予想に反して戦時中を長く描く「ごちそうさん」
NHKの朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」は相変わらず20%以上の視聴率を保っている。
現在は昭和19年の終わりか20年の始めごろだと思うのがだが、私の予想に反して戦争中の描写が長く続いている。NHKのことだから戦時中の生活は簡単に飛ばしてさっさと戦後の生活に行くと思っていた予想が外れた。
戦時中の、軍や政府のが国民に真実、を知らさず、やみくもに信じさせた間違ったやり方について随所に取り上げている。
悠太郎は大阪市の防火改修課の課長として、建物疎開の責任者となり、「疎開の鬼」となって建物を壊していく。
空襲によって爆弾が落とされても、めったに当たるものではないというセリフもあった。実際当時は空襲は怖いものではないというイメージを植え付ける指導をしていたのだ。
悠太郎は軍の指導する防空演習で火災を発生させさらにガソリンをかけた。焼夷弾が落とされるというのは空からガソリンが降ってくるのと同じだから、水では防ぎきれない。だから逃げるのが大事だということであった。それが軍の怒りを買い、悠太郎は軍に捕まってしまう。
この部分について、戦時中の防空の研究をした早稲田大学の水島教授は評価をしている。当時「防空法」というのがあって、「都市からの退去を禁止する」「空襲のときは逃げずに消火せよ」と決定められていた。悠太郎の行為はそれに反するというのだ。
戦時中は、逃げることなど国策に反することは、非国民とされたのであった。私も子どもであったが、非国民という言葉はいつも折に触れ聞かされていた。
3月3日の放送では、大阪空襲が始まったシーンがあったが、焼夷弾が雨あられのように降る様子はまさにその通りであった。
「ごちそうさん」には、戦争でだんだんと物資が不足して行く様子や配給やヤミ商売のことなども描かれている。その中でめ以子は様々な工夫をして食べ物に拘っているが、私から見ると本当にそんなことはあったのかと疑問に思われる。
私の住んでいた辺りでは、本当にシンプルな食べ物で、水が一杯のお釜に僅かな米粒を入れて、その他は大根などを入れ、量を増やすとか、我が家ではサツマイモを父の手製の棒秤で計って食べるとかいう惨めなものであった。
大豆の粕とかウジが湧いた鰯を食べたりしたから、め以子の家の食事は信じられないご馳走である。しかし、それなりに大変さを描いているのはよい。
悠太郎が防火訓練の時にガソリンをまいて軍に捕まり、裏から手を伸ばして助けてもらったが、結果として軍属にさせられ満州に送られた。その時にめ以子が軍の偉い人のところで甘い物などを作らされ、「砂糖などの物資があるところにはあるものですね」と言わせている。
妹の言動や他のめ以子の周りの人々の言動も当時の国策に批判的であり、好感が持てる。
かつての戦争当時の生活についてドラマとして描かれるのは大変良いことだと思う。ただ、心配なのは安倍首相の意を体したNHK経営委員たちが、今後このような描き方をさせないかもしれないということである。
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これからはこのような戦争の描き方は、自虐だとしてやれなくされるでしょう。
投稿: らら | 2014年3月 5日 (水) 08時48分
「防空法」というものを初めて知りました。戦時中の多くの国民が、理不尽な国策にも苦しめられていたことを描けるのはドラマならのことでしょう。
以前は主人公の幼馴染、肉屋の源太が戦争に行って多くの死体を見てPTSDになり、負傷して戻ってから肉屋の仕事ができなくなったというシーンが出てきました。
こうのようなドラマは、安倍さんのお友達の経営委員たちにチェックされ、これから作られなくなることを心配します。
投稿: takao | 2014年3月 4日 (火) 21時23分