NHKスペシャル―「アルツハイマー病を食い止めろ」から
NHKスペシャル「アルツハイマー病を食い止めろ」は、この病気の予防・治療の可能性を示唆するもので大変心強かった。
認知症患者は世界に4400万に人と言われ、2050年には1億2500万人に増えると言われている。日本は先進国の中で最も早く増加しており、認知症が462万人もいると推定されている。30年後には1千万人になると見込まれている。認知症の70%はアルツハイマー病だそうだから大変な数値である。
そういうこともあって昨年12月に英国でG8のアルツハイマーサミットが開かれ世界中で協力して克服の研究をすることになった。アルツハイマー病は介護が大変で社会的費用も巨額になるので一日も早い対策が必要だというのである。
アルツハイマー病のメカニズムが、米国ワシントン大のジョン・モリフレ教授たちによるDIANという米、英、独、墺の国際的研究によって解明されたという。
アルツハイマーはアミロイドβという物質が脳に徐々に蓄積されて、その老廃物が脳の神経細胞を傷つけるのだ。それが蓄積されていく様子が分かったのである。
発症の25年も前から溜まり始めるのだという。70歳ぐらいから増え方が加速するようだ。また、もう1つの物質タウが発症15年ぐらい前から増え始める。タウはアミロイドβがシナプスを傷つけたあとで神経細胞に入り込み破壊するのだ。最初に海馬に溜まるが、海馬は記憶に関係しているので記憶力の低下となって現れるのだ。
そこで、アミロイドβをやっつける薬とタウをやっつける薬を開発することがカギになる。これまでアメリカでは101の薬の開発が行われたが失敗したという。
現在イギリスでLMTXという薬が開発中で、かなり有望であるという。この薬はタウをターゲットにしていて、タウを分解するのだそうだ。それにより海馬が萎縮するのを食いとめるというのである。
薬の開発には最低でもさらに2年がかかると言われれている。しかし、開発者は必ず食い止めるようになると言っていたので楽しみである。
日本では大府市にある国立長寿研究センターでは運動によるアルツハイマー予防や進行の食い止めが研究され、成果をあげている。
発症直前の人はMCIといい軽度認知障害の人である。その人たちに運動をさせる。それは暗算の計算や特殊なしりとり遊びをしながら運動をするというものである。世界で初めてのものだそうだ。
運動プログラムURL:http://www.nhk.or.jp/kenko/n_special/pdf/program.pdf
週に1回、90分のこの運動で改善が見られたのだ。運動により筋肉が刺激されると血液中に成長ホルモンが増加し、海馬ではBDNFという物質がより多く分泌され、新たな神経細胞を作るように働きかける。このとき海馬に計算やしりとりなどの負荷を与えると神経細胞の結合が高まり活性化すると考えられているのだ。
次に認知症を患う人がなぜ増加しているのかを調べた疫学調査がある。それは九州の久山町で1961年から4000人を対象に行われたものである。
アルツハイマーの人が1992年に1.8%であったのが2012年には12.3%に増えている。異常なほどの増え方である。
その原因は食生活にあるのではないかと考えた。1961年には食後の血糖値が高い人が5%であったが、2002年には35%になった。血糖値が高い人ほどアルツハイマーになる危険性が高いことが分かったという。
血糖値が増えるのは動物性脂肪の摂取量が増えたことによるという。食生活は生活習慣病(成人病)だけでなく、アルツハイマーにも大きく影響しているのだ。
アメリカのワシントン大学の研究では、アミロイドβは起きている間に作られ、睡眠中に髄液とともに排出されるということが突き止められた。実験によると質の良い睡眠の人ほどアミロイドβの排出がよいことが分かった。質の良い、十分な睡眠がアミロイドβの除去に有効ではないかと考えられている。
薬でアミロイドβをたたく方法も研究されていて、有力な薬としてガンテネルマブという薬が開発中である。
アミロイドβは発症すると減り始めることが分かった。それでこの薬をいつ投与するとよいかが調べられている。現在家族性アルツハイマー病の人たちの協力を得て研究が続けられていて結果が出るのは2年後だそうだ。
高齢社会になって認知症は最も罹りたくない病気の一つである。重症になれば本人はいいのかも知れないが周りが大変である。またその過程が長く人に迷惑をかける。高齢で1人暮らしが増えているので社会も大変な問題を抱えることになる。
アルツハイマーのメカニズムが分かり、薬の開発や対処法が研究されて近い将来にこの病気の克服が期待できそうだというのは嬉しいことである。
以上のことから、さしあたってやるべきことは、
①運動特にウオーキング
②食生活の改善
③質の良い十分な睡眠
である。
この3点は、アルツハイマー病だけではなく、生活習慣病の予防と共通である。お糖尿病の人はアルツハイマーにかかる確率が高いことが分かっている。また、睡眠中に成長ホルモンが作られることも分かっている。
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生活習慣に気をつけてなるべく認知症を遠ざけたいですね。
投稿: らら | 2014年1月25日 (土) 10時48分
私もこの番組を見ました。脳内で起こる現象がこれだけ科学的に解明されているのは凄いことだと思いましたが、知られてきたのはまだほんのわずかでまだ分からないことが圧倒的に多いそうです。認知症は典型的な老化現象で、人生50年の時代には認知症は問題にもなりませんでした。歳とれば童に戻る
というのがよくいわれたことでした。超高齢化社会では皆が童に戻ったのでは大変なことになります。
バランスのよい栄養を取り、適度な運動をして規則正しい生活を心がけることが目下のところ最大の予防になるように思いました。
投稿: Toshi | 2014年1月25日 (土) 08時29分