NHK「臨死体験・・・死ぬとき心はどうなるのか」を見て
敬老の日、前夜にNHKで放映された「臨死体験・・・死ぬとき心はどうなるのか」を見た。ナビゲーターは立花隆氏で、数か月にわたって全世界を取材し、この人類永遠の謎について追い求めた番組であった。
立花氏は現在74歳で膀胱ガンを患い、取材中にも2度目の手術を受け、その時臨死体験に似たものを体験したと言っていた。
彼は臨死体験について以前から興味を持っていたという。それで現在の脳科学などの最先端でどのくらいまでこの謎に迫れているのかを取材したのだ。
このところ世界中で、いわゆる「臨死体験」をしたという人が増えているそうだ。それは医学の進歩により生き返る人が増えたからだという。
番組の中で取り上げた臨死体験の中で、興味深かったのは、生後1か月でインフルエンザにかかり、4か月後に奇跡的に生還したジャクソン・パワーズ君という子どもの例であった。この子はその時の経験を2歳になった時に話し始めたが、母親によると内容は全て事実とあっているという。
赤ちゃんから高齢者まで、臨死体験をした人が増えているが、その人たちに共通していることがある。それは、
①生体離脱
②神秘体験
である。生体離脱とは、自分の心が肉体から離れて天井の辺りに行き、そこから自分や周りの様子を眺めるというものである。神秘体験とは、生体離脱した自分がトンネルのようなものを通って、幻想的な美しい風景のところに行き、幸せな気分になり、母親や友達と会うとか、神のようなものに導かれるとかの経験をするというものである。
この体験は、エベン・アレキサンダーという脳神経科学者によってもされており、その人は講演をして回り有名人になっているという。彼はその体験によって死後の世界を信じるようになったという。
死後の世界とかあの世とかと結びつけると科学ではなく、オカルトや心霊宗教の連中を喜ばせるだけであるが、この番組はそうではなかったのでよかった。
別の科学者によるネズミを使った実験では、心肺停止をした状態でも微弱な脳波が検知されたそうだ。私の推測だが、その時に夢を見るような臨死体験をするのではないだろうか。
感覚、感情、行動、記憶などを統合するものとして「意識」があると考えられていて、それが「自我」を形成するのだと言っていた。
ウィスコンシン大学のジュリオ・トリーニ教授は、「統合情報理論」を唱え、「意識」は蜘蛛の巣のような100兆個もある脳神経の複雑なつながりだという。眼が覚めているときは、複雑につながりあっているが、眠っているときは僅かなつながりしかないそうだ。
私たちが日常生活のなかで行う、読書、歌唱、食事、おいしい、まずい、嬉しい、つらい、悲しい・・・・・・などさまざまな行動や感情などが神経でつながり合い、からみあった蜘蛛の巣のようなネットを作り上げているのだという。この理論については私も納得ができた。
次に、神秘体験であるが、どんなときに神秘を感じるのかについて、ケビン・ネルソンケンタッキー大教授は夢と神秘体験は似たところがあり、浅い眠りの状態のときに神秘体験をするというのだ。
臨死体験をするときは、幸福感をもたらす幸せ物質がいっぱい放出されるのだという。夢をよく見る人はそういう体験をしやすいのだそうだ。
私は毎晩何度も夢を見るから死ぬときは素敵な世界に連れて行ってもらえると期待する。ネルソン教授がいうように死ぬときには幸せに包まれるとすれば死ぬことは怖いものではなく、楽しいものとなる。
自然死を勧める医者たちは、自然に死ぬときにはエンドルフィンという幸せ感をもたらすホルモンが出て苦しむことはないと言っている。
神秘体験をするのは、脳の中の縁辺系で、この部分は動物にもある古い脳だという。ということは人間は昔から穏やかに亡くなり、人によっては神秘体験をしながら死んだのであろう。
最後に、立花氏は、ギリシャの哲学者エピクロスが言ったという「人生の目的はアタラクシアつまり『心の平安』を求めることだ」というのを引きながら、「心を乱す最大のものは、死についての想念、いろいろと想いめぐらすことだ」と話していた。
釈迦は、「生・老・病・死」を四苦としてあげて、これらが人間を悩ませる元だから、それから心を解き放すことが大事だとして「諦め」を説いた。そして解脱(悟りを開く)できた人を覚者(仏)とした。仏教の場合、解脱の方法論としてさまざまな宗派の考え方ができたのだと言える。
しかし、この番組を見て人間にはもともと楽に死ねる仕組みが脳に備わっているのだから、悩むことなく自然に任せればよいのだということが分かった。
死後の世界があるかないかは別問題で、その人の「信念」に依存すると言っていたが、私もそう思う。死後世界や霊があると信じる人は信じればよいし、信じない人はそれでよいのである。
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コメント
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死は誰にでもやって来るもので避けられません。私もいつ死んでもおかしくない年齢になりました。極楽のような情景に導かれて生を終われるなら楽しみです。
投稿: | 2014年9月16日 (火) 11時05分
私もこの番組は見ました。立花氏は20年前に「臨死体験」という本を上梓し、私も読みましたが内容は殆ど忘れていました。彼は70歳を超えて特に死を意識するようになり、今では死を恐れない心境に至っているという。また彼は「脳を究める」という本も著し、脳研究に関しても一級の人物である。歳をとれば何が身に振りかかろうとも動じないような死生観を持ちたいものですが、市井の凡人には難しいことだ思いました。ところでこの問題についてはキュウーブラー・ロスというスイスの女性医師が著した
「死ぬ瞬間」という本が余りにも有名です。
投稿: Toshi | 2014年9月16日 (火) 07時40分