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2015年5月12日 (火)

改憲を止める国民的共同の提案ー渡辺冶一一橋大学名誉教授ー⑤

安保闘争では今のような市民運動はなかった

 3つめに、なんといっても60年安保の時には市民運動はほとんどなかったということです。初めて市民運動的な組織が登場したのが安保闘争ですが、それが今や数千の市民運動組織があり、おそらく100万人以上の人々が市民運動で活躍している。そうした市民運動の土台があって九条の会が成り立つのです。政党と労働組合の運動と、市民運動が共同できたから九条の会はできている。

 現在はこの市民運動の隊列が非常に大きいのと、それが従来の市民運動と違って、反政党主義、反政治主義ではないということも大きなポイントです。むしろ総評に代わって、社民党や共産党が一緒になれないか、と努力している。そうした市民運動があるのです。

九条の会型の運動で大きな国民的共同を

 そして4つめは、なんといっても女性の力が大きくなっています。これは圧倒的な結集で、組織的にも個人でみても、女性達の力が国民的共同の中で相当大きな力を占めています。九条の会のおよそ6割は女性です。60年安保が、労働組合の運動参加者も含めて男性中心のたたかいだったとすれば、今回は女性達が男性と一緒に大きな力を発揮するたたかいだと言えます。

 この4つの新たな社会的条件を本当に生かすことができれば、かつてないような国民的共同ができると思うのです。

 九条の会の役割は、社民党と共産党が同じ護憲でありながら共闘が成立しないという中で、個人の呼びかけ人、個人の参加という形で共同の輪をつくろうとしたところにあると思います。だから九条の会には、日本共産党委員長の志位和夫氏と当事社民党委員長だった福島みずほ氏が入っている。そうした個人の参加で共同をつくってきました。それが新たな共同の形になったと思うんですね。

 加えて、第2に、九条の会が力を入れたのは、保守層との連携です。たとえば、加茂市長の小池さんとか、保守の人々との大きな連携をつくり出してきたということです。

 第3に、九条の会は地域を根城に結集していることです。7,500ある九条の会のうち6割以上が地域の会です。職域の会でも、地域の職域の会なのです。そういう意味でいうと、地域を根城にした運動です。これがやはり60年安保闘争にはなかったような大きな広がりを持っている。

 そういう点では、九条の会型の運動をどうやって大きな国民的共同にしていくのかということが非常に重要だと思います。

「平和と憲法9条は空気ではない」

運動がなければ簡単に壊されるもの

――脱原発運動は若い人を結集していますが、そのことと国民的共同を作っていく際の若い人たちの結集をどう考えたらいいでしょうか?

 先ほど言った新たな社会条件という点からいくと、脱原発運動は、九条の会などと並び、また違った意味で今まで運動に参加しなかったような層が結構たくさん参加していますよね。

 九条の会は中高年主体の運動という特徴がありますが、脱原発運動の場合はむしろ若年層や子どもを抱えた父親や母親が結構参加しています。

 それはなぜかを考える必要があります。おそらく、若い人たちが立ちあがった背景には、自分達が立ち上がらなければ事態は変わらないという危機感があったと思われます。

 それに対して、九条の会になぜ若者が入ってこないのかといえば、若者達は、自分達が立ち上がらなければ戦争するようなとんでもない国になってしまうと思ってないからだと推測されます。別に自分達が立ち上がらなくたって、この国は戦争する国になんかならないという安心感があると思うんですね。

 それに比べると、原発問題は俺たちがやらなかったら大変だという焦りがあったので、皆が立ち上がっている。だから、本当に立ち上がらなきゃヤバいぞと思った時には、言われなくても立ち上がるんですよね。私たちはくり返し「やばいぞ」ということは言わなければいけないんだけど。

 そういう意味では、九条の会に若い人があまり来ないということと、脱原発運動には来てるということは矛盾しているわけではありません。今後、九条の会の運動がもっと大きな共同をつくっていくには、平和は空気のようにあるものではないんだということ、それは今までのいろいろな運動の中でようやく守ってきたもので、運動次第で本当に簡単に壊れるものなんだということをきちっと言わないといけない。だから僕は必ず「平和と憲法9条は空気ではない」と言っています。

 9条が空気ではない証拠に、数十年間も一度も侵略しなかったとか一度も人を殺さない軍隊があるとかいうところは、他の国ではどこにもない。そんな日本をつくってきたのは決して空気だからではなく、私達の運動の力だ、そういう意味では、それを次の世代に受け継ぐことに失敗すれば、壊す時は簡単だよという風に言わなければいけないと思っているんです。

 さして説明をしなくても、原発の場合には皆立ち上がった。これは大変だと。そのエネルギーはある。でも、じゃあどうやったらなくせるの? ということになった時には、原発の場合にはいろんな政策的な問題を考えなければいけない。脱原発運動のこれからは、その点では、ものすごく大変ですね。その展望のなさの表れが、「細川さんになればできるんじゃないか」ということになってしまった原因の一つです。ある意味、原発のない社会をどうつくるのか、という対抗構想の欠如が、細川・小泉依存という形で表れたんですよね。

 大変だけれども、私たちは、改憲を阻んできた九条の会の運動、脱原発運動、そして特定秘密保護法反対・廃止の運動、都知事選の運動などから教訓を学びながら、保守層との共同、地域を根城にした運動、福祉と平和型の対抗構想、対案を掲げた運動、などの原則を保持しつつ、改憲阻止の国民的共同づくりに向かって前進する必要がある、これが今日の結論です。

※元の記事のアドレス:

http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20150503-00045368/

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コメント

 地方の草の根の集会が各地で開かれることが大事ですね。
 それからあなたのアドレスに送りましたが戻ってきました。

ありがとう。渡辺治先生の話、2回じっくりと聞かせてもらいました。
安倍政権下で日本は危機的な状況になっていますが、希望の持てるお話でした。
もう一つ、素晴らしいニュースがあります。6月13日に半田市で「戦争は絶対にダメ 知多半島市民の集い」が持たれます。
思想信条をこえた、幅広い人々の呼びかけで行われます。こういう集会が全国で積み重なって、戦争を阻止していけるものと期待しています。

プーチンは軍国主義反対と言いながら、巨大な戦力を誇示しています。愚かな指導者は戦争に走る、賢い指導者は平和を希求するというのが私の見方です。残念ながら愚かな指導者が多くて困ります。

今日の中日新聞の朝刊一面には安保法制全条文与党合意の見出しが掲載されていた。この法制が可決されると政権与党は憲法九条を改定せずにかねてからの懸案を達成することになる。憲法九条は守られたが実態は全く変わってしまった。形骸化極まれりとはこのことをいうのであろう。しかし、ロシア、中国、北朝鮮の軍事パレードをニュースで見せつけられととても怖い。平和憲法で真に日本の平和と繁栄が守られるかと思う国民が多いのも事実である。

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