原始共産社会にはうつ病はなかった―NHK「病の起源}
10月20日にNHKで放映された「病の起源」を興味深く見た。番組によると、原始共産社会には(番組ではこの言葉は使わなかったが)うつ病がなかったという。
また、現代でもアフリカのサバンナに住むハッザ族にはうつ病がないことが分かった。ハッザ族は狩猟を中心の生活をしていて、獲物はみんなで平等に分けているそうだ。生きていくのに一番大事な食糧が平等に分けられるのでストレスがなく、幸せに暮らせるようだ。
では、なぜ人類にうつ病が現れ、現代ではそれが増えているのか。起源は5億2千万年前に現れた脊椎を持つ魚類に遡る。魚類には脳ができ、その脳にある扁桃体がストレスホルモンを出し天敵から身を守るようになった。しかし、時には暴走をして魚でもうつ状態になることが分かった。
次に爬虫類の時代になり、2億2千万年前に誕生した哺乳類は、群れを作り外敵から身を守るようになり、孤独に弱くうつ病になりやすくなったのだ。これも扁桃体の暴走が原因で起きるのである。飼育している類人猿のチンパンジーを孤独状態にしえ置くとうつ病になることが分かった。孤独はうつ病を引き起こすのだ。
700万年前に誕生した人類は、脳で記憶ができるようになり、危険なザバンナで生活するために恐怖の体験を記憶することが大事であった。その記憶が何度も思い出されるうちに扁桃体を活発にし、体にストレスホルモンを出させる。それが新たなうつ病の要因となった。
さらに人類は言語を獲得したことにより、他に伝えることができるようになり、他人から聞いた恐怖の体験などを記憶し、それが扁桃体を刺激して、新たなうつ病の引き金になることになった。
人類は進化の過程で、天敵、孤独、記憶、言語といったうつ病の種を抱え込んできたのである。
社会生活を営み、多様化し複雑になり、情報が溢れる現代において、我々の周りはうつ病の引き金になる事柄に取り囲まれているともいえる。
原始共産社会では、うつ病が見られないというのは「平等」であることで扁桃体への刺激がなくなるからだ。
春野雅彦博士は、平等と扁桃体の関係に注目して実験をした結果、扁桃体は自分が得をしても、損をしても強く活動し、公平な場合はほとんど反応しないことを突き止めた。
「平等」はうつ病の原因となる扁桃体の異常な活動を刺激しない大事な要素である。原始共産社会では「平等」によってうつ病の原因を抑え込んできたのだ。
狩猟生活の後、農耕栽培社会になって、富の偏在が生じるようになり、貧富の差や社会階級が生じた。それが現代までずっと続いているのである。
職業によっても、うつ病になりやすいかどうかの違いがあるという。医者や弁護士などの自分で判断する技能職はなり難く、営業、セールス、工員などの非技能職は上からの圧力にさらされやすく、うつ病罹患率が高いそうだ。
戦い、競争、孤独、情報過多、妬み、いじめなどの外敵・・・・さまざまなものが扁桃体を刺激してストレスホルモンを過剰にし、ついにはうつ病をひきおこすのだ。
うつ病から身を守り、あるいは抜け出すためには、人とのつながりをもち、孤独にならない、原始人のように体を動かし(→運動をする)、規則正しい生活をする・・・などが大事である。
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狩猟の原始社会は実は一番幸せな時代だったのかも知れません。欲望は富の格差によって生じ、肥大化して来たのでしょう。金融資本主義の現代は欲望のみで動いている社会だと思います。心の病が増えていくのも無理からぬことです。
投稿: らら | 2013年10月28日 (月) 08時32分
「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」は孟子の言葉ですが、中国は改革開放で確かに国全体は豊かになりましたが、逆に貧富の差が大きくなって人々の不満が増大しています。日本も敗戦から10年ぐらいまでの皆が貧しい時代は今ほど自殺者やうつ病患者はいなかったはずです。ストレスは他人との比較によって生まれるのは洋の東西を問わず共通しているようです。私ごとですが先日、高校卒業後50周年の同窓会がありました。70歳目前になり、勤め人は殆ど退職してますが、医師、弁護士の同期の人達はまだ元気に活躍してました。「友がみなわれよりえらく 見ゆる日は花を買ひ来て妻としたしむ」は石川啄木が不遇時代に詠んだ有名な句ですが、妙にリアリティがありました。
投稿: Toshi | 2013年10月28日 (月) 08時20分