前進座の芝居を観た
7月頃だったと思うが妻が前進座のチラシを見て観に行きたいと言ったので前売り券を買った。27日の午後中日劇場に行った。
指定席なのでゆっくりと行けばよいと思ったが、妻が早く行きたいと言ったので早めに行ったが、エレベーターには長い列ができていたので驚いた。座席は中央の11列目でとてもよい位置であった。
演目は二つあり、第1部は狂言をもとにした狂言舞踊の「棒しばり」であった。解説によると、この狂言は岡村柿紅が同名の能狂言をもとに、六代目尾上菊五郎と七代目坂東三津五郎にあてはめて書き下ろした舞踊劇で、初演は大正5年だそうだ。
大きな松が描かれた能狂言舞台でセリフや所作も狂言と変わりはなかった。所用で出かける大名は、召使の太郎冠者と次郎冠者が底抜けの酒好きなので、大事な酒蔵の酒が心配でならない。
そこで一計を案じた大名は、次郎冠者が棒の手の練習をしているのを利用してそれを演じさせ、その隙に両手を棒に括り付けてしまう。また太郎冠者の両手も隙を見て後ろ手に縛りつけてしまい、これで安心と用に出かける。
二人は酒を飲みたいので酒蔵にやってきて中に入り、酒を飲む。手を縛られたままで酒を飲む仕草が笑いを誘う。酒を飲んで上機嫌になった二人は互いに踊りを見せあうことになる。両手を縛られたままの踊りが面白い。
相当飲んで踊っているところへ大名が帰ってきて見つかってしまう。大名が罰を与えようとするがそれを逃げる2人。三者が入り乱れての動きが面白い。約45分の楽しい舞踊劇であった。
次郎冠者は嵐芳三郎、太郎冠者は中嶋宏太郎、大名は益城宏が好演した。
25分間の休憩の後第2部は「芝浜の革財布」であった。これは三遊亭円朝の有名な人情噺「芝浜」を舞台化したものである。
貧乏暮しのうえに後先も考えない呑兵衛の魚屋熊五郎は、どうにもならなくなって、女房のお春に、「これからは性根を入れ替えて一生懸命働き酒も止める」という証文を書く。
次の朝、時間を間違えてお春が早く起こしたので、暗いうちに芝浜に行く。そこで足に引っ掛かったのが革の財布であった。中には小判がいっぱい入っていた。震える足で家に帰るとお春にいきさつを話し、財布を改めると48両も入っていた。その財布と小判を女房に預ける。
お春の勧めで風呂に行った熊五郎は長屋の仲間に日ごろの義理を果たそうと考える。仲間を招いて飲めや歌えの大騒ぎをする。
それを見て女房のお春は一計を案じる。翌朝泥酔から覚めた熊五郎に請求書を見せて、金がないのにどうするつもりだと言う。熊五郎は昨日拾った金があるだろうと言う。お春はそんなものは何もない、夢を見ているのだろうと言い、夢の話しにしてしまう。
証文を取り出したお春に真面目に働くことを誓わせられる。そして3年経って大晦日の場面である。」熊五郎は立派な魚屋になって若い衆を2人雇うほどになっていた。
お春は話があると言ってこれまで革財布はないとウソをついてきたことを話し、財布と小判を見せる。そして用意してあったご馳走と酒を持ってくる。
落語では酒を勧められた熊五郎は杯を口に運ぶが、「よそう。また夢になるといけねえ」というオチで終わる。この芝居では大きな茶碗でお春の勧めるままに飲んで幕となる。
人情噺をもとにうまく芝居に組み立ててあった。熊五郎は藤川矢之輔が、お春は山崎辰三郎が巧みに演じた。
私と前進座との縁は、高校時代にさかのぼる。前進座は陸の孤島と言われた南紀新宮にも毎年来ていた。名立役の河原崎長十郎や名女形の河原崎国太郎、中村翫衛門、瀬川菊之丞などそうそうたる役者であった。当時演劇部にいたので友人と手伝いを頼まれて楽屋などに入ることができ、芝居を観ることができたのはラッキーであった。私が歌舞伎を知ったのは前進座を通じてであった。
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