「SPOTLIGHT世紀のスクープ」を観た
新聞の映画評で読んで観たいと思っていた「SPOTLIGHT世紀のスクープ」をやっと観に行ってきた。日曜日なので混むかと思ったが意外にもそうではなかった。もう長い間上映しているからであろう。
この映画は、ボストンにある地方新聞の僅か5名のスタッフが地道な取材を重ねて大スクープの記事を作り上げるまでを描いたもので、実話を元にしている。
この新聞社の「SPOTLIGHT」という特別な事件などに焦点を当てて、連続して真相を追及していく部署は、男性4人に女性が1人の小さなものである。
この部署は、カソリック教会の神父が10歳~13歳ぐらいの少年少女をターゲットに性的虐待をしたことを取上げようとするのだ。当初は13人の神父が関わったということを掴むのだが、その犠牲になった子どもで生きているのは1人しかいない。成人になっているその人に取材をすると自殺をしたり、精神がおかしくなったりしている者が多いことが分かった。
記者たちは、被害を扱った弁護士に聞こうとするのだが、彼らは教えてくれない。被害者を助ける活動をしているところなどにも取材をし、どんな神父がどのように性的虐待をしたのかを知ろうといろいろしらべようとするのだが、その壁は厚い。
虐待は1975年ごろに起きていて、それを被害者は新聞社に持ち込んだが、小さな記事にしかならなかったという。
教会は性的虐待をした神父を転勤させるだけで、権力でもって蓋をしてしまうのだ。弁護士も教会の巨大な力に屈して犠牲者に僅かな慰謝料で手を打たせるという酷いやり方だ。
新しく新聞社の局長になったロビンは、個々の神父の罪行を暴くのではなく、教会のシステムの悪行を暴かなければ、いつまでも性的虐待をなくすことは出来ないという。
5人の記者は様々な圧力と闘いながら取材を重ねる。そして弁護士から90名いるということを聞きだし、87名の名前と現在の様子を調べ上げる。
そしてある年の年末にスクープ記事として発表することが出来た。 その記事が出る2日前にも2件の性的虐待があったと報告される。新聞が発売されると嫌がらせや抗議の電話やデモなどがあると恐れていたが、電話は被害者からのものが多く、デモはなかった。それをきっかけに性的虐待をした神父は290名にものぼることがわかり、しかも、ボストンだけでなく全米に広がっていた。
聖職者として神の教えを説く神父が、あろうことか子どもを性的に虐待していたというのは驚愕である。しかし、こうしたことは今に始まったことではなく、ローマの時代から続いていたことに違いない。ただ巧みに隠されて来たのだ。
ボストン地区には1500名もの神父がいるということで驚いた。また隠ぺいをした枢機卿は何とローマ本山の高い位に出世したというのだから呆れてものが言えない。
第88回アカデミー賞の作品賞と脚本賞を受賞した作品であるが、社会派の映画で最初のうち登場人物やストーリーを追うのに大変苦労をした。難解な映画である。予め登場人物の役割の概略を頭に入れておいて見る方がよいと思う。
日本では安倍政権によってマスコミ対策が取られ、報道の自由度が76位に下がり、真実を追求する報道がなくなってきている。
カソリックという巨大な宗教組織の中で、神父や司祭という聖職者が性的虐待を重ねていたという驚きの事実。それが教会の中で隠ぺいされ誰も知ることがなかったのを、地道な取材を重ねて白日の下に晒した記者たちがいたということは素晴らしいことである。カソリックはローマに本山をもつ世界にまたがる巨大な宗教組織である。その権力は強大なものである。それに立ち向かって行ったという凄い記者がいたということに感動をした。
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強大なカソリックという組織を相手に果敢に挑んだ実話です。新聞の力は強いことが分かります。権力にへつらうのではなく正義のために闘ってほしいと思いました。
投稿: らら | 2016年5月27日 (金) 15時20分
私はこの映画の存在を知りませんでした。先日の「殿、利息でござる」もブログで初めて知りました。いずれも話題の映画とかで、世事に疎くなったことをいたく反省しました。それはともかく今回のブログを読んで私は昭和34年(1959年)3月に起きたた、日本人スチュワーデス殺人事件を思い出しました。カトリック修道会サレジオ会のベルギー人神父ベルメルシュが、交際中のスチュワーデス武川知子さんを殺害した容疑者として浮上した。しかし、ベルメルシュは、急遽帰国し、事件の真相は闇に葬られてしまった。カソリックの厚い壁に捜査が阻まれたことで当時、大変話題になった。巨大な宗教集団は今も昔も捜査の手が及びにくい伏魔殿であるように思えるが、、。
投稿: toshi | 2016年5月27日 (金) 09時48分