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2013年2月21日 (木)

お勧めの本―「原発のコスト」(大島堅一著、岩波新書)

 「原発のコスト―エネルギー転換への視点」(大島堅一著、岩波新書)は2012年度の大仏次郎論壇賞を受賞した書籍である。

 昨年この本のことを朝日新聞で知り、探したが、売っていたのは丸善書店(丸栄百貨店内)ぐらいであった。岩波新書自体を置いている書店が殆どないのだ。

 この本には原発のコストについて詳細に書いてある。原発のコストというとき、原子力発電所で電力を作るのに直接要する費用、つまり「発電原価」を思い浮かべるが、著者はそれは重要ではないという。

 原子力発電発のコストには、この他にさまざまなコストがかかっている。それが重要なのだと指摘するのだ。

 ①福島第一原発による直接の被害のコスト―被害を受けた住民、原発で処理に働く人の被爆、農林水産業など福島経済への打撃など。

 ②それらの被害を保障する費用

 ③事故とは別にかかってくる費用―これまで原発推進に投入された膨大な税金、原発終了後の大量の使用済み核燃料の処理・処分、原発の施設の保護や廃棄の費用など。

 こうした問題について、第1章から第3章までで扱われている。こういうコストは電力会社が直接発電のために使っているコストではなく、第三者が払うコストであるので「社会的コスト」というのだそうだ。

 原発のコストには、電力会社が直接払っていない、第三者の負担になっているコストも含めなければならないという。

 これらのコストが発生し、膨れ上がって行ったのは、「原子力ムラ」という排他的な利益集団が、意思決定を握り、原発を推し進めて来たことが原因だとして、第4章で取り上げている。

 第5章では、脱原発を進めるには何が大事かを述べている。原子力発電なしで電力を確保できるのか、経済に悪影響を及ぼさないのか、再生可能エネルギーは高くつくのではないか、どうしたら普及できるのか・・・・。

 原発こそが膨大なコストをかけさせているのだから、原子力をなくすコストより便益があるはずだと述べている。再生可能エネルギーの普及によって脱原発は可能であると断言している。

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原子力発電・再生可能エネルギー」カテゴリの記事

コメント

 ヨーロッパの方が賢明です。日本はなぜ脱原発で世界をリードしないのかと思います。宝の持ち腐れで情けないです。

たまたま今日の中日新聞の朝刊トップに脱原発欧州で加速という見出しが載っていました。サブ見出し
を列挙しますと、安全強化コスト高騰、計画撤回や
凍結相次ぐ、「福島」影響 建設費2倍、推進・フィンランド採算性に疑問噴出等々です。
日本では自民党政権になってから脱、脱原発の動き
が目立ってきたように思えます。ヨーロッパでは福島の事故の後、ドイツを中心に脱原発の動きが依然根強いことを改めて知りました。本元の日本は逆の動きとなっていることは皮肉なことです。
ところで、確かに岩波の書籍は取り扱いの書店が少ないため店頭で買うことは難しいです。アマゾンですと送料無料で翌日配達してくれます。最近、書籍はアマゾンで買うことが多くなりました。街の書店が潰れる理由がよく分かります。

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