劇団名芸の「二人の長い影」を見る
先日、近所の清水さんが「こんな催しがあります」と言って、劇団名芸の「二人の長い影」の公演のチラシを持って来てくれた。公演は翌日の文化の日の午後に第1回があった。
私は、九条の会の大江健三郎の講演に行くつもりであったが、急きょ変更して天白文化小劇場に行くことにした。
会場に入って、チラシなどを見ながら、演劇を見るのは久しぶりだと思った。学生の頃はよく見に行っていたし、勤めている頃もよくいったものであったが退職してからは殆ど行っていない。
アンケートを書こうと思って、もう1つ思い出したことがあった。それは劇団名芸のことであった。確か45年ぐらい前に見たことがある気がしたのだ。帰りにFさんに会ったので確認したらやはり間違っていなかった。
劇団名芸は前身を「でくのぼう」と言い、新郊中学校のOBで作られたものであった。知人の柘植先生が演劇部の顧問をしていたのだ。そういう関係で、でくのぼう時代に見に行ったことがある。今回主役の久美の亭主役で出ている栗木英章さんもその頃演出をしていたと記憶する。
今回の劇は、脚本家の山田太一さんの脚本をもとにしている。調べてみたら、原案は中村登美枝さんの「おばあちゃんの初恋」で、それをベースにして山田さんがフィクションを交えて創作したもののようだ。
終戦直後、19歳の若い娘が12人の孤児を引き連れて、ソ連軍支配の朝鮮半島を大変な苦難をあじわいながら逃げ延びた話しである。劇中で久美というのが中村さんである。
久美には将来を約束した恋人がいた。しかし、恋人は軍人で満州を守るために戦いに行く。別れるとき、恋人は「どんなことがあっても生きて日本に帰るように」と言い、将来の結婚を約束するのだ。
ソ連の参戦で日本は負け、恋人はシベリアに送られ11年間も抑留される。その彼を支えていたのは、久美の存在であった。
父と母は避難していた小学校でソ連軍のために久美と弟の目の前で射殺される。この部分は山田太一のフィクションで、実際は食糧がなくて餓死したもののようだ。
久美は弟と孤児たちを連れて南へ逃げるのだが最初12人であった孤児たちが30人近くに膨れ上がっていた。艱難辛苦の中久美を支えていたのは「生きて帰れ」と言った恋人坂崎のことばであった。苦難の果てに何とか日本へ帰り、結婚して長男もできる。
75歳になった時、かつての恋人から電話がかかってきて1度だけ会いたいという。
舞台は3つの場面が設定される。上手に現在の久美の居室。下手に恋人坂崎の居室。そして上部と下手前面で若い頃の馴れ初めや二人の苦難が語られる。こうした構成は演劇ならではのものである。
久美の方は夫にも話してなかった苦難を孫娘に話したことで夫にも分かってしまう。一方元恋人坂崎は妻に先立たれ、一度久美に会いたいと思うのだが、娘の反対にあう。当人と周辺の心の葛藤の描き方はさすがに山田太一だと感心させらる。
「二人の長い影」は今年も民芸を始め各地で上演されている。
名芸の「二人の長い影」は、セリフの話し方が速すぎると感じた。一部聞き取りにくいところがあった。それと坂崎の若いときの俳優はもっと若さがほしい。
天白文化小劇場は、定員350名のこじんまりとしたよい劇場である。観客は殆どが高齢者であった。久しぶりに演劇を見て、これからまたよい演劇があったら見ようと思った。
この公演は4日(日)午後2時開演で行われる。入場料は当日券2000円、シニアは1800円である。天白小劇場は地下鉄原駅下車②出口を出たところにある。
中村登美枝さん。
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