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2012年3月19日 (月)

欧米での由紀さおりさんのヒット―日本語の音と表現の豊かさ―

 歌手の由紀さおりさんがアメリカのジャズバンドのピンク・マルティーニと組んで歌った1969というアルバムが欧米で大ヒットした。収録された曲の中で全米ヒットチャート第1位になったものもある。

  それで先日NHKのクローズアップ現代でも取り上げられて、その秘密が探られた。

  由紀さおりさんとそれを発掘したトーマス・ローダーディールさんを結びつけたのは、偶然であった。たまたまローダーディールさんが、ポートランドのレコード店で由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」のジャケットを見てデザインに惹かれて手に取ってみたのが始まりだ。そのレコードを聴いて由紀さんの透明感のある歌を素晴らしいと感じ、カバーした。それを知った由紀さんのスタッフからの働き掛けで一緒にアルバムを作ることになったようだ。

 彼は、「夜明けのスキャット」を編曲するとき、キーを下げて、スローテンポにしたのだという。その方が歌の魅力を引き出せると考えたのだ。

  このアルバムには、1969年のヒット曲が収録され「ブルーライトヨコハマ」やアメリカの「パフ」などカバー曲も入っている。

  ニューヨークでコンサートを聴いた人やCDを買ったアメリカのファンの声が紹介された。日本語が心地よく響いたとか自然の風景が浮かんだなどの声があった。ローダーディールさんは浮世絵の世界が漂う感覚だと表現していた。

  何人かの研究者などが、コメントしていた。その一人、秋岡陽さんは、西洋のメロディに日本語を載せると英語やドイツ語に比べて載せられる言葉が少なくなるという制約があるのだという。例えば「パフ」の中の5小節には英語では11語載るが日本語では4つしか載らないという。

  作曲家の山田耕作さんは、1+1=1だと表現したそうだ。つまり、西洋のメロディー+日本語でどこにもない音楽を作るのだと言ったそうだ。

  限られた言葉で詩を作るので言葉の一つ一つが大切にされるのだ。

 重野純さんは、日本語の母音に注目した。日本語は母音の多い言葉で、英語のI love you.は母音が3つだが、「私はあなたを愛しています」には15の母音が含まれると例をあげた。ちなみに中国語では4つである。この母音の部分を歌う時に微妙に変化させてきれいな響きにしているというのだ。

  音声を分析した城生さんは、由紀さんの母音には「フォルマント」というものが普通の人より2倍多いのが響きをよくしていると言っていた。

  アメリカから来た詩人で日本語が堪能なアーサー・ビナードさんは、「言葉の向こうにある世界を日本語でうまく表現する」ことで、外国人にもイメージが浮かび、それが聴く人の心を打つのだと言った。海とか風とか空とか自然がイメージされるのはそういうことなのだという。

  私は、日本語には細かい情景や感情を表現する語彙がたくさんあるし、日本人は自然と共に生活して、自然と触れ合って喜びや悲しみを感じきた。例えば日本人なら虫の音を愛するがアメリカ人には単なる雑音にした聞こえないといわれる。また、短い言葉で深い表現をする短歌や俳諧の文芸の伝統も持つ。つまり、日本語のもつ奥深い表現力、そして言外の言などや余韻を大切にすることなどが大きな力になっていると思うのだ。

  由紀さんがいみじくも言っていたが、「小さい秋」を歌う時、季節の移ろいを思い浮かべるという。誰かさんが見つけた小さい秋・・・・これは日本人なら人それぞれにいくつでも見つけることができるのだ。(これを書いていてふと思ったのだが、最近の子どもたちはそういう力を衰えさせてはいないだろうか?ということだ。)

 その他に重野さんの言うように、母音が多い言語であることも大事な点であると思う。私は、大学生のころから、ドイツの歌曲、例えば「野ばら」を原語で歌う時と日本語で歌う時には、大きな違いがあるのではないかと思っていた。先日、シニアコーラスであるグループが「野ばら」や「埴生の宿」をドイツ語と日本語で歌ったとき注意して聴いたが、やはり言葉の響きがかなり影響していることに気付いた。

 アメリカ人が日本語歌の響きを心地よく聴いたのは母音が多い言語であることが大きく作用したと思う。

  その他にこれまでどれだけの歌手が欧米で日本語で歌ったのだろうかと思った。おそらく殆どが英語で歌ったのではないだろうか。番組で指摘していたが、これまではアメリカで歌う時にはアメリカ人を見て歌っていた。どうしたら受け入れてもらえるだろうかという姿勢であった。由紀さんは日本語で堂々と日本の感情をぶつけて歌った。それによってアメリカ人に日本語のよさを気づいてもらうことができたというのだ。

 私たちがアメリカ人の歌手の歌を聴くとき英語で聴くし、ラテンの歌手が歌う歌はスペイン語で聴く。シャンソンはフランス語でカンツォーネはイタリア語で聴く。それで違和感はないのだ。外国人に対しても日本の歌を日本語で歌って聴かせるということが大事だということだ。 

 由紀さおりさんの日本語の歌のヒットは多くのことを考えさせてくれた。

http://www.barks.jp/news/?id=1000073956

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コメント

私も第九を歌いますが、苦労してドイツ語で歌います。意味は訳を通して知ればよいので、原語で歌うと断然違います。由紀さんが日本の歌を日本語で歌って感銘を与えたというのは快挙だと思います。

以前、ベートーベンの第九の4楽章を日本語で歌うのを
聴いたことがありましたが、まったく興ざめというか
ピンとこなかったのを思い出します。確かに意味は分かりますが、意味が分からない(歓喜の歌であることを除き)ドイツ語の方が圧倒的な迫力で迫ってきます。ドイツ語の重厚な響きとベートーベンの音楽が完全にマッチしてかつ聴く人の想像力をかきたてるのではと思います。同じくロシア民謡はロシア語で、イタリヤ民謡はイタリヤ語で聴くのが当然のように思っています。従って日本の歌も堂々と日本語で勝負すれば
時には今回のように外国人の琴線に響くことは当然ありうることだと思います。

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