大変勉強になった「フランス絵画300年プーシキン美術館展」―②
第3章 19世紀後半―印象主義、ポスト印象主義
市民社会の成熟と共に価値観が多様化していくなかで、国の組織であるアカデミーとサロンを中心とする画壇の構造に対する不満が一気に噴出した。その旗手となったのがルノワールを始めとする印象派。
印象主義→戸外で習作を描いてアトリエで仕上げるというそれまでの風景画の作法に反して、印象主義の画家たちは、刻々と変化する光に包まれた一瞬の印象を、その場で素早く書き留めようとした。
代表はルノワールとモネである。ルノワールの風景画は「セーヌの水浴」だけで、この絵はフランスで見たように思うのだが。この展覧会第一の目玉は、ルノワールの「ジャンヌ・サマリーの肖像」である。ポスターにも使われている彼の肖像画の傑作だそうだ。
モネの作品は、「ひだまりのライラック」である。
ポスト印象主義→かたちや空間表現を重視したセザンヌ、色彩の強烈な力を探究したゴッホ、内面の表現を目指したゴーギャンなど印象主義を乗り越えようと、それぞれのやり方で独自に突き詰めた画家たち。
ゴッホの「医師レーの像」、セザンヌの「水浴」、ゴーギャンの「エイアハ・オヒパ」
第4章は20世紀ーフォービズム、キュビスム、エコール・ド・パリで、20世紀前半は革新的な絵画運動が集中した時代。その端緒となったのが1903年にパリで始まった「秋のサロン(サロン・ドートンヌ)」で、マティスらによる強烈な色彩と大胆なタッチの作品のコーナーがまるで野獣(フォーヴ)の檻にいるようだと嘲笑されたという。
フォーヴィズム→ゴッホやゴーギャンの内面的な表現や色遣いを参考にして、より主観的な感覚を色彩に委ねて表現したマティスたち。マティスの「カラー・アイリス・ミモザ」
キュビスム→3次元のものを平面に描くという根本的な問題を突き詰めて考えたのがピカソらキュビスムの画家たち。ものを複数の視点からのイメージに分解して平面上に組み立てていくやり方は、ルネッサンスから続く一つの視点からの空間表現をくつがえした。
ピカソの作品は「扇子を持つ女」にその片鱗を窺うことができる。
エコール・フォ・パリ→パリの多様な美術動向に刺激を受け、モンパルナス周辺に集まった外国人を中心とする前衛的な作家たちの総称。統一的な理論や様式を持たない個性派揃いであった。
アンリ・ルソー「詩人に霊感を与えるミューズ」はマリー・ローランサンと恋人の詩人を描いたもの。マリー・ローランサン「女の顔」、キスリング「少女の顔」、シャガール「ノクターン」など。
プーシキン美術館はイワン・ツヴェータエフモスクワ大学芸術学部長が1894年に呼びかけ、公的資金を使わず、民間からの寄付を募って造られ、1912年に開館したものだという。
そこに集められているフランス絵画の数々は、女帝エカテリーナやシチューキンとモロゾフという二人の大富豪が蒐集したものをもとにしている。
私は4月にフランスに行き、ルーブル、オランジェリー、オルフェの美術館でフランス絵画を中心にたっぷり見て来た。また、5月に東京で「ダヴィンチ展」と「クラークコレクション展」を見て、フランス絵画などをたくさん見た。
以前にボストン美術館やニューヨークの美術館、イギリスの美術館などで、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ピサロ、ドガ、モネ、ルノワールなどの作品をたくさん見た。特にモネやルノワールやセザンヌなどの作品はこれまでに随分見たことになる。
改めて歴史を辿ってみてみると、フランスは世界に誇る画家たちを排出していることに驚く。この美術展はフランス絵画についておさらいをする意味でもお勧めである。
名古屋の後は確か横浜で開催だと思う。
(解説部分は美術館で配布の作品解説による)
ゴッホ 医師レー
モネ ひだまりのライラック
ルソー 詩人に霊感を与えるミューズ
ドガ バレーの稽古
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楽園のカンバスのことは知りませんでした。一度読んでみたいです。下記に原田さん自身が語っていました。
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/331751.html
投稿: らら | 2013年6月 9日 (日) 10時49分
絵画が特別、趣味でない人もルノアール、セザンヌ、モネ、ミレーの作品は日本人には特に好まれていると思います。私は最近、知人から「楽園のカンバス」という著者、原田マハさんの作品を読みました。有名美術館の裏側や大展示会がどのような経緯で実施の運びになるかが生々しく描かれていてとても興味深い作品でした。「楽園のカンバス」で検索すれば内容の概説が出てきます。
投稿: Toshi | 2013年6月 9日 (日) 06時32分