者の判断に役立つ選挙報道といえるだろうか。
デイリーニュースでは時間が十分とれない、という局側の釈明も予想される。たしかにデイリーニュースの宿命として、その日に発生した事件や、災害をまず伝えなければならない、という事情がある。しかし、さして重要と思われないような項目を選挙報道よりも長く伝えるという例は少なくないのである。
選挙報道の拡充については最終章で提起したい。
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