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2016年1月15日 (金)

山田厚史の「世界かわら版」から―③―

 失われた20年の中でリストラによって、産業界は設備の過剰・在庫の過剰・人員の過剰という3つの過剰をほぼ解消したという。それにより日本の産業は350兆円という貯金(内部留保)は増えたが、活力を失ったというのだ。

  次の指摘は大事だと思う。すなわち「日本の企業が強かったのは経営者の能力が国際水準を超えていたからではないだろう。現場が強かった。まじめにモノづくりに励み、創意工夫が現場から起こり、工場と研究所が一体となってワイワイ・ガヤガヤやってアイディアを生み出した。」ということである。

  アメリカなどでは、経営者はとてつもない高給をもらっている。日本も経営者は高所得である。つまり経営者の能力が企業の業績を左右するという考えだ。

  しかし山田の指摘のように、日本の企業を支えてきたのは現場であったのだ。その現場が派遣社員や契約社員のような非正規社員にとって代わったのだ。

  「リストラは現場から活力を削ぎ、企業のイノベーションを鈍らせた。」という指摘は正しいと思う。

  「気がつけば商品も技術も外国勢に後れを取った。」その通り、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、パイオニア・・・日本のお家芸であった家電は中国、韓国に追い越されてしまった。彼らは日本でリストラされた人材を活用したといわれる。

  豊富に貯めこんだ資金でM&Aをやり外国企業を買収するがそれが日本国内の経済を強くすることになっていないことがはっきりしたと言っている。

  山田は書く。「 経産省内閣とも言われる安倍政権は、財界や強い産業の要望に沿った政策を採用する。法人税減税、労働者の非正規化、TPP推進、原発再稼働、円安の推進。経産省が推進する大企業寄りの政策がてんこ盛りだ。」

  一方で働く者の労働条件は過酷化し、ブラック企業がはびこり、低賃金に抑え込まれている。またTPPにより日本の農家はこれから先の不安を抱え困惑している。だから山田の次の指摘は的を得ている。

  「先にも述べたように、日本を代表する企業が儲ければ、国民経済が豊かになる、という構図は20世紀で終わった。競争と市場原理だけでは貧富の差が拡大するのは世界で実証済みだ。成長がすべての人を底上げする経済ではない。」

  高度成長の時期のような1億総中流化はもうやって来ないのだ。バブルがはじけて以後の失われた20年とその後を見れば分かることだ。

  米国でも日本でも新自由主義経済政策で競争と市場原理によるあくなき利益追求が行われたが、それがリーマンショックを起こしたのであった。それに懲りず今もそのやり方が続いている。トリクルダウンは幻で貧富の差は拡大の一途である。

 

 

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コメント

失われた20年の間に従業員の平均所得は(含む非正規従業員)一貫して下がり続けているのに経営者層の所得は逆に上がり続けている。企業の労働コストの考え方のグローバル化である。欧米の企業では
executiveといわれる経営者層の働きは猛烈でその責任も重い。一方日本では今は少しは変わっているかもしれないが、中間管理者(課長クラス)が最も
仕事が忙しく、上へ上がるほど楽になるのが一般である。私も現役時代にはその思いが強かった。ルサンチマンであることを承知で言えば大企業の経営者層の報酬は高すぎる。何しろ貰った本人が驚いているのだから。現場の労働者及び中間層のレベルの高さが日本企業の強みであった。今の状況が続けば日本の物作りの弱体化は止まらないと思う。

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