古賀誠元自民党幹事長を見直す
この前の衆議院議員選挙の前から、私は憲法を変えるか変えないかが最大の隠れた争点だと指摘してきた。参議院選挙を7月に控えて、憲法を変えようとする安倍政権は、参議院での2/3以上を目指している。
安倍政権の側は、まず、憲法96条を改めることで憲法改定へのハードルを下げることを狙っている。非常に姑息な手段であり、これには改憲派の憲法学者でさえ反対を唱えている。そして憲法学者たちは「96条の会」を結成して96条の改悪に反対を始めた。
これは当然のことで、改憲のための国会議員2/3の賛成という縛りを、普通の法律と同じ1/2にしようというのだから、憲法が憲法でなくなるのだ。
自民党の中には、現行憲法を守ろうというリベラル派は姿を消してしまったのか、マスコミが報じないのか、96条を変える動きばかりが取り上げられている。
そんな中で、元自民党幹事長古賀誠氏が、96条の改憲には大反対と言っていることを知り、驚くと共に嬉しくなった。
古賀氏といえば、全国遺族会会長として、毎年靖国参拝をしてきた人物である。私はその点に関して嫌な奴だと思ってきた。ところが今回彼が憲法について語った内容を知って彼を見直した。
古賀氏は、「現行憲法の平和主義、主権在民、基本的人権という崇高な精神は尊重しなければならない。中でも平和主義は『世界遺産』である。」と述べている。憲法を世界遺産にしようと言ったのは確か爆笑問題の太田さんであったと思うが、そのくらい世界に誇るべきものだというのだ。
中でも現行憲法の要である、「平和主義、主権在民、基本的人権」の3本の柱にういて守るべき財産だと指摘していることは見上げたものである。
私が小学校の頃、新憲法の発布と施行があり、「新しい憲法」という小冊子を貰って憲法について教えてもらったことを思い出す。今でも忘れられないのは、当時新制高校を卒業して代用教員として来ていた正木、谷田、水本という3人の先生のことである。
憲法発布の記念式典が高等学校の運動場で開かれたとき、彼らは「民主主義って何だろう?」と話していたのだ。
この3人はその後それぞれ民主主義を理解した立派な教師となられたが、最初はそんなものであった。彼らも「新しい憲法」を勉強して私たちにその基本の精神を教えてくれたのであった。
話をもとに戻して、古賀氏は、「憲法は我が国の最高法規だから、他の法律と扱う基準が違うのは当然で、96条の改悪は絶対にやってはならない。」と言っている。「今日の日本があるのは、平和憲法が根底に強く存在していたからだということを忘れてはならない。」と語っている。「平和主義は世界遺産だ」というのだ。
古賀氏の父親は、彼が2歳の時レイテ沖の戦いで戦死したという。母親は必死で子どもを育て、その背中を見て、彼は「戦争は嫌だ。2度と起こしてはならない。」と思ったという。それが古賀氏の政治家としての原点だという。
彼は自衛隊をイラクに派遣することに反対をし、採決の議場を退場したそうだ。「平和を脅かすようなことをしてはならない、と戦争を知らない世代に眼に見える形で示したかったからだ。」と話している。
残念ながら、古賀氏は先回の選挙の時政界から引退してしまった。今の自民党に彼のような政治家がいなくなって、みんな96条改定、国防軍設置、天皇元首、基本的人権制限などで旗を振っている。
小野寺防衛相は、アジア安保会議で「日本の右傾化は誤解」と言ったそうだが、誤解などと言えたものではない。まさに右へ向けようとしているのだ。
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コメント
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多様な意見の人が集っていたかつての自民党はどこへいったのか、右向け右ばかりで情けない状態ですね。
投稿: らら | 2013年6月 3日 (月) 18時41分
古賀氏は当選以来、自民党の派閥である宏池会に属してきた重鎮である。宏池会は池田勇人元総理が創設した派閥で日米関係は重視するものの現行憲法の中で平和を守り、経済を繁栄させていこうというリベラルな考え方、所謂ハト派の議員が多く所属する派閥であった。過去形で書いたのは、ご多分に漏れず宏池会も近年、離合集散を繰り返し、今ではリベラル、ハト派集団という創設時からの派閥の政策理念は後退してしまった。小選挙区制度になり、党中央の力が強くなりすぎたとも言われている。反主流派になれば公認されない恐れもあるので、多様な意見が容認されてきた自民党のよさが?が失われたように思える昨今である。
投稿: Toshi | 2013年6月 3日 (月) 14時04分