安部元章著「手品」から―②―
安部元章著「手品」は昭和31年虹有社刊で、昭和28年からNTVで放送された「テレビ手品教室」という番組をもとに書かれたということは前回書いた。定価240円となっているが、絶版本のため中古本でも500円以上するようだ。
それはともかく、安倍氏が序章に書いておられることが、当時の世相や手品について興味深いので取り上げる。なお、著作権は切れていることを断っておく。
「盛んになった素人の手品研究」
ここ数年来、紳士芸としての素人手品の研究が盛んになったことは誠に喜ぶべき現象だと思います。
これは一つには手品が智的な健全娯楽だということが一般に認識され、また、生活をより明るく楽しくしようという風潮が一般にしみこんで来た結果と考えられます。
現在(1956年)の日本は、曲がりなりにも、とに角経済的にも精神的にもある程度の安定を得てきたことが、素人の手品熱をあおる一つの大きな原動力になったのも事実です。
←日本はまだまだ貧しかったことを思い出す。うどんが1玉10円、コロッケが5円だったと思う。
ふた昔も前の(昭和の初め)話です。手品の好きな貴族院議員の某男爵に対して、「手品の好きなのはよいが人前でやるのだけはやめてほしい。さもなくば議員を辞職せよ。」という強硬な意見と忠告がなされたという伝説があります。当時としては、いやしくも華族たる者がいやしい芸人風情の真似をするとは何事かというような考え方が一般に行われていました。
女優になっただけで同窓会名簿から削られ、大女優になってから再び同窓生の待遇が与えられたというような夢のような話があった日本です。
他人事ではありません。私は子どもの頃から、親にかくれて手品の練習をやりましたが、これも両親が極端に手品をやることを嫌っていたからです。
父親は昭和19年に許可をしてくれましたが、母親はなかなか許可をしてくれず、「お前は痩せても枯れても女学校の校長であり、経営者なんだ。そのお前が他人の眼を誤魔化すような手品などをやるのは寒気がするほど嫌だからやめてくれ。」と何度も苦言を頂戴したものです。
←お母さんが、他人の眼をごまかすような・・・・と言っているのが面白いし、当時は手品と言っていたのだ。今はマジックというほうがかっこよいと思われているが。ちなみに私は「手品」という言い方が好きである。
戦前は「手品」は下等な芸だと一般的にも思われていたことがわかる。
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