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2012年6月 2日 (土)

生活保護と親族の扶養義務の問題―読売新聞―

 お笑いコンビの「次長課長」の河本準一さんが5000万円とも言われる年収がありながら母親に生活保護を受けさせていた問題で週刊誌が取り上げて騒ぎが大きくなった。河本さんの認識不足は私も責められるべきだと思う。しかし、この問題を機に210万人と増え続ける生活保護受給者の増加とからめて、本当に生活保護が必要な人たちまで申請をし難くするような動きも見られると聞く。

 この問題に関して、読売新聞大阪本社の記事は冷静に扱っていてよい参考になると思うので、以下に紹介することにした。

■ニュースが気になる「生活保護 扶養義務の運用」
 親族援助 強化には弊害も
 2012/05/29 読売新聞大阪本社朝刊 3社面

 お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さん(37)の母親が生活保護を最近ま
で受けていたことに関連して、厚生労働省が生活保護にかかわる扶養義務の運用
強化を打ち出すなど、波紋が広がっている。

 そもそも扶養義務とは何なのか。実は義務にも程度の差がある。民法が定めて
いるのは、夫婦の相互扶助義務と、直系血族・兄弟姉妹の扶養義務だ。それ以外
の3親等内の親族が扶養義務を負うのは例外的な場合で、家裁の決定を経た時に
限られる。

 そして、1:夫婦間と、未成熟の子に対する親の扶養は「自分と同程度の生活
を保障すべき」という強い義務 2:それ以外の直系血族(成人した子から親、
祖父母と孫など)や兄弟姉妹は「自分の社会的地位にふさわしい生活を成り立た
せた上で余裕があれば援助すべき」というレベル――という解釈が確立している。

 一方、生活保護法は、扶養義務者の扶養は、保護に優先すると定めている。優
先するとは、親族の援助があればその分、保護費の給付を減額するという意味だ。
資産の活用のような保護の要件とは違うので、たとえ経済力のある身内がいても、
保護を受けられるかどうかとは関係ない。

 保護を申請すると、福祉事務所は扶養義務者に援助の意思を照会する。「でき
ません」「この額が限度」という答えなら、それ以上求めず、以後は年1回、照
会するのが従来の運用だ。つまり親族の援助は任意にとどめてきた。経済的余裕
の問題もあるし、親から虐待されていたようなケースもあるからだ。

 ただ、生活保護法には、保護に要した費用を自治体が扶養義務者から徴収でき
る、負担額の協議がまとまらない時は家裁が定める、という規定がある。厚労省
は、河本さんの事例をきっかけに、めったに使われていないこの制度の活用と、
援助できないという親族に理由の明示を求めることを検討している。

 問題は、その対象を相当な高額所得者や資産家に限定するのかどうか。強い援
助要請や費用請求を一般的に広く行うなら、影響は大きい。

 一つは生活困窮者が保護を申請しにくくなることだ。扶養意思の照会は、今で
も申請のハードルになっている。身内に恥を知らせて困惑させたくないと思うか
らだ。

 「親族の援助を保護の要件のように説明して追い返す“水際作戦”もあり、北
九州市では餓死者も出た。任意の援助の打診だけでなく、強制徴収に近い形にな
れば、身内に迷惑をかける覚悟をしないと申請できなくなる。自殺、孤独死、ホ
ームレスが増えてしまう」と吉永純・花園大教授(公的扶助論)は話す。

 二つめは人間関係だ。
 山本忠・立命館大教授(社会保障法)は「もともと日本の民法は扶養義務の範
囲が広すぎるという意見は多い。そのうえ、お金を負担させられると親族の関係
は悪化する。収入の少ない老親や病人、障害者などが、身内に負担をかける迷惑
な存在として扱われかねない」と指摘する。

 テレビ・週刊誌や政治家による河本さんバッシングの背景には、親を養え、と
いう伝統的な家族観があるのだろうが、まれなケースをもとに性急に私的扶養を
求めると、家族・親族の関係を逆に壊すかもしれない。冷静な議論が必要だ。
                      (編集委員 原昌平)


◆民法の規定(要旨)
▽752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
▽877条 直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養をする義務がある。
    2 家庭裁判所は特別の事情があれば、3親等内の親族にも扶養義務を
      負わせることができる。

◆生活保護法の規定(要旨)
▽4条 保護は、資産、能力その他あらゆるものを最低生活維持に活用すること
    を要件に行われる。
 2  扶養及び他の法律による扶助は、保護に優先して行われる。
 3  ただし急迫した事由がある場合に必要な保護はできる。
▽77条 扶養義務を履行すべき者がある時、自治体は要した保護費の全部また
     は一部を徴収できる。
 2   負担額の協議がととのわない時は家庭裁判所が定める。
                                  ーコピー元は、「おけらのいつかは青空 脱原発」―

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コメント

問題は、今回の事件を契機にして、本当に生活保護が必要なのに真面目すぎて受けるのをためらうとか厳しい審査に耐えられず諦めるなどということになることがあるのではないかということです。

私はこの問題が話題になるまで河本準一さんというお笑いタレントがいることすら知らなかった。それはさておき、彼がバッシングされ、ひたすら恐縮している姿をみると「けしからん」というより、誤解を恐れず言えば、そこまで吊るしあげなくても、と
も思えてきた。というのは彼自身の年収が5000万円
程度あったにもかかわらず、親が生活保護を受けていたということが問題の発端である。では仮に子供の年収が1000万円ならどうなのか。常識的には十分親を扶養できる収入である。親を十分扶養できる所得がありながら親が生活保護を受けているケースは世の中ごまんとあるに違いない。今回のことで役所チェックの甘さを指摘する声もあるが、きちんチェックし不公平のないよう、生活保護法を運用しようとしたらそれこそ、そのための担当者が何人いても足りないだろう。およそ、こうした法律は国民はある程度の倫理観を持って、常識的な行動をしてくれるという期待、すなわち性善説が前提になっている。しかしひとたび法律が施行されると、それを捻じ曲げて解釈したり、盲点を突く”はしこい”連中が必ずいるものである。幸い日本はまだまだ良識派が大勢を占めていると思いたい。昨今、その良識派の比率が下がってきているとするならば、そのことが大問題である。

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