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2013年1月29日 (火)

「○○力」というタイトルの本が溢れている

 以前から本の広告や書店に「○○力」というタイトルがついた本をよく見かけると思っていた。やはり誰でもそう感じていたらしく、朝日新聞1月27日の「ニュースの本棚」欄に「あふれる『○○力』」という記事が載った。書評を書いたのは、早稲田大学非常勤講師の巻の智和という人だ。

 それによると「○○力」のブームはまだ続いているとしている。「○○力」小史という表が付いている。それによると、次のようである。

 1996年 中央教育審議会から「生きる力」が出された。私が勤めていた終わりの頃

       だ。

 1998年 老人力(赤瀬川原平 筑摩書房) これが始まりではないかという。

       恋愛力(雑誌ananの特集)

 2003年 「人間力戦略研究会」(内閣府)

 2006年 社会人基礎力(経済産業省)

 2007年 鈍感力(渡辺淳 集英社)

       伝える力(池上彰 PHPビジネス新書)

 2008年 悩む力(姜尚中 集英社新書)

 2012年 聞く力(阿川佐和子 文春新書) この年のベストセラー1位だそうだ。

 この他にも、「断る力」(勝間和代)「榊原式スピード思考力」(榊原英資)

 「マネー力」(大前研一)「読まない力」(養老孟司)「決断力」(羽生善治)・・・・など

 たくさんある。

 こうした傾向について、筆者は「『○○力』が」次々と生まれ、世の中に広がることは、今まで漫然と見過ごされてきたさまざまな事柄が『実はこれってコントロール出来るものなんですよ』と書き換えられていくことなのではないか。」と指摘している。

 さらに「かつて世の人々に共有されていた生き方や働き方についての『定番』が揺らぎ、人々は自らの力で、人生のさまざまの局面をサバイバルして行かねばならなくなった。そのような変化の対応物が世に溢れる『○○力』なのだ」

 「このとき、人生における失敗は『○○力』を高められなかった個々人の責任になる。」

 一方で、「今何が揺らぎ、何が新たに作り直されようとしているのかをまさに示しているのだと考えられないか」と述べている。

 HOW TO本は具体的に何かの事柄、スキルについてやり方や上達法を伝授したものだが、「○○力」は生き方について教えるもののようだ。

 戦前は先輩とか地域社会が生き方について指導したのであったが、戦後は経済成長とともに地域社会が崩れたり、核家族化が進行したりしてそういうことはなくなった。

 経済成長が突然のバブル崩壊で終わりその後の失われた20年の間に労働環境が大きく変わり、終身雇用の正社員がどんどん減少し、派遣社員などの不安定な雇用が増加して行った。それは自民党政権時代に作られたものであった。そうした中で「○○力」のような本が出されるようになったのだ。

 そういう意味では、自己責任で生きなければならない時代になったのだと言える。ところで私はこの手の本を1冊も読んだことがない。読みたいとも思わない。

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コメント

 マレーシアは発展途上国なのかどうか知りませんが、マハティール元首相は日本の失われた20年から学ぶと言っていたように思います。look eastははるか昔のことになりました。元気よく発展してほしいものです。

◯◯力という類の本が次々と出版されるということは、確かに、◯◯が不足しているという現状認識からなのでしょう。
ブログ子のおっしゃる様にハウツー本といっしょで、それを読んだからといって、簡単に習得できるものではないでしょう。仮に一読の価値があるとしても、そもそもその必要がある人に限って読まないものです。それはともかく、ここマレーシアにいると、人々の生きる熱気というか、たくましさを感じます。日本の社会に比べ、無秩序、混沌といったネガティブな見方もできます。いい悪いは別にして、日本人に今は欠落している何かがあるようです。

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