衝撃!「沈みゆく大国 アメリカ」を読んで―③―
2014年1月のダボス会議で安倍首相は「非営利ホールディングカンパニー(持ち株会社)型法人制度」について言及し、投資家たちに日本に新たに生まれる新市場をアッピールした。「非営利」という言葉に騙されてはいけないと指摘する。(P.190)
実際は株式会社が出資できるようになっているというのだ。ホールディングスの傘下に、救急病院や慢性期病院、老人ホーム、介護・福祉施設などをまとめて置き、経営のプロが運営することで「効率化」と「医療費削減」を同時に進める。それにより、今の日本での「社会福祉法人の財政難」と「介護人材不足」も解決できるという。(P.190)
まことによいことづくめのようだが、一旦株式会社経営になると非営利性が失われ、アメリカ型チェーン病院の参入につながるというのだ。「経営不振のなった際に外資に買収されたら、取り返しがつかなくなる」という日本医師会の中川俊男副会長の言葉を紹介している。
もし、営利事業化したら、効率優先、利益優先のビジネスとしての経営が行われることは目に見えており、アメリカのように、都市中心にホールディングスが置かれ、小児科やERなど採算んの取れない部門はカットされ、利益率の高い「心療内科」や循環器科」「整形外科」などで稼ぐであろう。そして、安全性よりコスト削減が重視され、支払い能力のない患者は診てもらえないことになる。(先日見たように日本でも支払能力のない人が急増している)
安倍政権は、病院の株式会社参入を要求し続けているアメリカの要請に応えて、反対する医師会を抑えて、「医療を営利の成長産業にし、外国投資家を呼び込む」という方針のもと、「ヘルスケアリート」と「非営利ホールディングカンパニー法人制度」の日本上陸を決めたのだという。(P.192)
日本では着々とアメリカの侵略を許す地ならしが進んでいるのだ。マスコミはこの点についてあまり取り上げていないが、何故であろう?恐ろしいことだ。
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コメント
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堤さんは、アメリカでは国家の解体が進んでいると言っています。何でも利益追求第一のやり方で国民にとって大事なものが失われてしまうのです。
投稿: らら | 2014年11月29日 (土) 08時25分
小泉政権誕生以来、民営化と規制緩和が声高に叫ばれ、この流れは現政権も変わるところはない。国鉄や電電公社のように民営化してうまくいった例もある。しかし教育とか医療の分野はこれを民営化、要は金儲けの種にすることは受益者にとって真に改革に繋がることなのか、はなはだ疑問である。人材派遣の規制緩和、民営化が今日の非正規社員の問題を生み出したのである。分野によっては今なお規制緩和どころか規制強化が必要であるかもしれない。
投稿: toshi | 2014年11月29日 (土) 06時48分