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2016年6月19日 (日)

増谷文雄「仏教入門」―㉚―

 2.偏らぬ態度(中道)

  無上の安穏、内心の寂静を得るために煩悩の焔を消す。それが涅槃であり、それが仏教の究極である。しかし、煩悩を断滅するということは、決して容易な”わざ”ではない。あたかも、かの蔓草が、切ったあとから直ぐまた新しい芽をふいてくるように、煩悩の焔は、やっと消したと思うすぐあとから、また燃え上って来る。消せども消せども、また燃え上って来るのである。

  ある静かな夜半のことであった。釈尊がふと目を覚ましておると、近くの僧房からいと物悲しげな声が聞こえてくる。そっと行ってみると、一人の比丘が、師の教えを口ずさみながら、越し方を思い悔いて嘆いているのであった。たつとい師のおしえにも拘わらず、どうしても煩悩の焔を消すことが出来ない。やっと消えたかと思っていると、またあとから燃え上ってくる。これでは内心の平和はいつになったら得られることであろうか。彼はそういって嘆き悲しんでいるのであった。

 「おまえは昔、家にあったころには、どんな業が得意てあったか。」

  釈尊は比丘にむかって、そんなことを質ねた。

 「何という程のこともありませぬが、いささか琴を弾ずることを心得ておりました。」

 「それでは存じておるであろう。琴の弦がゆるいとどうであるか。」

 「ゆるすぎては弾けませぬ。」

 「弦がしまりすぎているとどうであるか。」

 「やはり弾けませぬ。」

 「では、どうすればよいか。」

 「弦にしたがって緩緊よろしき調律がなければ、琴を弾くわけには参りませぬ。」

 釈尊はただ「うむ」と言ったまま、しばらく黙って比丘の様子を見詰めておった。比丘は、師の慈眼の下に、じっと首垂れているばかりであtった。

 「琴を弾くにすら、緩急よろしきを得なければ、微妙な楽を生ずることはできないどあろう。修行の道もまた同じことである。」

  比丘はやっと面をあげて、師の慈顔を仰いだ。

 「放逸はいけない。だが、厳格にすぎるのもよくない。欲貪にふけるのはいけない。だが、自らを苦しめるのも、決してすぐれた態度ではない。つねに心を調適にして、偏らぬ態度を心がけるのでなければ、涅槃への道は実現しない。私は始終そのことをおまえ達に教えている筈だ。」

 釈尊は、いつもの物静かな態度で教訓を与えながら、じっと眼をとじて、なにか思い出を追うような様子であった。比丘の面持は、しだいに晴れて行くようであった。

 

 

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