NHKクローズアップ現代「密着ルポ 私たちと憲法」を見て
籾井体制によって権力寄りに大きく変わりつつあると言われるNHK。クローズアップ現代も放送時間が後退し、名物キャスターの国谷裕子さんが降板させられた。それで4月以後は新しくなった「クローズアップ現代+」は一度も見ていなかった。
5月2日の「クローズアップ現代+」は、「密着ルポ 私たちと憲法」というテーマで憲法が取り上げられることを知り、録画して見ることにした。
番組は、改憲派の動きから報じられた。その後護憲派について報じられ、改憲、護憲・・・・と目まぐるしく交互に報じられた。タイトルの通り、いずれも改憲派、護憲派に出かけて取材したものであった。
改憲派は戦後早くから始まったことや、その中で運動が統合されたことなどを取り上げていた。改憲を進める安倍首相を応援して実現させたと言っていた。
この番組でよかったと思うのは改憲派の動きを伝えたことであった。改憲派の中心である桜井氏が大写しになり、「大日本会議」の様子や彼らが進めている1000万署名運動などの他に、日本青年会議所や財界や全国8万社を擁する神社本庁などが改憲運動の中心になっていることが分かった。また国家神道をめざそうというのであろうか。
日本会議には多くの国会議員も参加と言っていたが、はっきりと280名ものと数字をあげてほしかった。
改憲派は、天皇を中心とした日本国の歴史を大事にして、公を個の上に置き、家族を大事にし、自衛隊を軍隊にするなどを憲法に明記するべきだと主張していた。彼らが大日本国憲法にノスタルジーを感じ、「美しい日本を再建する」と言っている。集会で「天皇陛下万歳」を三唱していた。神社本庁の宮司や日本会議のメンバーが「国柄」とか「国のかたち」と言っていたが、これは戦前に言われた「国体」のことだ。天皇中心で富国強兵の明治時代に戻ろうというのであろう。
それに対して、護憲派は、9条の会が2000万人の署名を集めていることや、商社9条の会、障がい者9条の会、損保9条の会などさまざまな9条の会が全国に7000も作られていることを取り上げていた。
護憲派も歴史を知ることが大事だと言っていたが、こちらは戦争の時の悲惨さについてであった。
戦争中は障がい者は「米食い虫」などと蔑視されたと言い、障がい者は状況が悪くなると真っ先に犠牲になるからカナリアだと言っていた。
損保関係の人は戦前出征する兵士に生命保険を勧めたが、戦死者が多すぎてパンクしたと話していた。
クローズアップ現代+で問題だったのは、安保関連法を巡って、SEALDsや高校生のティーンズやママさんグループなど幅広い運動に広がったことを取り上げなかったことと、憲法9条以外に「立憲主義」がクローズアップされたことが無視されていたことである。
日本は自民党・公明党に支えられた安倍政権によって、戦争が出来る国になっただけでなく、立憲主義が踏みにじられたのである。まずは立憲主義を取り戻すことが喫緊の課題である。
番組も指摘していたように、改憲、護憲の言い分をよく知り、憲法について関心を持って考えることが大事である。
※クローズアップ現代を見るには、
http://blog.livedoor.jp/gataroclone/archives/47475570.html
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押し付け憲法論は詭弁ですね。大事なことは、今、憲法を変えなければならない状況があるかだと思います。中国、北朝鮮脅威がそれにあたるというのは脅しだと思います。
投稿: らら | 2016年5月 9日 (月) 09時58分
憲法9条はGHQの主導によってできたという、所謂、押し付け論が従来の主流であった。私も9条の是非は別としてマッカサーによって強力に押しつけられた条文であると思っていた。2月に報道ステーションが時の総理大臣幣原喜重郎が自ら提案したという衝撃の事実をエビデンス付きで報道し、大きな反響を呼んだ。憲法記念日の5月3日にもさらにその事実を掘り下げて報道していた。マッカーサーも退任後その事実を認めているのだ。現憲法の骨組みはGHQによって押しつけられたものである。従って自主憲法を制定すべきであるという自主憲法制定派は完全にその論拠を失うことになる。単純化しすぎであろうか?
投稿: toshi | 2016年5月 9日 (月) 09時06分