TEDより、「A MAGIC TALE 素敵なマジックの話」
毎回TEDの面白いスピーチを取り上げているNHKスーパープレゼンテーションでは今回は「A MAGIC TALE 素敵なマジックの話」を放映した。スピーカーはマルコ・テンペストというマジシャンでテクノ・イリュージョニストと呼ばれている。
彼はもともと優秀なマジシャンであったが、あるとき、パソコンとマジックを結合することを思いついた。すぐにアップルのジョブズ氏に、「もし、最新のパソコンをくれるなら最高のマジックを提供します」と手紙を書いたらジョブス氏からPCが届いた。それを使って彼は新しいマジックを創造したのだ。
彼はそれを「拡張現実」(augumented reality)と呼び、現実とCGを結合したものだという。We all want to share augumennted reallityと言っている。
プレゼンテーションは、会場にPC,カメラ、投影機などを持ち込み、彼が作り出した映像とマジックを見せながら話した。映像はスクリーン上だけでなく、空間にも出現する。
さて、彼のスピーチである。
マジックの観客の関心はトリックのタネにあるが、マジックの興味はそれだけではなく、欺かれることを楽しむのだという。欺かれる(decieve)ことを楽しむには疑いを一時保留するのだ。
彼は、詩人コール・リッジの次の言葉を引用している。
「真実らしさを持たせて、読者を信じようとする心を引出し、その結果、束の間の詩的信仰が成り立つのだ」
詩や小説や映画などと同じで、どんな舞台芸能も虚構を信じなければ成り立たないと述べる。拡張現実もただの最新技術(テクノロジー)であり、手品も器用な技を披露しているだけだ。それでも人は信じるのだ。架空の世界に入る、つまり、架空に感情移入をする。だから手品も成り立つのである。
かの有名なマジシャン、ロベール・ウーダンは、手品師を語り手と考え、「手品師は曲芸師というより、役者なのだ」と言ったことを紹介し、マルコは、手品はお芝居であり、一つひとつの手品はお話なのだ。だから、ハッピーエンドが必要なのだと言う。
手品はひねり(twist)のある物語(story)だという。デ・ボーノを引き、「脳はパターンの総合装置である。」と言い、だから、観客はまんまと騙されるのだという。
手品の基本は、注意をそらすことである。客は論理的な推理をするように仕向けられ、裏をかかれる。手品はジョークに似ている。聞き手の予想を裏切って、見事に裏切るオチをつけて笑わせる。論理を超越した結末に新たな見方を与えられ、驚き、それを笑いで示す。
面白い話は聞き手の一歩先を行くものだ。人間の脳は出来事を感情と結びつけて考える。腑に落ちる構成を自然に組み立てる。そして他者にも伝えたがる。今やテクノロジーでそれが可能だ。ツールとして、ツイッター、facebook・・・などがある。
人間は、物事を比喩的に捉え、妄想も混ぜ、人生を脳内で脚色する。お話が自分を形成し、時には自分を変えてくれる。その上人のつながりも深まる。楽しい話なら笑顔になる。
手品(magic)は楽しいもので、人々を笑顔にし、人とのつながりを深めるものだといいうことだと思われる。彼は、現代の最先端のテクノロジーを使い、現実のものと結合して「拡張現実」という新しいマジックの世界を作り出した。
最後に彼が披露したのは、お客から借りた3台のスマートフォンを使って、会場のPC,カメラ、そして別室のアシスタントと瞬時にトリックを作り出し、スマートフォンを操りながら、驚くべきマジックを見せることであった。
私の感想は、確かにテクノロジーを使ってマジックを従来のアナログのマジックと結合することは素晴らしいが、テクノロジーの部分は、何でもできてしまうから、人々は「なーんだ、コンピューターで作ったのか。」と、冷めてみてしまうのではないかと思う。実際、毎日のテレビでCGを駆使したマジックのような映像をコマーシャルなどで見せられている。私たちは慣れっこになってしまっているのだ。
そんな中でアナログな従来のマジックはかえって輝きを増すのではないかと思うのである。
下記のURLで詳細を見ることができる。
http://www.nhk.or.jp/superpresentation/backnumber/121015.html
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