転載「タラの木のふしぎ 末期がんからの生還」(河村光恵著)②
(2)医者に行きたくない夫
そして、一ヶ月ほどがたった時、夫はまた、
「トイレの後には、必ず出血が続いている」
と言うのです。
「どんな色?」
と聞く私に、夫は、
「真っ赤な血だ!」
と答えました。私は胃ガンの末期で、死、寸前の姑を家に引き取り、この手で看て来ましたので、「真っ赤」と聞いて少し安心しました。
そして四ヶ月がたった時、私が腸閉塞になり入院し、さらに、二ヶ月が過ぎていました。私は、夫の病状の事はすっかり忘れていました。
そんなある日、夫はまた、ぽつんと言ったのです。
「おれ、まだ血が止まらん!」
びっくり仰天した私は、直ぐ医者に行くようにと強くすすめました。何となく医者に行きたくない夫は、
「痔だで、ええ!」
と言って医者へ行きません。私は、
「病気を大きくしてから行く事はないでしょう!」
と怒りました。
すでに大出血から半年がたっていました。それでも夫は、忙しい仕事に気をまぎらわせ、行きませんでした。八月に入り、
「盆休みにでも、行くか・・・」
と、やっと行く気になったのです。出血から十ヶ月がたっていました。
(3)詰まる寸前の肛門
夫は、細いミミズほどの便が、やっと少しずつしか出ないと、言って、一日に、八回も九回もトイレに入っていました。
盆休みになり、病院へ行った夫は、真っ青な顔をして帰り、
「医者が、出来るだけ早く、家族に来て貰うようにと、言ったから直ぐ二人で病院へ行ってくれ!」
と言いました。私は、
「わかった!」
と言って、仕事に出かける長男と、トラックに乗って直ぐ家を出る事にしました。心配そうな夫に、私は、
「父さん!私は、病院からバスで、直ぐ帰って来るからね!」
と言い残し家を出ました。
車の中の二人は、不安で言葉はありませんでした。病院に着き、先生の前に黙って二人は並んで座りました。
「手遅れです。仮に手術が成功しても、必ず三ヶ月後には、再発します。そして半年と思って下さい!」
と、一気に言われたのです。 私は、後頭部を「ガーン」と、バットで一撃されたような衝撃を受け、頭がぼんやりしてぼーっとなりました。
気を取り戻した私は、
「先生!万が一助かる!という事は、ありませんか?」
と、震える心をおさえて聞きました。先生は首を横に振り、
「そういう事は、考えない方がいい・・・」
と、ぽつんと言われました。そして、
「ガンも悪性で当然、肝臓にも転移していると思う・・・お尻の出口はガンが大きく、詰まる寸前だった」
と言われ、あ然としました。
私は、あふれる涙もふかず、黙って息子の車に乗りました。真っ青な息子は、見た事もない程のけわしい顔をしていました。
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