改憲を止める国民的共同の提案ー渡辺冶一一橋大学名誉教授ー③
逆に、国民的共同にプラスになる、大きな違いもあります。60年安保と決定的に違うのは、当時は高度成長がすでに始まっていて、経済成長のただ中だったのですが、今はそうではないという点です。新自由主義改革による矛盾が顕在化し、この領域でも国民経済の再建を求め、新自由主義改革に反対する声が強くなっています。平和の問題と構造改革の問題、平和と暮らしの問題両方で国民的共同をつくる状況が生まれているのです。
自民党政治の中心にいた古賀誠氏が96条改憲反対
それでは、安保闘争の時のような運動が再現できないかというと、私は、国民的共同づくりのための新たな条件が生まれていると思います。安保の時にはなかったような社会的条件があって、それを本当に生かすことができれば、私達は安保の時を上回るような国民的共同をつくることができると思います。それは何かというと、私は4つあると思います。
1つは、今は安保の時以上に、保守層の離反が起きている点です。安保も自衛隊も認めるという保守の人々の中で、安保や自衛隊を認めて日米同盟も結構だ、しかし改憲をやって自衛隊がアメリカ軍と一緒に中国を攻めたりアジアに侵略するのは絶対にやってはいけないという人達が生まれ、今いろいろな形で声を上げているということです。
一番典型的なのは古賀誠さんです。自民党政治の中心にいた人が96条改憲に反対するということで赤旗の日曜版に登場しました。また今度は毎日新聞に登場して、「安倍さんの靖国神社参拝はおかしい。アジアの人々に傷をつけるような参拝は行うべきではない」と言っているんですね。
彼は、2002年から10年あまりにわたって日本遺族会の会長でした。靖国派の中心の人で、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の会長も務めていた。そんな古賀氏が、いま、安倍首相が行くのはよくないと言っている。彼は父親がアジア太平洋戦争中、レイテ島で死んで、その遺骨収拾のためにアジアに行っていました。彼は、そうした経験から、日本が大東亜戦争を繰り返してはいけないと言う。そのポイントはアジアの平和だと言う、その問題から彼は発言していると思うんですよね。
イラク戦争で自衛隊派遣を指揮した柳澤協二氏も
それから、九条の会の全国討論集会が昨年11月16日に開催されたのですが、そこに小泉政権から安倍政権、福田政権、麻生政権という4代に渡って内閣官房副長官補をやっていた柳澤協二さんが登場しました。彼は、イラク戦争の時に官邸で自衛隊派遣を指揮した人です。
その彼が、イラク戦争が終わってから「あのアメリカのイラク戦争は間違いだったんじゃないか」と考え出した。イギリスでもアメリカでも検証が行われました。ところが日本政府はまともな検証を全く行っていない。それで日米同盟のために必要だったんだと言っている。それはおかしいんじゃないかと考え出したところに安倍政権が登場し、そして集団的自衛権行使容認、秘密保護法制定という中で、彼は今まで九条の会と名の付くものには一度も出たことがないけれど、今回は出ざるを得ないと言って出てきたんですね。
その時は私の司会でシンポジウムを行ったのですが、注目すべきは、柳澤氏は、その著書の中で「サマーワへ派遣された自衛隊の任務が成功だったかどうかと言えば、私は、迷わず成功だったと考えている」と断言していることです。シンポジウムにおいても「私はイラクに自衛隊を出して、そのこと自体は非常にいい仕事をしたと思っています」と発言していました。
九条の会の人達はびっくり仰天ですけど、「成功だった」という意味は何かというと、自衛隊員は1人のイラク人も殺さなかった。そして自衛官も1人も死ななかった。これが成功なんだと彼は言ったんですね。自衛隊も含めて、何か国際貢献しなければいけないというのが彼の持論なので、そこは私と違うのですが、しかし国際貢献では絶対に銃を撃たない、これが重要なんだと言うのです。それが日本の財産なんだと。先ほど言ったように、だからイラクの国民は自衛隊を信頼してくれました。ところがそれを安倍さんはひっくり返そうとしている。
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