企業が労働者に儲けを還元することは望めない
朝日新聞の株価欄に、「経済気象台」という小さなコラムがある。注に、「この欄は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるもの」と書いてある。ペンネームはあるが、執筆者が誰であるかは分からない。そのためか結構本音で書かれることもあるように感じている。
11月7日の本欄には、「危ない橋を渡る」というタイトルで、安倍首相が企業に賃上げを呼び掛けているが企業はおいそれとは賃金を上げないだろうという趣旨のことが書いてあった。
安倍首相が目指しているのは、企業減税と消費増税を共存させて、デフレからの脱却をはかることだと指摘する。その点については、以前にこのblogで批判をした。消費税増税分に近い企業減税をやるくらいなら、消費税増税をすべきではないと。
消費税増税で国民は大きな打撃を受ける。それをすこしでも回避したいと、今駆け込み需要が急増しているという。
この欄の筆者は、「アベノミクスの成否は、優遇政策で潤った企業が消費税増税で打撃を受ける国民にどれだけ利潤を還元するか、という、倫理的な問題がカギを握っている」と書く。
安倍首相の主張は、企業減税により、企業の業績があがれば、賃金も上がるということで、それを期待しているのだ。それに対してごく一部の企業は賃上げをすると表明したが、ほとんどは態度も決めていない現状である。
企業はいつでも海外に生産拠点を移すことができる。企業がもつ潤沢な資金は(これは巨額な内部留保を見ても分かる。企業が内部留保を増大させてきた時期に、働く者の賃金は下落の一途であったことは以前に指摘した通りである。)先細りのする日本市場ではなく、海外へと向かう時代だから、政府の言いなりに賃金を上げる動機は薄いというのだ。
「アベノミクス命名の由来となったレーガノミクスでは、優遇された企業が設備投資や賃上げをせず、マネーゲームに狂奔し、リーマンショックの遠因を作った」と述べている。
だから、「『企業の良識』に訴える安倍首相の説得力だけが頼りのアベノミクスは『危ない橋を渡る』」というのだ。
結局大企業だけが恩恵を受け、利益を増大させ、働く者への還元をしないでさらなる金儲けにひた走るのではないか、経営者には倫理観など期待できそうもないというのが実情であろう。
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コメント
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中国では今孔子の教えの儒教が政府にも奨励されているそうです。昔から人間は人を騙したり、悪政をしいいたり、戦争に走ったり・・・・性は直りません。
日本にも儒教が必要でしょうか?でも、儒教も体よく権力に利用されてきましたね。
投稿: らら | 2013年11月10日 (日) 10時45分
昔、政治家に倫理を求めるのは八百屋さんにでかけて魚を売れと言うに等しい、とうまいことをいった政治家がいた。みずほ銀行の反社への融資、相次ぐ食品偽表示等、昨今の企業の不祥事を知ると、政治家を企業(経営者)に変えても十分当てはまるように思える。それはともかく、企業は業績が上がった場合、賞与で報いることはあっても、ベースアップには極めて慎重である。企業のコストの内、人件費は最大であるので、これが膨らむことは国際競争力の面からも好ましくないのである。儲かれば利益処分として経営者の報酬は上げる、言葉は悪いが労働者はできるだけ安くこき使う。今話題のブラック企業は完全にこのパターンである。資本主義が有効に存続するには企業家の高いモラルが必要だと偉い哲学者の言葉を思い出すが、現状ではそれに悖る出来事が多すぎるように思う。
投稿: Toshi | 2013年11月10日 (日) 09時09分