皇太子殿下の記者会見記事に見る新聞の取り上げ方
2月27日の朝日新聞「池上彰の新聞ななめ読み」は、皇太子殿下の記者会見での発言をめぐり、新聞の取り扱いにについて「憲法への言及 なぜ伝えぬ」と題して取り上げていた。
皇太子殿下のご誕生日記者会見ではマスコミ各社が出席し、同じ話を聞いたのに、新聞によって記事での伝え方が違うというのだ。「記事を読み比べると、記者のセンスや力量、それに各新聞社の論調まで見えてくることがあります」と婉曲に書いているが、私に言わせると記者の世界観や新聞社の政治的立場まではっきりと見える。
朝日新聞を購読している私は、皇太子殿下が憲法に言及したことは知らなかった。ただ過去の戦争について述べた点は評価した。
池上氏によると、毎日新聞は「我が国は戦争の惨禍を経て、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、平和と繁栄を享受しています」と引用しているという。
この部分の実際のご発言は、次のようになっている。
「私自身、戦後生まれであり、戦争を体験しておりませんが、戦争の記憶が薄れようとしている今日、謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切であると考えています。両陛下からは、愛子も先の大戦について直接お話を聞かせていただいておりますし、私も両陛下から伺ったことや自分自身が知っていることについて愛子に話をしております。
我が国は、戦争の惨禍を経て、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、平和と繁栄を享受しています。戦後70年を迎える本年が、日本の発展の礎を築いた人々の労苦に深く思いを致し、平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っています。」
池上氏は、「安倍内閣が憲法解釈を変更したり、憲法それ自体を変えようとしています。そのことを考えると、この時点であえて憲法に言及されたことは、意味を持ちます」と指摘している。
皇太子殿下は、憲法99条の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」を守って発言されているというのだ。そして、「憲法は大事」と伝えようとしているのではないかと言っている。
こんな大事な発言を記事に書かない朝日新聞の判断は、どんなものかと言っているが、その通りだと思う。私は朝日新聞を購読しているが、あの従軍慰安婦問題以来、委縮してしまったのではないかと思う。
池上氏は触れていないが、東京新聞は毎日新聞と同じようにきちんと取り上げている。池上氏は、読売新聞、日本経済新聞、産経新聞にはこの部分は出てないという。読売、産経はアメリカのマスコミから政府の広報紙と言われているそうだから、書かないのは当然であろう。
ところで外国のマスコミはどう伝えたのか。戦争について述べられた点を評価している。
●AFP記事を掲載した英ガーディアン紙は、「皇太子、日本は第二次世界大戦の歴史を書き改めてはいけないと述べる」と見出しを付け、副題を「皇太子、戦争での日本の行為を正しく記憶することが重要だとの異例の発言。
●ロイターは、「日本の皇太子は、第二次世界大戦の記憶が薄れていく中で、事実を忘れないよう求めた」とのタイトルだ。そして、やはり、安倍首相は歴史修正主義者だとの扱いだ。
● BBCは、「皇太子殿下、戦争の歴史を正しく認識するよう求める」とタイトルをつけた。同メディアも最近の安倍政権の動きを伝え、日本の歴史教科書は、日本の戦争時の残虐行為をごまかしていると長年批判を受けていると報じている。
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皇太子の誕生日記者会見のスピーチがメディアによって受け止め方、伝え方が違うことが話題になっていることは初めて知った。皇太子のスピーチに限らず、こうしたことは起こりうることだが、ことが日本国憲法云々となれば、今の安倍政権にとって看過できない問題だけにメディアも気を使ったのであろう。メディアが権力者の思惑を忖度し、阿るようになれば、それはメディアの自殺行為に等しいとは
誰かがいった言葉だが至言である。NHKの籾井会長は「時の政権が右と言っているものを左と言うわけにはいけませんわな」とはっきり言っている。普通、本音は絶対言わないものであるがNHK会長として籾井氏は極めて珍しいタイプである。
投稿: toshi | 2015年3月 2日 (月) 08時50分