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2016年6月 9日 (木)

サルトルの超難解な言葉

 6月6日の朝日新聞「折折のことば」(鷲田清一)にジャン・ポール・サルトルの次のような言葉が紹介されていた。

  「われわれの幸福の能力とは、幼少期がわれわれに拒んだものとそれがわれわれに譲りあたえたものとの間の或る種の平衡に左右される」

  これを読んで私は何を意味するのか全く理解できなかった。単語としては難しいものはひとつもない。しかし、それが組み合わされてできるフレーズが分からないのだ。

  まず分からないのが、「幸福の能力」である。

  「能力」は広辞苑で調べると、

 ①物事をなし得る力。はたらき。

 ②〔心〕ア。認識・感情・欲求・行動など、精神現象の諸形態を担う実体。

     イ。どれだけの精神機能が働きうるかという可能性。

 ③〔法〕ある事について必要とされ、また適当とされている資格。「権利ー」「―者」

  3つの定義のうちできるどれが当てはまるのであろうか。多分①だと思われるが、「幸福が主体として何かを為すことが力」、もしくは「幸福のはたらき」ということになろう。

  A 次に分からないのが、「幼少期がわれわれに拒んだもの」である。一体幼少期がわれわれに何を拒んだというのであろうか。

  B.また、それに続く「それがわれわれに譲りあたえたもの」も意味不明である。それという指示語は幼少期を指す。幼少期がわれわれに譲りあたえたものは何なのだ。そもそも幼少期が持っていて譲りあたえることができるものとは何か。

  C.さらに次の句も分からない。「・・・との間の或る種の平衡に左右される」である。AとBとの間に或る種の平衡とは何のことだろう。「或る種」も何を意味するのか不明である。「平衡」は釣り合いであるが或る種の釣り合いと言い換えても分からない。どんな平衡があるのか。

  サルトルと言えば著名な哲学者である。そのような人が言った言葉が私のような凡庸な人間には分からないのが当然ではある。しかし、私に言わせれば、言葉は誰にでも(少なくとも中学校以上の)分かる使い方が望ましい。まるで禅問答のようなものはその道の専門家の間でのみ使われるべきであろう。

  このサルトルのことばについての鷲田氏の解説は次のようである。

  「何から何まで奪い取られても、すべての望みをかなえられても、われわれは破滅する」と続く。個人は誕生してすぐ歴史にどっぷり浸され、その外に立つことも上空に浮き上がることもできない。たまたま生まれ落ちた歴史の渦中で生を始めるほかにはない。

 戦後フランスを代表する思想家の評論「メルローポンチ(平井啓之訳)から

 「たまたま生まれ落ちた歴史の渦中で生を始める」というのは理解できる。我々が生を受けたのは偶然であり、そういう定めであったのだ。それはどうしようもない。王に生まれるのも乞食に生まれるのもそれは運命なのだ。そして生まれた瞬間からその人の歴史が始まる。

 しかし、ザルトルがいう何から何まで奪い取られても、すべての望みをかなえられても、われわれは破滅する」というのは理解できない。ALL OR NOTHINGのどちらでも我々は破滅するというのだ。確かに生の終わり、つまり死は避けられない。死を破滅といえばその通りである。世界一の大富豪となってもいずれ生の終わりが来る。

 科学が発達してクローン人間とか再生が可能になるかもしれない。それでも永遠の生はあり得ないのだ。

 先の句でサルトルが言いたかったことはいったい何なのであろうか?

 

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