殿、利息でござるを見て
公開されたばかりの映画「殿、利息でござる」を見た。最初チラシを貰ってこの題名を見たとき、変な題だなと思った。殿に利息を差し上げるのかと思ったら、逆で殿に金を貸し付けて利息を貰おうという話であった。
それだけなら別段見ようという気にはならなかったが、それが実話であったというのを知って興味が湧いた。しかも、村人たちが力を合わせて何年もかかって金を作り、殿に貸し付けることができたというのだ。
この話は実話だが、江戸時代を通して人に語ることをしてはいけないとされてきた。しかし、この実話を後世に残そうとお寺の住職が記録にとどめていたのだ。
「武士の家計簿」で知られる歴史家・磯田道史による評伝「無私の日本人」に収録されている一編、「穀田屋十三郎」を映画化したものである。
物語は江戸中期、財政難のため民衆に重税を課す仙台藩では、破産や夜逃げが相次いでいた。寂れ果てた宿場町の吉岡宿でも年貢の取り立てや馬を出して荷物を運ぶ転馬という労役で人々が困窮していた。
長男なのに養子に出された造り酒屋を営む穀田屋十三郎は、吉岡宿の行く末を案じていた。そんなある日、十三郎は、町一番の知恵者である茶師・菅原屋篤平治から、藩に1000両という大金を貸し付けて藩から毎年1割の利息をもらい、それによって労役の負担を軽減するという、宿場復興のための秘策を打ち明けられる。計画が明るみになれば打ち首は免れないが、それでも十三郎と仲間たちは、町を守るために私財を投げ打ち、計画を進める。
私は最初、村民がみな応分の金を出すのかと思っていたが、そうではなかった。金を出せそうな人を説得し1人500貫という金を出してもらおうというのである。説得が難しいと思われていた肝いり、大肝いりなどが賛成し、家財道具を売ってまで金を出すのだ。村の資産家ともいえる連中が私財を投げ打って吉岡宿の苦境を救おうとするのである。
その金集めは何年もかかる。8年近くたって金ができ、藩に上申するが、最初は却下される。しかし、それがきっかけでドケチとか金亡者とか言われていた十三郎の実家が、実はそうではなく先代がコツコツと金を貯め吉岡宿の苦しみを救おうとしていたことが分かるのだ。
自分のことは横に置いても他の人のことを考え、しかもその行為を決して誇らないという、吉岡宿の資産家の人たちの行動に観ていて涙が出た。私の近くの観客も感動していることが伝わってきた。安倍首相や麻生大臣などにも観てもらいたい映画である。そして私利私欲を離れて国民の苦しみを軽減する政治をしてもらいたいものである。仙台藩は金を借りて利息を払ったが、苦役には配慮しなかったようである。為政者というのはそういうものだ。
時代劇では初主演となる阿部サダヲほか、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平ら豪華キャストが共演。物語の舞台となる仙台出身のフィギュアスケート選手・羽生結弦が、仙台藩の第7代藩主・伊達重村役で映画に初出演を果たした。「白ゆき姫殺人事件」「予告犯」の中村義洋監督がメガホンをとり、時代劇に本格初挑戦である。
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