68回目の終戦の日の特別な意味
今日は終戦の日である。戦後も68年となった。今年の終戦の日は特別な思いで迎えた。それは安倍首相が12日に山口県で、「憲法を改定することは私の歴史的使命である」と語ったように、自民党・公明党が衆参両院で圧倒的な多数を占めているこの機会を逃さず憲法改悪を進めようとしているからである。
安倍首相は、憲法第9条の戦争放棄をなくして、日本が戦争ができる憲法に変え、国防軍の設置を目指している。彼は太平洋戦争を知らない世代である。あの悲惨で忌まわしい戦争がどんなものであったかの想像力すら持たないようだ。
戦争のとき敵と対峙するのは若い兵士である。この前の戦争では、「天皇陛下の御為に!」若い人だけでなく、普通なら兵隊に行かない年齢の人まで赤紙で召集されて戦地に赴き命を絶った。安倍首相は、自分が最高司令官として若い兵士を戦場に送り出すことに何のためらいもないようだ。
11日のNHKスペシャル「自衛隊と憲法ー日米の攻防」という番組でこれまでの憲法と自衛隊の関係を歴史的に捉えていた。
憲法は、よくアメリカによって与えられたものだという理由で、改定をすべきだという論拠にされている。確かにアメリカが関与している面はあるが日本の憲法学者などの主張も取り入れられている。
初めはアメリカは日本から軍事力をはぎ取りたかったのだ。だから軍隊を認めず戦争放棄を憲法に入れたのだ。
ところが時間が経過すると共に、それがアメリカの国益にとって大変不都合なものとなってきたのだ。番組ではその最初の転換点が湾岸戦争だったというのだ。
このときアメリカの駐日大使はアマコストで、執拗に日本政府に自衛隊の参加を要請してきた。当時の海部首相は、憲法からみてそれはできないとジョージ・ブッシュ大統領に断った。それは海部氏の見識として買いたい。
海部内閣の官房長官が後藤田氏で、彼は「それは蟻の一穴だと」指摘したという。後藤田氏は立派なものだと思う。堤防のちょっとした蟻の穴が開くことを放置しておくと穴が広がり最後には水が通り、堤防が決壊してしまうという教訓である。
結局海部首相は、1兆円以上の金を出すことで決着させたが、アメリカからは「小切手外交」と揶揄されたのだ。
その次が、ペルシャ湾への掃海艇の派遣であり、カンボジアへのPKOがあった。アメリカの機嫌を損なわないように、少しずつ蟻の穴を大きくしていったのだ。
栗山外務事務次官は、国連というお墨付の下でのPKOの派遣を進言した。これにはアメリカは強い関心を示したといわれる。1992年にはPKO協力法が成立した。
その後北朝鮮がノドンを発射したのを機に、アメリカは日本をアメリカの戦略に組み込む絶好のチャンスと捉えた。フランク・ウズナー国防次官は、自衛力以上の力を持てると持ちかけた。
米軍の最高司令官マイヤーズは憲法解釈で自衛隊が参加できると主張した。柳沢防衛次官は、「後方地域支援」という形にすることにしたら、アメリカはグラスに水が半分入ったと喜んだと話している。周辺事態安全確保法が成立した。
息子のブッシュ大統領の言いがかりによるイラク侵攻では、終結後非戦闘地域に限るということでイラクのサマーワへの自衛隊派遣を決定した。
先崎統合幕僚長は、「アメリカ軍の支援のためではなく、地域の人々の支援に行くのだ」ということで、治安維持部隊ではなく、人道支援部隊を位置付けた。2004年1月のことであった。
このように、アメリカは何とかして日本の自衛隊をアメリカ側の戦力に組み込もうとしていろいろと画策してきたことが、アメリカの公文書館の機密資料公開でわかったのだ。
60年前に自衛隊が創設されてからこれまでに1830名が「殉職慰霊碑」に名前を記されているという。しかし、その中には戦死者は一人もないのが救いである。
アメリカは自衛隊との共同訓練を米国内でやるなどエスカレートをしてきている。安倍政権は「集団自衛権」を憲法解釈の変更でやろうとしている。その後に憲法改悪をやるのに燃えている。
番組では今が日本の歴史の転換点に差し掛かっていると指摘していたがまさにその通りである。
« タチヤ商法、八百信商法、魚大商法―親切が一番 | トップページ | 何とも無様な減税日本・・・・予想通りの醜態だ »
「戦争と平和」カテゴリの記事
- ノーベル平和賞受賞を喜ぶ(2024.10.14)
- イスラエル軍のレバノンへの空爆(2024.09.27)
- 朝日新聞へのエルドアン氏の回答を読んで(2024.08.19)
- 令和6年長崎平和宣言を録す (2024.08.12)
- ガザの被害に心が痛む。イスラエルは即時停戦を!(2024.08.11)
コメント
« タチヤ商法、八百信商法、魚大商法―親切が一番 | トップページ | 何とも無様な減税日本・・・・予想通りの醜態だ »
国権の発動としての戦争放棄と変えています。国防軍を創設し、集団的自衛権だけでなく、交戦への道をひらいています。
投稿: らら | 2013年8月19日 (月) 07時25分
>安倍首相は、憲法第9条の戦争放棄をなくして、日本が戦争ができる憲法に変え、国防軍の設置を目指している。
自民党の改憲案をきちんと読んでますか?
自民の改憲案でも憲法9条第1項の戦争放棄はそのまま残します
そして自衛権・自衛のための武力行使は現憲法でも認められています
>確かにアメリカが関与している面はあるが日本の憲法学者などの主張も取り入れられている。
GHQが許可する範囲での、日本の憲法学者の主張の取り入れに過ぎませんけどね
>アメリカからは「小切手外交」と揶揄されたのだ。
アメリカだけでなく、多くの西側諸国から冷たい対応されましたね
そりゃ湾岸諸国から石油を一番多く購入してる日本が金だけ出して何もしないのですから当然ですけど
>アメリカは自衛隊との共同訓練を米国内でやるなどエスカレートをしてきている。
自衛隊は1994年から既に米国のヤキマ演習場に90式戦車などを持ち込んで演習してます
投稿: hot | 2013年8月19日 (月) 01時28分
戦後速くも68年過ぎてしまいました。それでも終戦の日のことは鮮明に覚えています。
爆撃で明日の命も分からない日々の恐怖から解放された日でした。
戦争は2度とやってはならないと誓う日にしたいものです。
投稿: らら | 2013年8月15日 (木) 10時39分
最近の世論調査によると改憲そのものには半数以上の国民が賛成しているが、9条そのものになると、賛否が拮抗している。(調査のメディアによって数字は異なるが、、)軍拡に突き進む中国、核開発を止めようとしない北朝鮮、昨今、日本が実力行使をしないことをいいことに尖閣沖で領海侵犯を堂々と繰り返す中国を見るにつけ、平和憲法だけで日本の平和、主権を将来に亘って守り抜くことができるのか、私自身も不安に思う。9条改定に賛成する国民も平和を願っていることには変わりがないと思う。しかしながら、もし日本が自民党の原案に沿って9条を改定したら、中国や北朝鮮に軍拡の格好の口実を与えることになり、日本は同じ土俵に乗ってしまう。行きつく先は歯止めなき軍拡競争にひた走ることは必定である。これはいつか来た道ではないだろうか。日本は平和国家でここまで来たのだから、国際世論を味方につけて、我慢強く平和を訴え続けるより他の選択肢はないように思うこのごろである。
投稿: Toshi | 2013年8月15日 (木) 08時38分